冬の自由研究報告会!
ヘルスケアSHIP恒例の「自由研究」。いくつかのテーマの中から、自分が気になるテーマに参加して何らかのプロジェクトにしていくもので、コミュニティメンバーと知り合うきっかけにもなるため、毎年行ってきました。今回は、2022年冬の自由研究の成果発表会の様子をお届けします。
成果報告といっても、この自由研究では成果を出すことを第一の目的とはしていません。メンバー同士のつながりを深めることや、新しいチャレンジのきっかけになることを一番重視していて、テーマに沿って各チームで自由に楽しく活動をしています。
今回のテーマは6つ。「建築」「フィットネス」「経営」「まちづくり/フィールドワーク」「哲学」「アート/写真」です。このレポートでは、各チームからの発表の要旨をご紹介します。
(1)建築チーム「住み開きを知ろう」
建築チームでは「住み開き」をテーマに自由研究を行いました。
「住み開き」とは、さまざまな人とのコミュニケーションを期待して、自宅を始めとしたプライベート空間の一部を開放することです。カフェやギャラリーなどとして地域に開放された空間では、近隣の人を中心にコミュニティが生まれてきます。
今回は各メンバーが事例を視察することから始めました。
訪れたのは、オーナーが自分の老いを前に近所での関係づくりを考えて建てた「荻窪家族」、旧国鉄の社宅をリノベーションした複合施設「高円寺アパートメント」、そして、チームのメンバーの勤務先でもあり、利用者以外にも開かれた食堂や店舗があるサービス付き高齢者向け住宅「銀木犀」の3カ所です。
開かれた目的も、地域とのつながり方も異なる3パターンの実例を見て、共用エリアのある建物に住んでいることが、居住者や利用する地域の人にとって、さまざまな使い方・意義がありました。
次に、「住み開き」を取り入れた住宅を設計をしたことのある建築士を招いたイベントを開催しました。教えていただいたのは、「誰が・誰に・何を開くのか」というフレームワークです。誰のものでもない公共空間とは異なり、「住み開き」ではみんなが自分の場所と認識できる共有空間としてデザインしていくことがポイントだそうで、自分達の知っている事例も誰が誰に何を開いているのかという視点で考察してみました。
住み開きからは子育てや介護などでの互助関係、地域の風景など、一般的な住宅では得られないものも生まれてくるようでした。
「住み開き」について一歩踏み込んで理解を深めていくなかで、仕組みとして持続していくためのマネタイズの方法など、多くの疑問も生まれてきました。質疑応答ではシェア型図書館の事例も共有され、近隣の人に限らず多くの人が関われるのがよいのか、経済的には成り立たっていなくてもオーナーの思いが叶えられていれば十分なのかなど、さらに議論も深まりました。
(2)フィットネスチーム「新しいフィットネスの可能性を探ろう」
定期的な運動習慣が大事であるとは分かっていても、続けることが大変なフィットネス。フィットネスチームでは当初「3日坊主への処方箋」と題して、3日坊主になる理由別におすすめのフィットネスサービスを提案するという方向性で、世の中にある既存のフィットネスサービスの調査・分類を始めました。
タイプ分けはできましたが、やってみて気がついたのは、あえて分類するほどサービスの種類がないということ。
そこで、新しいフィットネスの可能性を調べるということで方向転換し、海外で流行している“X to earn(何かをして稼ぐ)” をコンセプトとするフィットネスサービスについて研究してみました。
実際に歩いて仮想通貨を稼げるスマホアプリを継続利用してみて分かったことは、長期的な継続のためにはどこかで経済的なインセンティブではなく、内発的な動機に変わっていく必要があるということです。
上場前でポイントの価値が定まっていなかった時は一発当てられるかもしれないワクワク感で続けられましたが、上場後、歩くという行為に対する報酬レートが明確になると、得られる金額が歩く面倒くささを下回り、やらなくなってしまったというリアルな体験談に、メンバーからはさまざまなコメントが寄せられました。
まったく運動する気のない人をやる気にさせることは難しいけれども、健康を気にする人に重い腰をあげてもらうための後押しとして、ゲーム性や自己肯定感の向上といった楽しみをプラスすることは効果がありそうだという結論に至りました。続けられるフィットネスを見つけるには、やってみて自分が楽しいと思うものを選ぶのが良さそうですね。
チームメンバー:イシイ団長、しるこ、いかちゃん、ごえ
(3)経営チーム「おうちの診療所大解剖」
経営チームでは、SHIPメンバーにも関わる人が多い訪問診療の診療所「おうちの診療所」を研究対象に選びました。研究を始めた頃、ちょうど個人事業から医療法人へと法人成りするタイミングで制度を整えている最中だったからです。
経営チームに集まったメンバーの興味関心が人事面に集中していたことから、「おうちの診療所」の経営方針や人事評価制度について話し合うという方法で研究することにしました。
「おうちの診療所」で働いているメンバーから診療所の理念や診療において独自に定めている指標、関係の質を重視した組織運営、また新しく設計された人事評価制度を紹介し、院内ポータルサイトの記事なども読んで、感想を言い合いました。
「おうちの診療所」の掲げる行動指針や「関係の質」を大事にする成長戦略には多くの共感が寄せられました。一方で、崇高な理念をもちながら、実際には関係を育くみきれていないと感じられる現実もあるという内情も明らかになります。
