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シオコレ・コーデ・リレーvol.29 坂田美優

シオコレに関わりのある人や、そのまわりの人にシオコレの古着を着てコラムを書いてもらうゆる〜い連載 #シオコレコーデリレー

今回登場してくれたのは、坂田美優さんです。

3月に約一ヶ月間塩屋に滞在し、その間に何度もシオコレのお手伝いに来てくれました。

塩屋滞在を経て感じたことを彼女らしく綴ってくれました。


今年の3月、シオヤコレクションの代表でもある澤井まりさんのお宅に1か月ほど滞在させてもらっていた。

きっかけは夏頃、服屋として元々好きなお店であったシオコレのインタビュー記事を読んだことだった。

みんなが就活をしている時期、「働く」ということが「異常にたくさんの商品を慣行的につくって売る」という営みに何かしらの形で貢献せざるを得ないことばかりであると感じた。そんな貢献へのモチベーションを理解できず、どう生きていけばわからないと思い、自分の社会不適合性のようなものに対してもっといろいろな対処法を考えようと休学した。多様な生き方や視点を知り、ためしてみて、自由な気持ちを得たことは確かだったが、それでも嫌なものは嫌だし、できないことはできないままだった。気になることや可能性は目の前に広がっているはずだけど結局どうしようと思っていたとき、先述の記事を通して、違和感があるからこそ仕事を含めた自分なりの生活をつくっているまりさんのことを知った。会いたいと思って連絡し、その後数回の関わりを経て、まりさんからの嬉しいお誘いによって今回の滞在は始まった。

シオコレや路上(まりさんと塩屋の商店街辺りを歩いていると、3歩歩けば知り合いに出会うような状況がよく生じた)で、ごく一部ではあるが塩屋の人たちと顔を合わせる日々において私の目に新鮮に写ったのは、それぞれの人に定番の服装のようなものがあるということだった。

シオコレの運営に関わるメンバーも、お店が休みの日にみんなで作業やミーティングをする日にはそれぞれの定番服を見ることがあった。ビビットな緑か紫の幅広パンツに柄入りの黒いカーディガン。濃いピンクや白などカラフルなパンツに明るい色のトップス。 動きやすそうで、無理がない。でもどれもかわいく、多分”派手”だ。

定番の服装を持つことは「なんにでも合いそうな無難なアイテムを持つ」ということだと、無意識に思っていた。

そんな中、塩屋で出会った人たちのふだん着は各人ユニークで、印象的な色や帽子や柄など、別のところで似たものを見るとその人のことをふと思い浮かべてしまうような独特の”定番”があった。

まりさんに初めて直接会い、数時間2人で話をしたとき「理想や違和感は持ってていいんだよ。いつまでも。」と真っ直ぐに言われたことをすごくよく覚えている。当時の私の心に沁み入ったその言葉は、それでも、生活をする中で何かを選んでいかなければならない、と続いた。だがこれは、ただ1つのものに絞るしかないという意味ではなく、やってみて観察することの繰り返しによって自分なりの生活をつくっていく必要がある、という意味だ。

今日身に着けるものを選ぶことは、言ってしまえば案外煩雑な作業だ。それが自分の余裕を削いでいるなら、毎日のその作業自体を取捨選択するのもよいかもしれない。生活や人生においては、他にもいろいろな楽しみの苗が乾きを抱えて待っているはずだ。

それでも季節の変化と共に厚着になったり半袖になったりはするし、服選びが楽しみになるときはそれを楽しめばよい。服は生活の一部だ。自分が良いと感じるモノを今必要な分持ち、好みや状況に合わせて増やしたり減らしたりする。

シオコレに服を寄付しに来てくれたお客さんが、その足でお店をじっくり見て回り、吟味した服を購入して帰っていくこともあった。シオコレでは、それぞれが営む生活の断片がひとつの場所に編みこまれては解かれていく。

選ぶことの楽しさと、”選ばない”という選択をしていることで生まれる余裕や余白を、人生に上手に組み入れたいと思う。そしてその組み合わせは、永遠の絶対的な正解である必要はない。いつまでも変わり得る。

一か月の塩屋滞在を経た私は、シオコレにあったカラフルな花柄の巻きスカートを含むごく僅かな服だけをカバンに詰め、次の場所に居を移した。

坂田美優
@miyuribbon



今回着用いただいた商品
■イヤリング
■ツーピース
■黒いリボンのバレッタ
■髪に編み込んだスカーフ
■鳥のブローチ
■ベルト
■バッグ
■ツートーンブーツ

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