1912D志乃【燈列】

 ずらり、上下二段五つずつ。柱を挟んでまた上下二段五つずつ。
 細やかな透かし彫りを施された燈火が、壁に据えられて遠くかなたまで並んでいた。遠ざかるにつれて隙間は見えなくなり、一つ一つ並んでいた明かりが二列の光の線になっていく。消失点の手前で線がかくりと折れたところを見ると、どうやら袋小路のようにふさがる壁があるらしかった。
 深更の暗紺空に、星明りも月明かりもない真っ暗な地上で、居並ぶ燈火は幻想めいている。燈火沿いに歩けば、どこか違う世界へ連れていかれそうな。それでいて、燈火を追ってもどこにもたどり着けず、延々と歩き続けることになりそうな。
 くだらない妄想だ、と思いながら私は燈火を数え始めた。それがどれくらい前だったかを、もう覚えていない。はて、次のこの燈火はいくつめだったか。

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