仕事では成果に焦点が当たることが多いため、関係の質を意識したスローなコミュニケーションや人間的成長を促す取り組みはやりづらくなりがちです。報告の最後は「関係の質を高めるために何をしていますか?」という参加者への問いかけで締めくくられました。
この問いかけに「仲良くなるきっかけとして職員写真を撮影する」「議論を深めるためにあえて反論する」など、さまざまなノウハウが参加者から共有されました。とはいえ、決して一朝一夕に解決する経営課題ではありません。その後の休憩時間も、組織での関係づくりについての話題は尽きることがありませんでした。
チームメンバー:まいこさん、たつみん、安藤さん、吉野さん、ねぎぽん、かぶちゃん
(4)まちづくりチーム「人が集まる地域とは?」
まちづくりチームでは、特定の地域を対象とするフィールドワークや研究ではなく、「人が集まる地域とは?」をテーマに広く「街」について研究することにしました。
具体的にはメンバーが住む下町でのフィールドワークとディスカッション、移住先として人気のある長野県へIターンされた方とのディスカッションを行い、考えを深めていきました。
最初のミーティングが行われたのは地域のつながりがしっかりと残っている根津に建つ長屋です。地域のお祭りにも参加し、区議会議員としても活躍する隣人との関係もあるメンバーが案内人となりフィールドワークを行いました。実際に街歩きをしてから、歩行者天国研究家や地元の小学生も含めた多様なメンバーでフリーディスカッションをすると、そもそも「まちづくり」とは何なのかという根本的な問いに辿り着きました。
すでにそこにある街を「つくる」とはどういうことなのか、まちづくりの成功とは人が増えることなのかといった、モヤモヤした疑問を持ちながら、2回目のミーティングでは長野県辰野町に暮らす元地域おこし協力隊員の方にお話を聞きました。
辰野町での取り組みから学んだ4つのポイントを聞き、見聞きしたことを踏まえてディスカッションを深めていくなかで、地域への関わりしろを増やすことや地域と人をつなぐコーディネータ的な人材の重要性が再認識され、最終的には「街として形に残ることだけがまちづくりではない」という結論に達しました。
街には「コミュニティ」という側面が色濃くあります。もしかしたら、SHIPというコミュニティでの経験や学びも、今後のまちづくりに活かせることがあるかもしれません。
チームメンバー:Ayaka、すず、よしぬん、しんぺー、ガミー、印南麻央、かずき
(5)哲学チーム「実践!哲学対話」
哲学チームは「哲学対話」の方法を学び、メンバーで2回実践しました。
哲学対話では、抽象的でレイヤーの高い話題を扱い、参加者とともに思考を深めていくことができます。まず、ゲストを招いて哲学対話の方法をレクチャーしてもらい、ミニ対話をして進め方を理解した上で対話を行いました。
といっても決して難しい方法ではなく、「分からなくなってもいい」「お互いに問いかける」などの5つのルールを守るだけ。大人同士であれば司会進行をするファシリテーターも必要ありません。
今回このテーマに興味を持ったチームメンバーは関心領域がそれぞれ異なっていたため、まずは哲学対話で話し合いたいテーマをみんなで出し合い、その中から2案を選びました。
1回目の哲学対話のお題は「関係の質とは」。経営チームが大解剖していた「おうちの診療所」で重視しているのが関係の質です。捉えどころのない関係の質について、2時間じっくり話し合いました。
2回目の哲学対話のお題は「他者の価値観を受け入れるには?」。こちらは同級生と分かり合えなかったという経験をきっかけに生まれた問いです。2回目にもなると対話の方法にも慣れてきました。
わざわざ時間をつくって、オチも結論も求めず思いをそのまま交わし合う対話の時間は非常に豊かな時間だったそうです。成果を求めない自由研究だからこそ実現できた贅沢な時間の使い方ですね。哲学対話からは「まとめ」や「答え」は出ませんが、得られたものは確実にあったようでした。
チームメンバー:よこたつ、ムーさん、まさまさ、大野先生、Satoさん、kissa
(6)アートチーム「絵心からの解放」
このチームのチャンネルには、研究期間中、毎日メンバーが撮影した写真が投稿されました。何気なく一人が始めたことを真似したのが始まりで、毎日ひとり1枚写真をアップし、お互いにコメントをつけ合うのが習慣化していった結果、投稿された日常写真は167枚にのぼりました。
このチームの研究テーマは「絵心からの解放」。
日頃なかなか写真や絵を書けない理由のひとつに、他人の目を意識してしまうということがあります。そこで、このチームでは、うまくやろうとせずにアウトプットしていくことに重きをおきました。
「非同期で参加しやすいようにしよう」というチームのスタンスも決め、それぞれのペースで投稿するスタイルをとりました。そのおかげで気構えずに投稿できた他、日頃はスレッドへの参加が少ないメンバーが登場してくれるという嬉しいメリットもありました。
日々の蓄積は馬鹿にならないもので、撮ることが習慣になってくると日常の小さな感動ポイントを見つけやすくなるという変化もあったそうです。また、多くの会話を交わしたわけではありませんが、写真やコメントからお互いのパーソナリティに触れられ、メンバー間の交流も深まっていきました。
投稿写真をまとめたコラージュからはアート/写真チームの静かな盛り上がりが伝わってきました。写真の投稿は研究期間終了後も続いており、今後は月に1回は感想を言い合う回をしてみようという話も出ているのだとか。SHIPメンバーはぜひチャンネルものぞいてみてください。
チームメンバー:マイケル、村田七海、kissa、ムーさん、浪花浩和
▼参考記事:「夏の自由研究」で加速した共創型コミュニティの楽しみ方