2006B志乃【じいさん】
枯れた肌に苔の衣、寄り添うようにかぶさる丈の高い草。
僕のじいさんは、大きくて優しい。雨風にさらされて削げたからだの、足元のうろに僕を迎えてから、ずっと僕を守ってくれている。
種のころには、降りすぎた雨に流されないように抱き留めてくれた。
芽のころには、強すぎる日差しに焼かれないよう、陰をくれた。
そうして今、うろからはみ出すようにして広げた葉いっぱいに日を浴びた僕は、まだじいさんの足元に囲われている。
じいさんにはもう、枝葉も皮もない。少し物がぶつかれば、根も幹ももろく削れて落ちていく。そうして、だんだんとじいさんが土になっていくのを、僕は見てきた。
じいさんのからだが減るより、僕が伸びるほうが早い。だからきっと、じいさんがいなくなってしまうまでに、一度くらいは花実をつけて見せることができるはずだ。
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