2112A志乃【水火鉢】

 こんなところに火鉢が、と思った。
 薄青の陶器に黒々とした炭と、赤く燃える熾火。薄く灰をかぶった炭が、熱を移されるのを待っている。
 ……よくよく見れば陶器は水がめで、薄く苔を纏った流木が水がめの真ん中に立てられて、水を吸った部分が真っ黒に見えていたのだった。ちらりちらりとひらめいていた熾火は輝くように赤い金魚。
 寒風が水面を揺らして、目に感じた熱を吹き散らしていった。

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