2006C志乃【水平線の果実】
つるり、周りの花々が散らす硬質な虹色の光をはじいて輝く実がある。石榴にも似た尻尾つきの、青い実だ。
淡く冷たい春先の空と、色濃く息を詰まらせるような夏の空を仕切るように流れ込む白い雲。水中から水面を見上げたように、揺らめく網目の光。
空とも海ともつかない、青を宿した実が誘う。
触れればどうなるだろう。指先を飲み込んで波紋が広がるのだろうか。それとも、指先どころか心も呑まれて、冷たい流体の中をたゆたうことになるのかもしれない。
ひやりとした甘美な気配に、腕が勝手に持ち上がる。触れる前から爪の先に水気を覚えて、口の端から笑いがこぼれた。
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