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一人百物語

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2021年11月の記事一覧

田の怪

 もう何年も前の話だ、と彼は語り出す。
 精々高校生だろう若い顔は、田舎の迷信深い老爺のように、疲れた色をしていた。
「父親の田舎は、田んぼしかないようなところで。盆時期とか、夏に帰ると蛙と虫の声がうるさくて寝られないような、そういう場所だった」
 青年はそっと耳をふさぐように両手を持ち上げたが、結局その手を膝の上で拳の形に結んだ。

***

 夜に、田んぼのど真ん中を歩いたことはあるか?
 夏

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