朝、鉄瓶で白湯をわかす
せっかく和室のある家に引っ越したので、自分が好きな工芸品や日本のものをちゃんと生活にとりいれて暮らしたいって思う。
じゃないと、「日本が好き」も「茶道やってます」もなかなか薄っぺらい。
とはいっても、良質だからこそ、工芸品はそれなりに値が張る。
26歳フリーランスの収入はそんなに潤沢じゃない。
でもこんなとき、「日本の古いものが好き」ってけっこうラッキーなのだ。
実家から、宝の持ち腐れのような伝統工芸品が時たま発掘されるのである。
そんな風にして、新居にやってきたのがこの立派な南部鉄器の鉄瓶。
実家に帰ったときにお母さんと押し入れを掘り起こし、布にくるんでスーツケースに入れ、ごろごろしながら持って帰ってきた。
けっこう立派なこの鉄瓶は、ひいおばあちゃんのナミさんが米寿のときに記念でつくったものらしい。
蓋の裏側にうっすらこんなのも書いてある。
ナミさんは90代まで長生きしたので、わたしが保育園に行っているくらいまで元気で、お葬式のときには手紙も書いた。
記憶にはないけど、もっとちっちゃい頃はナミさんの杖を隠して怒鳴られるっていう趣味が私にはあったそうな。悪い子よ。
そんなナミさんゆかりの品を、20年以上の時を経てこうして使っているってなんか感慨深い。
***
南部鉄器とは、岩手県で作られている鉄の器物のこと。
中でも定番の南部鉄瓶は、茶の湯に使う釜「茶釜」を小ぶりに改良したのがはじまりなんだそう。
鉄瓶で沸かしたお湯には鉄分がたくさんはいっていて、なんだかまろやかで美味しいとあって、最近だと中国からの観光客にめちゃくちゃ人気なんだって。
わたし貧血しやすいし、美味しいお湯のみたいし、なにより絵になるし。
という安易な気持ちで迎え入れた鉄瓶だけど、意外と毎日使うのでとても重宝している。
我が家はボロいのでキッチンからお湯が出ないのが逆によかったのかも。笑
朝起きたら水を入れて、とりあえずIHコンロにかけておき(うちのIHは鉄器にも対応してる)、シューシューとかすかに音が鳴って蒸気が出てきた頃合いで火を止め、沸いたお湯をカップに注いでおく。
鉄瓶が熱いうちに中のお湯を空っぽにしておけば、すぐに水滴が蒸発するのでサビ防止にもなるみたい。
錆びやすいから、水滴をつけっぱなしにしておくことだけは避けるように。
それだけ気をつけて、あとは寝癖をなおしたり、
Amazonプライムで朝のプレイリストを探したりしてるうちにカップのお湯がいい感じの温度になってきたら出来上がり。
テキトーに沸かしたのにちゃんとしてる気分になれる魔法の飲み物
「鉄瓶で沸かした白湯」
である。
ちなみに白湯の適温は、体温よりちょっと高めの50度らしい。
なんだけど、めんどうだから私はいつも恐るおそる体感で温度をはかっている。
ちゃんと冷めてなくてやけどしたり、カップにお湯を注いでから朝の支度に慌ててるうちに気づけばめちゃめちゃぬるくなってたりするけど、
気合を入れすぎるとたのしくなくなっちゃうから、まずは気楽にね。
モーニングコーヒーも好きだけど、
なかなかいいですよ、鉄瓶で白湯を沸かす朝っていうのも。