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AI×Marketing 活用の現状:後編

AIマーケティングの2日目をサマライズしたいと思います。
昨日はAIの現状・トレンドや企業内における活用といったところがメインに語られましたが、2日目はAIサービス・ソリューション現状・AIの未来について語られました。

AI時代のイノベーションリーダーNVIDIA が考えるリテール/マーケティングの未来: 生成AIがもたらす変革とは(井崎 武士(エンタープライズ事業本部 事業本部長, エヌビディア合同会社)

時価総額世界第三位のNVIDAですが、社員の9割がエンジニアであり、GPU関連の開発と販売をしている事業者だけあって、生成AIの映像開発を軸としたサービスにも力を入れているが、提供領域は様々な領域で提供しています(以下PPTをご覧いただく方がわかりやすいです)。

サービス提供領域
AIに置き換えられるリテール業務領域

その中で、AIによる対面コミュニケーションの進化について、ハンバーガショップの例示で説明しましたが、やりとりに人間の表情や声のトーンまで音声認識で言語処理をし、話の内容に応じてジェスチャー・表情も違和感なく全てカスタムオーダーメイドが受け付けられるところまで実現してきていることを説明しました。

ハンバーガーショップのAI店員

その他にはWPP社と取組んでいる内容や広告主が今AIを活用し始めていることを説明しました(前半編でも記載したのでPPTをご覧ください。)

WPPとの連携領域
AIマーケティング提供領域
コカ・コーラの事例
LOREALの事例1
LOREALの事例2

NVIDAが世界第3位の時価総額たる所以がわかるセッションでした(SBもここに出資していたりします。流石の孫さん)

広告・マーケティング領域におけるAIを活用したソリューションの現状

サービスレイヤーでは、電通が開発したクリエイティブ自動生成AIソリューション「∞AI」ついて紹介された。私自身もこのサービスを昨年リリースしたタイミングで注目していたので、概要を理解できているのですが、このサービスの1番の特徴は広告主の商材に応じたクリエイティブ・コピーワークをAIが自動生成していくれることであり、電通の優秀なコピーライターのワークモデルをAIに学習させ、広告主要望に応じたコピーやクリエイティブを様々な角度から提供できるところがユニークなポイントである。

これがその訴求マップ

この図を見ていただくと様々な角度からワードが出てくるが、このワードの中で広告主が期待するワードを選択し、その内容に基づいたクリエイティブを生成してくれる。最近の進化ポイントとしては、生成されたクリエイティブだと、どれぐらいの効果(高いクリックスルーレート)が見込めるかのかクリエイティブ別に試算してくれる。しかも過去のクリエイティブの実績値を機械学習させているところから、かなり高い精度で試算可能になっていることだ。
つまり、バナー・クリエイティブ制作が短時間・成功確率が高いアウトプットができることが可能になっているのである。
電通はこれ以外にも、AIを活用したサービスを拡充していくことを語り、直近ではオウンドメディアにおけるAIエージェント開発などを行っているとのことでした。(AIエージェントの対面対応は複数のセッションで語られたが、かなりのクオリティレベルを担保しており、現状では質疑に対する対応まで一定以上のクオリティを担保できているとのことだった)。

電通が取組むオウンドメディア上でのAIエージェント

Adobe生成AI「Adobe Firefly」

Adobeの「Adobe Firefly」は生成AIを活用したサービスとして世界的に注目を浴びているが、その現状について説明されました。

マーケティング活用領域

このサービスは皆さんもご存じのところが多いと思われるがこのサービスの中で、個人的に秀逸だなと思っているのは、顧客体験(CX)提供していく上で、一人一人に最適化されたクリエイティブが自動生成され、ターゲットのモーメントに適した情報配信・接触が可能になるということだ。

1人1人に画像を自動生成してアプローチができる
顧客体験の最適化

その人のモーメントに一番最適な情報が個人単位で送ることができるということは、画一的なコミュニケーションから顧客の必要な情報やクリエイティブを最適なタイミングで接触することで、顧客体験の最大化が実現できるのである。コミュニケーションにおける顧客体験最適化は、いかにモーメントを抑え、その人のJobを解決することが重要であるため、コミュニケーション手法おいてはある意味有効手段の1つであると思いました。

