2207D志乃【瞬間カクテル】

昼と夜。いや、夕と夜か。
 型板ガラスの濁らない凹凸を、層になった時間の色が染めている。目に刺さるような西日の鋭さは和らげられて、菱の面格子が落とす細い影をキッチンに落とすこともない。
 オレンジキュラソー、レモネード、バタフライピー。色味から思いついたリキュールやドリンクを並べてみるが、味が合うのかどうかもよくわからない。ただ、このひなびたワンルームで朝出かけたときのまま散らかったキッチンの窓から見た色のわりに、しゃれたことを考えてしまった気がした。誰もいないのに一人で恥ずかしくなる。
 なにもかもが面倒になって夕飯の買い出しすらせず帰ってきたが、旧友のバーへ飲みに行くのも悪くないかもしれない。頼んだらこの窓をグラスに再現してもらえるだろうか。
 くたびれたジャケットからスマートフォンを引っ張り出して、シャッターを切った。

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