1811B志乃【檻花】

 縦横に棚を這う蔓薔薇が、レンガ敷きの道を覆っている。
 冬に向かい熱を失いつつある陽光は、茨に遮られて力尽きたようにちらつくばかりだ。
 葉の端々を黄や茶に染めて、ところどころに黒斑の見える薔薇の姿は、それだけを見れば弱々しい。ほつりと赤く明るい一点、しおらしくややうなだれた花の姿も、ただ散るときを待っているかのように静やかである。
 たおやかな花姿に惹かれ、檻棚から救おうと手を伸ばす者も多い。
 棚に絡む幹を、その枝に確かに在る棘を、見もしないまま。

 花を捕らえた檻は、花が捕らえるための檻。愚か者が手を伸ばすのを、顔(かんばせ)を伏せて待っている。

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