『居心地のいい関係性』 石井洋介×脇雅昭ダイアローグセッション【Dialogue in the SHIP 2022 〜価値観の対話〜①
2022年12月10日、ヘルスケアコミュニティSHIPのイベント「Dialogue in the SHIP 2022 〜価値観の対話〜」が行われました。本記事では、「サードプレイス」(家庭[第1の場]、職場[第2の場]とも違う、第3の場のこと)運営者の2人による「居心地のいい関係性」についての対話をレポートします。
プロフィール
●脇 雅昭(よんなな会・オンライン市役所発起人/神奈川県理事)
2008年に総務省入省。熊本県庁に出向後、2010年に本省に戻り、人事採用、公営企業会計制度の改正を行う。2013年から神奈川県庁に出向し、企業連携等、新たな社会課題解決モデルの構築に取り組む。プライベートでは、47都道府県の地方公務員と国家公務員の交流の場となる『よんなな会』や、1200自治体を超える公務員がノウハウを共有するオンラインプラットフォーム『オンライン市役所』を立ち上げる。雑誌TURNSにて「これからの官民連携」を連載。2022年、宮崎大学産学・地域連携センター客員教授に就任。
●石井 洋介(株式会社omniheal代表取締役/おうちの診療所中野 院長)
日本うんこ学会会長、秋葉原内科saveクリニック共同代表、ヘルスケアコミュニティSHIP運営代表などを兼任。2010年高知大学卒、消化器外科医として手術をこなす中で、「日本うんこ学会」を結成、大腸癌などの知識普及を目的としたスマホゲーム「うんコレ」の開発・監修。厚生労働省医系技官等を経て現在は在宅診療を中心に病院の外の医療の充実に力を入れている。著書に「19歳で人工肛門、偏差値30の僕が医師になって考えたこと」(PHP研究所、2018年)
みんなでみんなの困りごとを解決できるコミュニティの力
石井:僕が脇さんと知り合ってまもなく、脇さん主催の飲み会に誘ってもらいました。初めて脇さんの会に行ったとき、僕が話の輪に入りやすいよう、脇さんが「他己紹介」をしてくれたんです。医者という職業だけでなく、僕がやっている活動を紹介してくれたり、「ライトに接してくれる若い先生ですよ」と添えてくれたりして、みんなが話しやすくなる環境をつくってくれました。おかげで、初めて話す人ばかりでしたが、めちゃくちゃ居心地よかったんです。
脇:おーうれしいです。
石井:今日は、そんな脇さんと「居心地のいい関係性」をテーマにお話をしていきます。まずは自己紹介からお願いできますか?
脇:はい、僕は1982年生まれで今、40歳です。2008年に総務省に入り、現在は神奈川県理事として、いのち・未来戦略担当をしています。今日ご参加の方はヘルスケア関係の方が多いと聞いてます。まさに僕自身もヘルスケア領域、特にヘルスケア産業を伸ばしていこうという仕事をしています。
プライベートでは「よんなな会」といって、47都道府県の地方公務員、国家公務員同士が出会う場をつくっています。コロナ前は全国から毎回500人規模の参加者が集る交流会を続けていましたが、コロナ後は公務員をFacebook上でつなぐ「オンライン市役所」を中心に活動しています。
「オンライン市役所」は今メンバーが5500人ぐらい。全国に1788の自治体があるんですけども、そのうちの6〜7割ぐらいの1200の自治体の人が入ってくれています。
全国どこの自治体でも色んな課題を抱えていますが、困ってることはだいたいどこも一緒なんですよね。空き家問題、人口減少、それこそヘルスケアの問題。自治体のなかには公務員が全部で20〜30人ぐらいの村もあって、決まったことをやるだけでも精一杯なんですが、その状況で「地方創生」のような、むちゃくちゃクリエイティブで新しいことを求められています。それを自分たちだけで考えようとすると大変だけど、横を見たら1788人同じことで悩んでいるはずで、そんな時にオンラインの力でどうにかならないかと思ってやり始めました。
たとえば、コロナワクチンの接種も全自治体共有の課題です。1741市町村が、ある日突然、全住民にワクチンを打たないといけなくなったんです。
石井:先ほど出てきた、職員が20人しかいないような自治体も?
