一輪の花の心
そこはかとなく咲く一輪の花は、周りの草花の心を洗った。
誰にも気づかれないかもしれないし、大輪でもないかもしれない。
だけど、その花は咲いた。
一輪の花もまた雨に恵まれ、肥えた土に養われ、光に恵まれ、花をつけたのだ。
一輪の花はつぼみのとき、我慢していた。
「わたしは 咲いていいのかしら」
私が咲くことで他の花の邪魔をしないかしら。
私が咲くことで日陰になる草はないかしら。
私が咲くことで・・・
私が咲くことで・・・
ああそうか、そうだったんだわ。
「咲いてはいけない」と言っていたのは、私の心のうちだった。
ある日、つぼみを少しだけ膨らませた。
様子をうかがった。
何も変化がない。
誰も気づいていないのかしら。
また次の日、もう少し膨らませた。
沿うように生えていた隣の草が、ニッコリ笑った。
そうか、私は応援されていたんだわ。
次の日・・・
次の日・・・
私は私の花を咲かせるようにがんばった。
そしてやっと一人前の花を咲かせられたら、周りの草花は私を見て笑顔になった。
そうだ、力を使わないということは、誰も喜ばなかったんだわ。
だから私は惜しみなく力を使うことにした。
太陽はいっそう、私を恵んでいるようだった。
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