2001C志乃【儚いという強かさ】
ひた、と雨だれが伝う。硬質な葉のおもてに、しとしとと踊っていた霧雨が宿って光るのは、透明なビジューのようで目に楽しい。
深い緑の葉の中で、八重の山茶花は白く輝いている。丸く開いた横顔はひらひらと細かな生地を集めたパニエにも似て、清らかな華やぎを見せていた。
遠目に見ればまるで木に丸めたティッシュをくっつけたようにも見える。しかし近づけば異素材で作ったドレスのようにも見えて、何も語らないのに目には賑やかだ。
手で触れれば、雨の湿り気で冷たく肌にはりつくだろう。力を込めて握れば、きっとがくから解けてばらばらと崩れる。崩れてなお手指にはりついて残る花弁を振り捨てる想像をして、背筋に寒気のような震えが走った。
簡単にできるはずのそんな乱暴が、できないまま。曇天にも日没を感じられる時間になって、私は家路を急ぐことにした。
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