シオコレ・コーデ・リレーvol.2 大竹英洋
シオコレに関わりのある人やそのまわりの人に、シオコレの古着を着てコラムを書いてもらう、ゆる〜い連載 #シオコレコーデリレー 。
第2回目となる今回は、写真家の大竹英洋さんです。
塩屋中学校の横から海を目指して歩きはじめる。家々の屋根の向こうに横たわる水面が、陽光に照らされてチラチラと瞬いていた。坂を降りていくときの水平線が、いつもよりずっと高く見えるのはなぜなのだろう。イカナゴ漁の解禁は確かこの週末だったはず。足元に目を落とせば、日当たりのいい地面にスミレの花。塩屋小の桜を見上げると、すでにいくつかのつぼみが開いていた。僕が初めて「シオヤコレクション(=シオコレ)」を訪れた日は、そんなふうに春の兆しがあちこちに漂っていた。
とは言っても、日陰はまだまだ肌寒い。お店に着いて挨拶した代表の澤井まりさんは、ニット帽にストールといった冬の装いだ。まりさんが暮らす南谷の噂はずっと前から聞いていたが、お会いするのは初めて。気になっていても、「今だ」と思えるきっかけがないと、なかなか重い腰が上がらないのはいつものこと。だから今回、旧グッゲンハイム邸の管理人である森本アリさんからシオコレ・コーデ・リレーなる企画に声をかけてもらったのはありがたかった。
塩屋町の人口は約10,000人。僕が15年以上前に一年半暮らしたカナダ辺境の町レッドレイクは約4,000人だったが、そこにも”2nd Chance”という名の古着&古道具ショップが存在する。商品は町民から持ち込まれ、売り上げは慈善団体や事業に寄付される仕組みで、シオコレと同じくチャリティは生活の一部となっていた。
まりさんからシオコレの概要を説明してもらっているうちに、眩しいピンクのコートを纏ったマンナさんが登場。お店のロゴからチラシまで、デザインとイラストが専門だ。僕の着る服といえば実用性と耐久性重視で、おしゃれには素養がない。そこで、コーディネートを二人にお任せすることにした。いつもは目的に応じて選んでばかりだから、今日ぐらいはたまたまここに行き着いた服との出会いを楽しもうと思う。
マンナさん曰く「黄色は間違いない!」。ちょうど菜の花みたいなロゴスのシャツがあったので、緩めのシルエットのグラミチのパンツと合わせてみる。どっちもアウトドアのテイストだから、愛用しているバスクのブーツとも違和感がない。ジャケットは、おそらく着るのは学生の時以来であろうデニム地。後でまりさんに聞くと「あまり知られてないブランドだけど、赤いステッチが可愛いから置いていた」とのこと。そんな一言が、このお店の品揃えに物語を添える。
さて、いよいよ撮影…と思ったが、二人は何か物足りなそう。「もう少し”色”が欲しいよね」とポツリ。「色!色!」と呟きながら、まりさんが僕の首にもストールを巻き始める。でも、春らしさが半減ということで自ら却下。結局、マンナさんが手に取った花柄のスカーフを胸ポケットに入れることで納得。というわけで、塩屋の二人ならではの「カラフル・コーデ」の出来上がり。(もちろんアリさんの色使いには程遠いけれど…)
ちなみに英語のColorfulを辞書で引くと、「色彩豊か」という以外に、「生き生きとして刺激的」、「変化に富んで面白い」という意味合いがあるらしい。一方で、「個性的で癖のある」なんて側面も。まさしく塩屋はカラフル。人も町も、癖があるぐらいでちょうどいいのだ。最後にマンナさんと外に出て、旧グ邸の裏の急坂を登って、光の降り注ぐ緑の下で写真をパチリ。
やっぱり人と人は出会わなくてはいけない。リモートでは伝わらないと感じ始めていた今日この頃。コロナ禍の名残で、どこかこわばっていた身も心も、新たな出会いがほぐしてくれた。さあ、北の森のクマたちも冬眠から目覚める時期が近づいているはず。レッドレイクの友人たちも元気だとの知らせがあったばかり。今年こそはカヌーに乗って旅に出よう。
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大竹英洋 @hidehirootake(写真家)
今回着用いただいた商品
■デニムジャケット(zapatear)
■チェックシャツ(LOGOS)
■パンツ(Gramicci)
■スカーフ
■その他私物