2001A志乃【ひととき】

 カップとポットがあっていないのはご愛敬。
 合板のテーブルに散らかした調味料や手紙の束を片付けて、お湯を沸かす。ティーセットは温めて、ポットに落とした茶葉へ沸かしたてのお湯が注がれた。ふわりと開いてポットの中を踊る茶葉はスノードームのようで、いつまででも見ていられる、と思ったところでカタリと蓋が閉じられる。
 ポットの注ぎ口からこぼれる僅かな湯気と茶の香りを吸い込み、ほうと顔を緩めた。
 茶葉のパッケージに適当な蒸らし時間を探すが、そもそも私はお湯を注いだ時に時間を確かめていなかった。そろそろだろうか。まだ早いか。
 しびれを切らして相手を見れば、ちょうどのタイミングだったのだろう。カップを温めていたお湯を捨て、茶漉しをセットしポットを傾ける。時折注ぎ口に茶葉を詰まらせながら注がれるのは、紅茶にしては淡い色。ファーストフラッシュ、というらしい。
 注ぎ終わるのをそわそわと待って、なかなか落ちない最後の一滴が部屋の暖色灯で金色に光るのを見つめた。
 ぽた。
 茶漉しを引き上げて、カップをそれぞれの席に置いて、コンビニスイーツをお供につけて。
 食後のデザートに、少しだけ時間をかけた。

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