赤ちゃんが見つめる30cmの世界
新生児の視力と成長のステップ
こんにちは、齊藤寿子です。今日は、新生児訪問でいただいた質問をもとに、赤ちゃんの視力についてお話しします。
ある新生児訪問のときのことです。40歳を超えての初めてのお子さん。お母さんお父さんも育児に熱心で、お父さんは育児休暇をしっかり1年取得し、二人で育児をしてゆく体制が整っていました。そのおうちには生後12日目で訪問に行かせてもらいました。そこでお父さんからこんな質問をいただきました。
この質問を聞いて驚きました。実は、「新生児は目が見えない」という考え方が、いまだに広く信じられていることを知ったからです。
この記事では、新生児の視力がどのように発達していくのか、そしてその背景にある誤解について詳しくお伝えします。
新生児の視力の真実
新生児は生まれた瞬間から、ある程度の視力を持っています。その視力は、約 0.02~0.04 程度。これはぼんやりと光や形を感じ取れるレベルですが、焦点を合わせられる距離は 約30cm 程度に限られます。この距離は、抱っこしたときや授乳中にお母さんやお父さんの顔を見るのにちょうど良い距離です。赤ちゃんがこの距離を見やすいようにできているのは、まるで神様の配慮のようです。この30cmの抱っこの距離が、赤ちゃんにとって見える全ての世界。限られた世界だからこそ、不思議で愛おしく感じます。
つまり、生まれたばかりの赤ちゃんはお母さんやお父さんの顔を見て、少しずつ親しみを感じ取っているのです。
実際に訪問先で赤ちゃんの視力を確認する場面がありました。私は赤いおもちゃを使い、お父さんの前で赤ちゃんの目の約30cmの位置におもちゃを持っていきました。すると、視点が定まり、目でおもちゃをしっかり追い始めました。さらにゆっくり左右に動かすと、その動きに合わせて視線を追う様子が見られました。距離を少し伸ばすと、その赤ちゃんは40cmほどまでおもちゃを見つめてくれましたが、それ以上離すと目を逸らしました。これを見たお父さんは、「見えているんですね!」と嬉しそうに赤ちゃんを見つめていました。
赤ちゃんの視力の発達ステップ
赤ちゃんの視力は、生後数ヶ月で大きく発達します。以下はその成長の段階です:
生まれたばかりの赤ちゃん(0~1ヶ月)
視力:0.02~0.04
特徴:光や動きを感じることができ、母親の顔や強いコントラストのあるもの(白黒模様など)を好んで見ます。
視線が定まらず、目が揺れることがありますが、これは正常な発達の一部です。
2~3ヶ月頃
視力:約0.05
特徴:
物をじっと見つめたり、動くものを追視(目で追うこと)するようになります。
人の顔を見て笑うことも多く見られる時期です。
このころには、お母さんやお父さんが顔を覗き込んでベロを出したり引っ込めたりすると、赤ちゃんも一生懸命真似をしようとしてベロを動かす様子が見られます。こうしたコミュニケーションは、親にも大きな喜びをもたらします。
生後6ヶ月以降
視力:約0.1
特徴:
視界にあるおもちゃや物に手を伸ばし、つかむ動作を始めます。
目と手の協調が発達し、探索行動が増えていきます。
赤ちゃんとモビール
生まれてからの赤ちゃんの目の動きはゆっくりです。それに合うおもちゃにモビールがあります。風でゆらゆらと揺れる吊り下げて使うものです。いろいろとありますが、赤ちゃんは人の顔が好きですので、人型やお顔のものは喜びます。ゆっくり風に揺れるモビールを見て、見つめることや追視の練習をしていくことでしょう。ぜひ、やってみてください。
「赤ちゃんの目は見えない」という誤解の背景
「赤ちゃんの目は見えない」という誤解は、昔の測定技術の限界や、新生児の視線が定まりにくい特徴から生まれたものです。また、昔の育児情報が長く引き継がれたことも影響しています。実際には、新生児もぼんやりとした視力で光や形を感じ取っています。
親へのメッセージ
新生児の視力について正しく理解することで、赤ちゃんとの時間をより深く楽しむことができます。
お父さんのように赤ちゃんの成長について質問をすることは、親としての第一歩です。
赤ちゃんは毎日少しずつ成長し、視界を広げていきます。親御さんもその変化を一緒に楽しんでください。
赤ちゃんは生まれた時から親御さんとのコミュニケーションを待っています。例えば、赤ちゃんのおもちゃに多い黒、白、赤の色彩は、生まれたばかりの赤ちゃんが反応しやすい色です。また、3ヶ月ごろになるとメリーなどの動くものを目で追うことができるようになり、楽しみがさらに広がります。たくさん声をかけてあげることで、赤ちゃんも声を出して応えてくれるようになります。その瞬間は、親子の絆が深まる特別な時間です。
おわりに
この記事を通じて、新生児の視力についての正しい知識が広がり、赤ちゃんとの時間をより豊かに感じていただけたら嬉しいです。
次回は、「赤ちゃんの聴覚と音への反応」についてお話しする予定です。どうぞお楽しみに!
感想や質問があれば、ぜひコメントしてくださいね✨