2111A志乃【水鏡】

 敷地を切り落としたように、平らかな水が広がっている。ほそぼそと産毛のような短い草が風にそよぐ他は、さざなみとも呼べないような揺らぎしかない。
 この水鏡は、家を、庭木を、塗りつぶしたような暗色で映すのに、空だけは鮮やかな青と白で映す。好きな色しか映すつもりがないかのように、むしろ空そのものよりも色濃く空を映した。
 幾重にも重なる、山盛りカッテージチーズのような背の高い雲も、その背後に控える青空も。水鏡はまるで現実に想像と夢で色を付けたように、音もなく描く。

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