米国AIスタートアップセッションから見る日本のAI活用(ドコモ)

本セッションでは今、AI時代のデータドリブンメディア戦略として、AIの広告活用例を紹介した。この事例はZIPコードと店舗在庫を連動してAIによる広告配信するモデルとして紹介された(結果は在庫を保有する店舗と広告配信をAIを使って連動配信することで売上伸長につながったとのこと)。

広告配信の成果
広告配信スキーム

実は、私が所属するドコモのマーケティングソリューションサービス領域では、ドコモが保有する多量なデータをAIが分析して、その人のライフステージを把握することができるのである。
これは、ドコモが保有するオンライン・オフラインのデータをAIが読み取って、ある行動をした人の特徴をモデル化し、そのモデルと類似した行動をとっているIDを探し出し、広告活用できるのである。
わかりやすい例でいうと、webアクセスや位置情報(緯度・経度・滞留時間)から、その人の行動パターンを特徴化できるので、引っ越しした人と同じようなパターン行動をしている人をAIが抽出してくれるのである。
また、こういったことをするときに、その母数や精度が課題となるのだが、圧倒的なデータ量があるため、かなり高い確度でその人のライフステージを把握し、母数規模もかなり大規模に提供できるのだ。
更に、ドコモのモデルはここに単一でない複数の小売流通事業者のIDーPOSデータと連携(予定も含め20社程度・2023年10月発表)し始めており、実はアメリカより2歩も3歩も先に進んでいるということを改めて認識した(アダムさんごめんなさい)。

ニールセンのマーケティングミックスモデリング(MMM)

ニールセンの皆川氏からはインクリメンタルROAS「マーケティング施策を行ったときに与える売上影響」とAI活用について語りました。ニールセンは
マーケティング施策をしなくても、もともと商品が売れるベースがあり、売上増加分(Incremntal)=マーケティング施策により発生する売上を計測するマーケティングミックスモデリング(MMM)を提唱しています。海外では一般的なモデルとして浸透しているが、日本ではコストと手間が障壁になり実施率が低いとのこと。

Incremntal ROASの概念

このMMMにAIを活用すると以下の3点が活用ポイントしてあげられるそうだ。

MMMにおけるAI活用のポイント

これらのポイントにAIを活用することで、正しいKPIでマーケティング効果測定を行うことにより、適正な費用対効果(投資対効果)を把握することができるため、広告投資の健全性・必然性などの説明責任をしっかり行うことができると語りました(海外ではもはや当たりまえの世界。ただ、日本企業は商材のブランド力が高いため、結果変化が少なくなる可能性もあり、そこに説明価値が存在するのかという課題があるため、MMMモデルが浸透しない障壁があるように思える。)。


2日目のセッションでは、AIの可能性としてAIは人間を超えられるのか、とって置き換わるのかという尊厳的テーマで語られたセッションが多くありました。

昔懐かしいヤンボーマーボー

「クリエイティブ×AIの未来」では、AIがアートやデザインに与える影響と、人間がどのような役割を果たすかについて、ヤンマーホールディングス長屋ブランド部長からヤンマー新キャラクター「ネオヤンマー」の制作を通じて、AIをクリエイティブのプロセスに組み込むことで制作時間を圧倒的に短縮することができ効果的であると語ったが、最終的なアウトプットにはまだ人間のエッセンスが必要であり、最終アウトプットはAIだけではまだ時間がかかる。AIは技術的には優れているが、本質的なクリエイティブ性をAIだけでは再現できない。だから全てをAIにすべきではないと語りました。

