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Pしんぶん その6

神社長の町


幸いなる証

 勝ってくるぞと板橋区でお馴染みの、仕事終わりはすぐ北区と並んで二十三区屈指の魅惑タウンでありますよ。池袋辺りから区内随一の幹線道路たる川越街道を走ることしばし、幸せに包まれた板橋区幸町があるのです。幸町ですよ!東京でここと勝負できるのは、台東区寿くらいでしょうか。でもね、こちらには神様がついてるのだ。しかも社長さん。株式会社ゼウスですから、創業者にして未来永劫社長という万全の組織体制。

空が広い!


  静かな住宅街の真ん中を貫くさいわい通りの、無闇に背の高い建物もなく、広い空と真っ直ぐな道は、周囲に幸福感を染み渡らせます。界隈に点在する螺旋階段は、ひょっとするとStairway to Heavenではないか?なんて思ってしまいます。

 少し歩くと年季の入った低層ビル群、風雨に晒されて判別不能な地図をまじまじと見れば、勿論幸町団地の文字が確認できます。年月に耐え、素敵に赤錆まみれとなった波型トタン家屋が青空を背に佇む姿は、マニア垂涎の風景です。時を刻み忘れたかの如き懐かしさ満載の洋品店も、のんびり日向ぼっこの最中。販売停止から何年経過したかも分からぬあの乾電池の自販機は、町の大切なオブジェなのかも知れません。

 神社長率いる町の中でも、格別に幸せな人々が集うに違いない幸町集会所では、日々どんな話をしているのでしょう?幸町商店街には、胃袋を幸せにする食材が揃うような気がしますよ。

シアワセバス

 公園の隅には、幸せそうな都電とバスが乗客を永遠に待ち続け、程よい乗車率になったところで、幸福ガスが充填されたガスタンク裏停留所に向かうのです。とある倉庫前にうず高く積まれた片栗粉の箱も、きっとドーパミン上昇の作用があるのでしょう。意外と多い路地も見事な一直線ばかりで、街歩き人の頬を緩めること請け合いです。

 これが喧しい街道沿いにあるとは到底思えない幸町で幸福度を上げたら、お帰りには神社長への感謝と挨拶をお忘れなきように……。


ぼくが夏目坂に通うわけ


なかなか急である

 高田馬場から、狭苦しい東京の地下鉄の中でも珍しい、大阪ばりに広め車両の東西線に乗ってひと駅。早稲田から地上に出れば、右手にはこんもりとした森を従えた穴八幡の鳥居が見える。この隣に足腰の神様が祀られるお寺があるんだよなと思いつつ、もう既に足腰が痛いからここに来たんだと踵を返して通りを渡り、ファミマ店内にできた、薬局ならぬカプセル楽局自慢のガチャポンの誘惑を振り切っての夏目坂。地元・牛込馬場下横町の名主だった夏目家所在地が由来の坂道とか。

 漱石生誕地の石碑手前には、夏目家御用達どころか、助太刀に向かう堀部安兵衛が一杯引っ掛けたって酒屋まである。すぐ先にある聖徳太子のガソリンスタンドで道は二手に分かれ、道なりが正統派夏目坂で、終の棲家となった漱石山房があるけど、捻くれ者は右に曲がっての寺町歩き。ここの植え込みのおしろい花は真っ白な花が咲くんだよなと歩みをすすめりゃ、印刷所や紙加工工場が少々。オープンの置き看板が手招きする夏目坂珈琲でゆったりするのは、最後のご褒美ってことで。

 この道唯一のひょろひょろ桜も一輪二輪と咲き出して、眼の前の小さな集合住宅を境に、道は一気に狭くなる。しかも見上げるような急坂が行く手を阻むのだ。下戸塚坂とは書いてあるものの、江戸時代は武家屋敷だらけで特に名前も地名もなかったらしいけど、舗装もないこの急勾配を草履や草鞋で登るのは、そりゃ大変だったろうな。

 坂の途中の右側は路地だらけ。細道を遮るような電柱は天を突く迷惑振りで、その先は案外曲がれる道がないラビリンス。でも今日は魅惑の切り通しを横目に坂を上り詰める。通りに出ると、斜め左にはおよそ和菓子屋らしくない栄光堂の白い看板。横断歩道を渡ってすぐ右脇には、柳生但馬守の屋敷跡。なるほど武家屋敷の町か…。踵返して一本手前の小道に、目指す整体院が僕を待っている。猫背ですよって、また叱られるんだよなぁ。

良き切り通し急勾配

今日も銀座に行かなくちゃ


際立つ個性は消えゆく定めか…

 相変わらずあれもこれも消えていく銀座です。勿論消えた跡には新しい何かが出来るんだけど、出来た途端に前の建物を見事に忘れちゃう鳥頭です。

 以前歩いたカプセルタワービル跡地のフェンスが消えて、その意外に狭い敷地面積にびっくりしましたけど、そう遠くないうちに出来るであろうビルが、前まであった銀座名物の思い出を、どんどん消してしまうんでしょうね。そういや、その近所にあった元豆腐屋さんも更地になりました。廃業後も長いこと建物だけ残ってましたが、きっと後釜が決まったんでしょ。

 カプセルタワー無き後、銀座の異系名物ビルといえば、やはり静岡新聞・静岡放送東京支社ビルですよ。巨大な円筒を中心に、箱型ユニットがへばりついているみたいな愉快な姿を、かの丹下健三が設計したと言われても、俄に信じ難いでしょ。銀座でどの建物に入ってみたいかと聞かれたら、絶対ここです!服部時計店の屋上より、あの筒の中を歩いてみたいもの。

 銀座円筒形の代表選手だった三愛ビルは解体中で、その目隠しを見るたびに低くなっていくのが切ないですね。天下の四丁目交差点ですからきっとランドマークになるようなビルが出来ると思うけど、円筒は無理ですよね。つまりここが銀座で唯一の円筒ってことになります。でも考えたら、カプセルビルも静岡ビルも九丁目なんです。際立つ個性的ビルが街の際にあったということ。

いつまで残る赤文字看板


 そんなビルも消え始めてるけど、路地も減りつつあるみたい。金春小路に面したビルの工事も近そうで、そうなるとこの超小道も無くなる運命でしょう。ぼんやり歩いてたら気が付かない小さな看板も、いつまで見られることか…。


リッチマン専用パーキング


 解体されて後釜が決まらないと、お約束のコインパーキング誕生です。一時間停めると大散財な駐車場が増えたり減ったりする忙しい銀座。でも変化する姿に遭遇するのも、案外楽しかったりするんですけどね。

編集後記 のようなもの

 都バスとのコラボでスタンプラリーをやってるもので、久々に銭湯巡りをしました。銭湯も進化してますね。綺麗でお洒落で楽しくてびっくり。それが近所の店舗だったので、何故もっと早く気付かなかったのか?と反省しました。店主やスタッフが若返った店も多いようで、この仕事の魅力と誇りを感じているんだろうなと嬉しくなりました。

 

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池之端・古書ほうろう、雑司が谷・旅猫雑貨店、法善寺横丁・洋酒の店 路、目黒・ふげん社、浅草・珈琲アロマ、平井・平井の本棚、神宮前・シーモアグラス、大塚・山下書店。まだ募集中!

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