2108B志乃【山道】
古いアスファルトのヒビを踏んでよろける足を引き戻して、ハアと大きく息をついた。
下草や垣のように茂った細い笹を刈り取った直後なのだろうか、土と草の匂いに包まれて急坂を上る。道にはみ出してきた分だけを刈ったようで、道の脇は手を差し込む隙間もないほど細い木は草刈りを免れた笹が、みっしりと壁を作っていた。
見上げれば午後遅くの傾きかけた日が頂上を眩しく照らしている。登り切った先がなに一つ見えないまま、膝に手をついて一休みすれば、肌を冷たい風が撫でた。夏の濃い湿気が一日中日の当たらない小道で冷やされて、ここはほんの少しだけ涼しいことにやっと気づく。山登りなどして体を動かしていたのだから日差しがなくても暑かったのだ。
へたに腰を下ろして一休みなど決め込もうものなら、尻から転げ落ちそうな坂の途中。
ひととき、息を整えた。
ご支援を頂けましたら、よりいっそう頑張ります!