2008B志乃【赤薔薇の気まぐれ】

 ねえ、と呼ばれた。声のほうを振り向けば、鮮やかな赤いフリルの少女達。窓から身を乗り出して、輝くような顔をこちらに向けている。
 風にそよそよと揺れてくすぐったそうにしているが、そんなに身を乗り出しては落ちてしまいそうだ。落ち着いて、となだめれば、お話しましょ、と的外れなこたえが返ってきた。
 どこへ行くの、最近暑いわ、風が強い日はたくさん踊れるから好き。
 それぞれが好きにおしゃべりして、どれどれと話を聞いてやれば満足気に咲う。
 窓のふちに体を預けて、お転婆さんだ。世話人は支柱を立てたりしないのかと聞けば、そんなものないほうが自由に踊れるのよとまた踊って見せた。背の高さよりも細い、しなやかな枝は、風に持ち上げられてするりと窓の奥へ引っ込んでしまう。
 窓の向こうは、よく日が当たる。

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