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shiou_kiyomi
2021年11月20日 17:41
もう何年も前の話だ、と彼は語り出す。 精々高校生だろう若い顔は、田舎の迷信深い老爺のように、疲れた色をしていた。「父親の田舎は、田んぼしかないようなところで。盆時期とか、夏に帰ると蛙と虫の声がうるさくて寝られないような、そういう場所だった」 青年はそっと耳をふさぐように両手を持ち上げたが、結局その手を膝の上で拳の形に結んだ。*** 夜に、田んぼのど真ん中を歩いたことはあるか? 夏