1912B志乃【長話】
曇天に冬枯れの秋草、常緑に咲いた山茶花の下、白地に茶ぶちの猫が目をすがめている。
鼻先にはすっかり白茶けたエノコログサがそよ風でかすかに揺らいでいるが、じゃれつくわけでもなく、石を積んだ垣の上から草越しにじっとこちらを見下ろしていた。
すっと前足をそろえてお行儀よく、ふと思い出したのは全校集会でマイクを前に長々と語る校長だ。
本日は今学期の最終日です。誰もが知っていることから始まって、いつも違うようで同じ話を何度でも繰り返す、校長先生のお話。体育館の舞台でライトを浴びてテカる頭。口癖を数える級友の指折り。
校長の話なら一分でお腹いっぱいだけど、このふかふかした猫集会の長のような猫が話すのなら、三時間くらい聞いていたい気がする。
人間にも、聞かせてくれるだろうか。
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