2019GW-常磐線で千葉に帰る旅(中)
↓前編はこちら 今回はいろいろ詰め込みすぎました…
白タキシードの夢のあと
鹿島を出発してから1時間半。
浪江からの代行バスで、上野側のレールの北端、富岡にやってきた。ここからは再び鉄道の旅となる。
かつての駅舎は赤い三角屋根を持っていたが、津波で全壊・流失。架線柱やホームの上屋などがかろうじて残っていた状態で、2015年に解体された。
2017年10月の再開の際に北へ100mほど移動して再建され、駅舎の隣には売店も併設されている。
左側、仙台方面の電光掲示板は、まだ出番のないまま2年半眠っていた。列車が再び表示されるのを見るのが楽しみだ。
跨線橋の窓から太平洋が見える。あの日、人々の生活を押し流していった荒れ狂う海は、穏やかな今の姿からは想像できなかった。
11時28分発のいわき行きに乗車する。車両はかつて特急「スーパーひたち」で活躍した651系だ。この車両も、全線再開の際に運用から外れており、もう見ることができない。震災前に「スーパーひたち」をよく使っていた身からすると寂しい限りだが、時速130㎞で26年間走り抜けたのだから大したものである。
昼食には少し早いが、鹿島の「松月堂」さんで買った「まいたけおこわ」を広げる。昔から帰りの特急で食べていた、おなじみの味だ。
定刻通りに発車。1989年製とはいえさすがは特急型車両、静かな滑り出しだ。ひたち号でおなじみのあのチャイムこそ流れないものの、特急時代を彷彿とさせる走りを見せる。
楢葉町役場の最寄り駅、竜田に着く。
富岡までの一駅が復旧するまで2年4か月、上野側の終着点を務めた駅だ。橋上駅舎化の工事が進められており、ここの木造駅舎もまもなく姿を消す。
ふと左に目をやると、太平洋が遠くに見える。おそらくだが、常磐線で最も海を近くで眺められるのは、広野から四ツ倉にかけてではないか。この景色を再び眺められるようになるまでは、たくさんの人々の努力があったのだろう。
4月20日に開業したばかりの新駅、Jヴィレッジだ。
その名の通り、サッカーのナショナルトレーニングセンター、Jヴィレッジの最寄り駅である。スタート地点となるはずだった聖火リレーは残念ながら延期されたが、いつかこの地から無事にランナーが走りだせる日を願ってやまない。
特急停車駅、広野に到着。童謡「汽車」(舞台になったといわれているが本当かどうかは不明)と「とんぼのめがね」(作詞の額賀誠志が広野在住だった)が発車メロディーに採用されている。
海沿いをゆく
車窓が青で一面埋め尽くされている光景は、常磐線ではこのあたりでしか見られない。今回は思うところがあってか山側に座ったが(僕もなぜ山側に座ってしまったのか覚えていない)、次に乗った時は海側に座ってみたいものだ。
末続は、ヤマザクラをはじめ季節ごとに色とりどりの花がホームを彩っている。地元の方々によって手入れがされているようで、この日も鮮やかなピンク色の花が咲いていた。そういえば、植えなおされた夜ノ森のツツジも無事に咲いたらしい。絶対に来年見に行こう、と書いている今決意したのであった(笑)。
そして、ホームのいわき寄りからは太平洋も見ることができる。こんなにロケーションのいい駅、常磐線では他にないだろう。時間があるときにはぜひとも降りてみたい。
四ツ倉からは複線区間となり、幹線らしさがやや感じられるようになる。ここまでがバリバリのローカル線だったからこそ、余計にその変化は大きく感じられる。
線形がよくなったこともあり、651系も、2駅という短い間ではあるが、最高時速130㎞の本領発揮である。だがやっぱり、優等列車として、ときわ路を駆け抜ける白タキシードをもう一度見たい、というのは僕のわがままだろう。
留置線が並ぶのは、いわきの一駅手前、草野。水戸方面へ始発列車が設定されており、かつては上野行きもあったそうだ。
ずっと田んぼが一面に広がっている。原発事故の風評被害に悩まされてきた福島だが、最近は徐々に安全性が認知されているような気がする。「福島のお米は、魚は、肉は、野菜は、こんなにおいしいんだぞ」と、誰もが胸を張って言える日が待ち遠しい。そのためには、しっかりと根拠を示して、みんなに積極的にアピールしていかなければならないと思う。
トンネルを出て夏井川を渡ると、そこはもういわきの市街地。名残惜しいが、651系の快適な旅も、あと少しで終わりだ。
いわきには12時12分に到着した。ここで乗り換え、さらに南進していく。
おまけはこちら↓
【動画】
前編 https://www.nicovideo.jp/watch/sm37161282
後編 https://www.nicovideo.jp/watch/sm37349428