脇:やらなくちゃいけないんですよ。しかも、今までのワクチンはだいたい1回で接種が完了していたところ、今回は2回とか打たないといけない。ああいうオペレーションはすごく難しいんです。中央省庁が一緒にやりましょうといっても、現場で起きる課題は現場にしか分からなかったりするんですね。そこで、最初は毎月、毎週土日に情報交換会をしていました。各回200〜300人きてくれて、今では延べ1万人ぐらいが参加してくれるものになっています。するとね、やっぱり全国に天才がいるんですよ。
石井:こうやったらうまくできるんじゃないっていうのを教えてくれる?
脇:そもそもの課題に気づける天才がいるんです。たとえば、2021年の1月ごろ、ワクチンを打ち始めたぐらいの時点で、夏の心配をする人がいるんです。今の季節は冬です。「会場に使っている体育館が夏は避難所になっているから、台風がきたら使えなくなる」とか、「クーラーが使えないけど熱中症は大丈夫だろうか」みたいなことに、1月の時点で気付く人がいるんですよね。
石井:なるほど。早く気づけた分、準備期間が延びるんだ。
脇:そうなんですよ。そうすると「うちもやばい」とみんなが気づけるんです。また課題解決の天才もいて、「クーラーは今から間に合わないでしょうけど、うちの自治体では巨大なファンを用意してます。その方法で何とかなりますかね?」といったような情報共有が生まれています。
他にも、生活保護のケースワーカーの方同士が相談ができる場をつくったり、やりたいことのあるメンバーが全国の仲間とつながれるような仕組みをつくったり、人事異動したての職員が全国の「プロ」から業務を学べる番組をつくったりしています。参加している公務員の方のニーズに合わせて、Facebook内で色々やっています。
最近は多くの人に共通する課題だけでなく、一人ひとりが困っていることの解決も試みています。「使用料と利用料の違いを教えてください」とか、「放課後児童クラブについて教えてください」といった、今目の前で困っていることを書き込むと、みんながコメントしてくれるんですよ。
石井:なるほど、Yahoo!知恵袋では聞けないけども、ここなら聞ける。
脇:まさに、「外には出せないけど、公務員限定のそういう場所なら聞ける」という場をつくっています。「オンライン市役所」は全員個人参加で、何をするにも強制ではないんです。やっぱり人の「好き」は究極の力で、そういう「好き」を見える化するのはすごく大事だなと思いますし、それが官民連携の基盤にもなるのではないかと思います。
石井:この活動は脇さんにとっても仕事ではないんだよね?
脇:はい、プライベートでやってます。
石井:ということで、脇さんは一般的な公務員とは言えない方です。「オンライン市役所」での取り組みは人と人がつながる中でみんなをより良くするという前提で、集合知みたいなものをつくるのが目標だと思うんですが、ただ人が集まっただけでは難しいんじゃないかと思います。
放っておいて、有機的に関係性が生まれることはないでしょう? 20人ぐらいの飲み会なら他己紹介とかでもいけると思うけど、それが5000人になった時にどうやって関係性を維持してるのかは純粋に興味があります。
勇気をだして声をあげた人の気持ちになると、つながっていきやすい
脇:今日はコミュニティ代表のような形で呼んでいただいたと思うんですが、僕がたどり着いた答えは「オンライン市役所」はコミュニティじゃないと思ってます。
やっぱり100人超えるコミュニティって難しいですよね。最初は顔の見える関係をつくろうと思ってやっていましたが、今は全国に公務員388万人みんな入ってほしいと思ってます。388万人というと人口の3%ですから、無理じゃないですか。
今、僕が目指しているのはコミュニティというよりは、悩み事を投げたら誰かが拾ってくれるということをやるときに、10人の場所に投げるより100人、1万人の場所に投げた方がいいということで、やり続けてる感じです。
石井:そこは関係性への工夫がなくても、みんなの善意や「好き」でうまく回っていくものなの?
