1907B志乃【ガラス越しの宇宙】

 糸のような、長い触腕がたゆたう。ゆらゆら、ふわふわ。アカクラゲの水槽だ。
 半透明に筆で赤紫を引いたような傘。傘の端からほつれたような長く細い触腕は、青い光を受けて闇の中に光るようだ。青白の糸は水の動きに乗ってなびきながらも、傘に従ってゆるゆると伸びている。
 もつれあうように、三匹そろってゆっくり下へ向かっていく姿は、落ちているようでもあり、昇っているようでもあった。まるで、見ている自分のほうが上下を間違えているような感覚に陥る。
 上下も左右もなく漂う。ガラスの向こうは、宇宙で満たされていた。

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