2003A志乃【くぐり戸】
石の舗装と砂利の傍ら、茅を編んだ壁と、古びた木の戸があった。
私の胸ほどの高さしかない戸は、屈まずに通れるとすれば小学生も低学年くらいまでだろうか。軽く固いだろう木版は白茶けて、年月を経て脱色された様子だ。板と板の隙間には木よりも白く色の抜けた細竹が挟まっている。
上部の飾り板は梅花と枝が彫り抜かれていて、それこそ小さな子供が目をくっつけて覗けそうな穴になっていた。
あそこから覗き込んだら、何か見えるだろうか。茅の壁は隙間があるし、戸を支える柱の薄い苔緑をくるりと回り込んで、壁向こうに木の閂があるのも丸見えなのだが。
好奇心を抑えきれず、私は彫り抜かれた梅の香りでも嗅ぐように腰を曲げた。
古い、木の香りがした。
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