脇:どこまで話していいか分からないけど、そりゃむちゃくちゃ大変ですよ。たとえば、さっき例に挙げた悩み事なんて、放っておいてもでてきません。質問箱みたいなところをつくっても、みんな聞かない。
石井:やっぱり、そうだよね。みんな最初は質問をためらうよね。「ここはどんなことでも聞ける安心な場である」ということが分からないと。
脇:5000人の前で「ハイ!」は僕もできません。だから、「皆さんのちょっとした課題感を教えてください」と自分で投稿して、そこに「ある人はコメント欄に書いてください」って書いておくんです。
石井:ああ、なるほど。投稿と違って、コメントだから全員がすぐに見えるところには書かなくていいんだ(笑)
脇:コメントぐらいだったら書いてもいいかなと思ってコメントしてくれたら、すかさず運営チームが「これは素晴らしい質問だからぜひ皆さんの前で言ってください」と言うんです。今はなくなってきましたが、最初の頃は投稿者はみんな定型句のように「私はコメントしただけなんですけど、運営の皆さんからぜひ投稿してくださいと言われたので投稿しました」と書き出していましたね。
石井:コミュニティが活性化してくると、自然と質問が出てくるんだ。
脇:そうなんです。一方で、本当にニッチな質問は誰も答えられなかったりするので、こっちで探し出して、答えられそうな人に「これって答えられないですか?」ってつなぐ工夫もしていますね。
石井:居心地のいい空間をつくる工夫は随所に散りばめてるんですね。
脇:そうですね。だって、せっかく手を挙げてくれて、5000人の前で言ってくれたのに、誰も反応してくれなかったら悲しいじゃないですか。
石井:寂しいですね。挙げた手がスーッと下がりますね。
脇:今も会場の向こうでうなずきながら聞いてくれる方がいてすごく話しやすいんですけど、同じですよね。その反応を見てもっとしゃべろうという気持ちになるのと同じように、「投稿する人の気持ちになった時にどうなんだっけ?」と考えて、また投稿しようと思ってもらえるような工夫をしています。
この会場の一番端の人の気持ちになって、一番遠くの人でも質問しやすい関わりをつくったら、それより近くにいる人は全員関わりやすいじゃないですか。
石井:その場作りが、5000人になっても機能した、ということですよね?
脇:まだまだですけどね、もっと声を挙げやすい関係はつくりたいと思ってます。
石井:僕らSHIPは100〜150人を目処にコミュニティ運営をしていて、それ以上は増やさないようにしているんです。それは、「この人なんか知ってる」ぐらいの関係でないと声をかけにくくなるし、質問も挙げにくいんじゃないかなと思ったからなんですよね。
脇:普段はSlackでコミュニケーションしているんでしたっけ?いきなり入ってきたときは、顔が見えないわけですね。
石井:コロナ前は、最初に必ず参加してもらう歓迎会があったんですが、今はオンラインになっちゃってますね。自己紹介をして、自分から入っていかないといけない状況ではあります。
脇:まさに顔が見える範囲ですね。
石井:この人数の目安は、ダンバー数という考え方を参考にしました。昔、ある人類学者が研究したところ、人が社会的交流を維持できる人数は150人くらいが限界だという結果になったそうなんです。10人ぐらいの家族関係、その周りの50人、150人と、だんだん関係が薄くなってつながっていく。ひょっとしたら、その外にSNSでの5000人のつながりもあるのかもしれないですけどね(笑)。
脇:5000人というのは質問できる場所にいる人数というだけなので、自主ゼミは20〜30人規模でやってますよ。
石井:やっぱり一緒に話そうとすると、そのぐらいの数がやりやすいんですね。
脇:5000人いっせいにやるのは難しいですよね。よんなな会の経験では、500人でも難しかったです。
居心地よく関われるための小さな工夫を重ねていく
石井:よんなな会のイベントでは、1000人規模の会場を借りてたこともありましたよね。それだけの人が集まって、全員楽しんで帰るってすごいことだなと思うんですが、どんな工夫をされてるんですか?
脇:僕はみんなを運営者にしたいんです。一人ひとりが役割を持っていないと参加者と運営者の対立構造が生まれるし、面白い・面白くないの判断をする側になってしまうのがイヤなんですよね。
それでたとえば、講演会後の交流会はケータリングを用意せずに、一人一品制度にしました。「一人一品、地元のものでみんなに食べてほしいものを持ってきてください」とお願いしたんです。すると、1週間前から僕のところに「何人分用意すればいいですか?」みたいな質問がいっぱいくるんですよ。それは僕としてはむちゃくちゃうれしいんです。
ケータリングを手配して5000円集めるのは簡単なんですけど、大人にとってそこまで懐が痛む出費ではないから、その場で支払っておしまいですよね。何なら「この会場に5000円分の価値あるかな」と批評するお客さんをつくるだけなんです。でも一人一品制度だと、みんな「何、食べてもらおうかな」って1週間前から考えてくれるわけです。
で、いざ当日を迎えると、どうしてもあまり見た目の良くないものは残るんですね。そうすると持ってきた人が「これ本当はおいしいから」って、持ってきた地元のものの宣伝を始めるんです。完全に運営の一員ですよ。
石井:勧める側になるから、コミュニケーションを積極的にとりにいくんだ。
脇:交流会もゲストの話を聞いて終わりにならないように、1分ピッチの場を設けました。いい話を聞いても自分で動かなかったら何も進まないじゃないですか。だから、話を聞いて「こんなことをやりたいです」と宣言して仲間をつくれる場みたいな設計は考えてましたね。
一人でできることって限られるので、近くで「いいね」って言い続けてくれる仲間を作ることは大事だと思うんです。
石井:飲み会で話してる時には気づかなかったけど、こんなにしっかりした設計思想があるんだね。
脇:だって、イヤじゃない。答え合わせをしたら面白くないでしょ。種明かしになるから普段から全部は言わないけど、関係性を豊かにするための工夫はしてますね。
石井:他己紹介もその一つですよね? あれも意図的でしょ?