デザインプロセスにAIを活用できる俯瞰図

音部さんからは、購買行動はなくなるのかというセッションでは6つの購買体験が変容することを語りながら

生成AI変わる買い物体験
購買アクションに潜むコンテキスト

購買行動そのものは生成AIにより利便性は向上する。例えばEコマースのカートには自分の購入経験・タイミングから自分に必要なものを用意しておいてくれ、ラストワンチョイスまでAIがサポートしてくれる。ただ、最後のチョイスには人間の意志が必要であり、そこに人間の嗜好性・意思が必要だと語りました(音部さんが優秀すぎて要約が難しくて簡略化したことをお許しくださいw)

芥川賞作家:九段理江

クロージングキーノート「AIに模倣され続けても、人は創り続けることができるのか?人間の言葉が持つ強さ、可能性について」では芥川賞作家の九段理江さん(存じ上げませんでしたw)が登壇し、東京都同情塔の作品執筆においてAIを活用したことによる世の中の論調と持論を語りました。彼女は東京都同情塔でAIを使うことで炎上してしまったが、本人は意に介することはなく、読んでもらえればどこでAIが使われているかわかるし、小説の価値は読者が決めるので、AIを小説作成に活用したことは、外部の炎上に比べて、あまり気にしていないと語りました。

河野さん×九段さん


彼女は「AIが機能を担うことはできても、価値を見出すことはできない。人間が価値を決める。AIに小説をつくることはない。欲求を突き詰めていくとそこに新しい価値がある」と持論を語った(ごもっともです!)

ただし、彼女はAIを使ったうえでの新たな発見として、創造を超えた答えがでてきてインスパイアされ、思いのよらないアイディアは人間でもできるが、AIはいつでも対応してくれる(ドラえもん論調ですね)から役に立つとAIの有用性もしっかり語ってくれました。

その中で、講談社の長崎氏は、人間が見つけれないものをAIが見つけられている(前半の味の素の事例)中で、AIは人間を超えられるのかと言う投げかけをした。
そこで彼女の持論としては、AIは人間を超えることはできない。なぜなら
芥川賞は純文学。答えを出さない文学であるからこそ、AIでは実現できない。と語りました。

AIの未来:個人考察

このやりとりは非常にユニークなものであった。なぜならば、2日目のセッションの多くで、AIはまだ人間を超えることができない。ラストワンチョイス・ラストワンクリエイティブは人間のエッセンスが必要であり、創造性といったものを加えない限り機能しないことであるとどのセッションでも語られた。
確かに私もAIを使って資料や議事録まとめなどを使うが、最終的には自分が手直しをしている。ただ、これは現時点での答えだと思われる。
なぜならば、ディープランニングの考え方は、AIがその人の思考性を蓄積し、その人の考えに近づいていくことが可能なモデルである。なので、現時点ではその精度が人間を超えることができないだけであって、これが5年10年経てば、必然的にその精度が上がるわけで、その人の考えと同じレベルまで十分到達するとことができると思う。

ただ、この時に思うこととしては、九段さんの「創造性というのは、想像欲求を突き詰めていくことで生まれる。いろんな経験や知見を通じてアイディアを生み出す。」というコメントにあるように、どんなに技術が進んでも創造欲求というものをAIが持てるのかという投げかけでもあるように思えた。
つまり思考レベルやクリエイティビティの高い人たちの創造性は未来であっても越えることはないというAI論調のアンチテーゼであり、私のような一般人レベルではすぐに追いつかれ、追い越されてしまいますw
これに対しては、現時点で正解が無い。
ただ、今回のセミナーを通じて感じたのは、AIが人間を超えるか超えないかではなく、AIを活用し、人間の創造性が加わることで、より創造性の高いものを生み出すことができるようになること。ここが重要ではないかと感じた。

最後に

たった2日間で、AIにおける知識量をここまで広げてくれた河野友香さんに感謝したい!彼女はかつてはブランド広告主として活躍し、今ではAI×マーケティングの可能性に注目し、米国で実地調査も行い本カンファレンスを企画しました。短時間でこれだけ凝縮した情報をインプットできる場としては非常に有意義なイベントでした(商用ベースではここまではなかなかできないかも)。河野さん本当にお疲れ様でした。イベントの素晴らしさを報告させていただきました!

バリキャリ河野さんw
著名人とも仲良しさんw

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