脇:そうですね。僕は自己紹介が苦手なんです。自分の番になったときに、話すことをずっと考えてるから、結局みんなのことが分からずに終わるんですよね。
あとは、他己紹介を始めるきっかけになったのが、とある自己紹介でした。世界大会2位のスイマーの方が来て、「2位になるためにどれだけ努力したか」という話をしたときに、しらけた雰囲気になったんです。「自分はすごいんです」と言われると、聞く人は心を閉ざすじゃないですか。それよりも「この人世界1位のスイマーですよ」って紹介されて、「いや、2位ですから」って冗談にした上で、「世界2位だなんて、きっと、すごい努力されたんですよね?」という話の流れなら、本人も素直に言えるし、周囲も居心地よく聞けますよね。
石井:やっぱりそこもちゃんと居心地よくなるように設計されてるんだね。
脇:設計っていうといやらしいですけどね。他己紹介って、紹介する人と紹介される人の間の関係性もよくなるんです。公開I LOVE YOUだから。二人の時に面と向かって「石井さんって、こんなところがすごいですよね」というのは恥ずかしいけど、みんなの前で「こんな素晴らしい人ですよ!」って言われると、こんな風に思ってもらえてるんだなって、嬉しいじゃないですか。
石井:そうするとやっぱり居心地よくて、また脇さんの会に行こうかなって気持ちになってくるよね。
サードプレイスは人の新たな一面が見つかる場所
石井:ここで、セカンドプレイスである職場や、ファーストプレイスである家庭での関係についても聞いてみたいと思います。というのは、サードプレイスで過ごす時間が長い人、要は飲み歩いてる人は、家族の関係を維持する時間がないんじゃないかと思ったりもするんですよね。脇さんは、家庭や職場の関係性はどんな感じなんですか?
脇:家庭……そうですね、隙間でも時間はあるので、そこは奥さんのために時間を使ってますね。先ほども空き時間に電話してましたし。すべては奥様のおかげなんです!(笑)
やっぱり身近な関係性がちゃんとしてないと、しんどいですよね?
石井:いちばん近い家族との関係性が良くないと、サードプレイスでの関係性作りも難しくなってくると。セカンドプレイスはどうでしょう?
SHIPでは、「職場ではなかなか課題感が伝わらなくてモヤモヤしていることを、ここで話してみませんか」というような言い方をすることもあります。
脇:いろんな人がくるので、たしかに「課題感をみんなにぶつけたい!」というようなケースもあります。ただ、悪口を言い合ってスッキリする場ではないので、みんなの前で話すことで思考を整理したり、いろんな人の言葉をもらったりして、プラスに転じていける場にはしたいですよね。
石井:そうすると、職場で活躍して満足している人はサードプレイスにはあまり来ない?
脇:そういう人にも来てほしくて、「よんなな会」ではリアルな場所をつくりました。「自分にはオンラインの集まりは必要ない」という人も、「飲み会をするので来てくれませんか」と誘うと参加してくれるんですよね。そこからオンラインの方へ勧誘したりもしています。「誰かとつるまなくても、自分は1人でできるから大丈夫」と言っていた人が、ここに参加したことでまた世界を広げて、それを仕事に生かしていくということも起こるんです。
石井:SHIPでも、他の業種のいいやり方を学んで、現場でも採り入れてうまくいったという例が実際にあるので、それは感じますね。
ちなみに職場のエース人材をコミュニティに勧誘することはあるんですか?
脇:直接の勧誘はしてないですね。理事という立場上、僕のパワーが強いので、「脇さんに言われたから入った」という人がいると、コミュニティの良さがなくなってしまいます。なので、たまに同じ職場の人が入ってくれてきても、触れないようにしています。いつでも入れて、いつでもやめられる場所にしておきたいから。
石井:オン・オフをきっちり分けるのがある意味、工夫なんですね。課内の垣根をとり払うようなことは何かされていますか?
脇:これも自分が動くとパワーが強いので、若い人に役割を持ってもらうことを心がけています。公務員の場合、若いうちは役割のないことが多いんですが、プロジェクトリーダーを経験して初めて活躍できることもありますよね。ということでリーダーを増やそうと考えています。
その一環でコミュニケーションリーダーというのを勝手につくって、仕事上のつながりのない課員約100名を横につなぐ役割を任命したら、彼は一生懸命考えて30分でお仕事紹介みたいな企画をやってくれました。
やれって言われてやるのは絶対に面白くないから、どうやったらみんなの中から生まれてくるか、みんながやりたくなるかを工夫してます。
サードプレイスマスターの役割はみんなの役割をつくり続けること
石井:これは個人的な興味なんですが、コミュニティ運営にボランティアや善意を前提としていると、参加者や運営チームと多くの関係が生まれますよね。
主宰する側はみんなのことが好きだから、それぞれと等間隔の距離感を築こうとするけれど、一生懸命動いてくれている運営メンバーと参加者と距離感が同じだと、そこで不公平感が生まれたりしませんか?
脇:僕これ一人でやってるように話してますけど、10人ぐらい公務員や民間の仲間が一緒になってやってくれています。確かに、その人たちのことは大事にしてますけど、同じ方向を見てやっていこうというスタンスなので、僕が彼らに何かしてあげるという感覚はないですね。「みんなありがとう!」しか言ってない。
石井:そうすると、運営側のモチベーションはどうやって保ってるの?チーム内で嫉妬が起きたりはしないんですか?
脇:僕の愛を求めて?? それはないと思う、みんな大変そうだから。視線の向いてる先は、僕じゃないですからね。このコミュニティをどうやったらよくできるかということのために、毎週日曜夜の22時から打ち合わせしてますから。
石井:もともとモチベーションが高いんですかね。
脇:巻き込んでいってるところはありますね。役割を少しずつやってもらって「ありがとう!!!」ということの繰り返しで、気付いたら重役になってましたみたいな人がいっぱいいます。チームのメンバーは10人ですが、そもそも参加してる人の一人ひとりが役割をもつ環境をつくっているつもりなので、みんなに等しく「ありがとう」という感覚ですよ。
石井:そもそも「ありがとう」の偏在がないんだ、脇さんのコミュニティには。
脇:僕の役割は繰り返しになりますが、役割をいっぱい生んで、みんなの関わり口を増やすことだと思ってるんです。だから、すべてに「ありがとね」と思いながらやってます。その意味で、ここの関係性だけ強くしようというような意識がないとはいえ、言われるようにギャップはあるんでしょうね。いちばん汗をかいてくれてるメンバーとちょっとした関わりのメンバーはやっぱり違いますからね。
石井:同じように接してあげたいけど、関係が遠い人だと、近しい人と同じとはいかないですよね?
脇:それで言うと、「オンライン市役所」では僕がコミュニティの中心になろうと思ってないですね。「よんなな会」は僕が中心になって人を集めていましたが、自分がリーダーとして動いていく形だと僕がいなくなったらコミュニティが終わるんですよ。だから、「オンライン市役所」はもともと前に出ていなくて、僕が主宰者だ気づいてない人もいると思います。後ろ側で仕組みをつくってるから、あまりそういうことを感じないんでしょうね。
石井:「脇さんが好き」という気持ちより、コミュニティへのコミットで動いてるんですね。
脇:僕は裏でスキーム作りをしていて、それを面白いと思ってるメンバーが集まってる感じです。僕とみんながつながる場ではないので、寂しいところは確かにありますが。
石井:その「寂しさ」についても深堀りしたいところではありますが、時間になってしまったので、最後に「脇さんにとって関係性とは?」という質問をして終わりたいと思います。
脇:関係性とは……。逆に、石井さんはどうですか?居心地のいい関係はつくるものだと思ってるので、僕から出てこなかったら人からもらうことにしようかなと。
石井:それはまた今度ゆっくり話しましょう(笑)
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SHIPというヘルスケアに特化したコミュニティの運営費にさせていただきます。メンバーが自分の好きに正直に事業を作っていけるようになることが幸せかと思っています。