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加賀翔さん写真展『芸人地図』

私はやっぱり誰かの笑顔を撮ることが好きだと
再確認することになった、そんな素晴らしい写真展だった。


本題に行く前に。。

『しおりさんの写真は、ついつい寄ってますね』
とある写真教室に参加したときに
私の写真を見て先生に、ややネガティブに言われた言葉。

寄る写真の何がいけないのだろうか?
私はこの人の笑顔を伝えたかったのだ。
だから寄った(ドアップめ)のだ。

率直にそう思ってしまった。

私はこの被写体となる人の葛藤や苦悩を聞いたり
見てきた。でも今、その人は自分の理想とする暮らしを
楽しんでいる。人生を楽しんでいるのだ。
それを私は撮りたかった、残したかったのだ。

あの写真教室に通ってから、時々こんなに寄ってはいけないのか?と
自問自答しながら撮影する時が増えてしまった。

だけど、今回、芸人加賀翔さんの写真展を見させていただいて
『あぁ私は私の残し方で良いのだ。人って素晴らしい。
その瞬間を残される人(被写体)もその瞬間を残す人(カメラマン)
どちらも素晴らしい。』
そう感じる写真展だった。

あえて場所と日時以外は確認せず、まっさらなまま
情報なしで見に行ってみた。
加賀さんがどんな写真を撮ったのか?
どうして芸人さんたちをそこで撮影したのか?など
前知識なしで行くことにした。



渋谷のHMVの5階に会場はあった。
平日だったので、ほとんど人はおらず、ゆっくり一枚一枚
丁寧に見させていただいた。


加賀さんといえば、CMやTVで見ると
おとなしい感じの印象。
でもバラエティ番組で時々見かける写真を撮るときの姿勢や
目線は、『気配りの人』なんだと感じている。

芸人さんがそれぞれ違う場所で撮影していた。
これは仕事の合間に撮ったものなのか?
はたまたこの被写体となる芸人さんの思い出の場所なのか?
わからなかった。


でもそのうちに、おそらくこれは
それぞれの芸人さんの思い入れのある場所のような気がしてきた。
様々な種類のパネルで展示がしてあったが
照らし合わせるように見ていくと
被写体となる芸人さんの表情がすごく
過去を暖かく見ているようにも感じられたのだ。
そして同時に今を思い切り楽しんで
カメラを見て笑っているようにも見えた。

もしこの芸人さんたちの思い入れの場所を撮影地として
いると仮定するならば
カメラマンの加賀さんは、芸人さんたちの
苦悩を身近で見てきただろうし
ご自身も同じ立場を経験したからこそ
あの構図になったり、あの瞬間を選びパネルとして
引き伸ばしたのではないだろうか。


その真意はわからないけれど私にはそう見えたのだ。

私もただ写真を撮る、のではなく
その人のストーリー、ルーツなどを大事にしているし
これからも大事にしながら撮影したいと思っている。

だからこそ、ネガティブに言われた
「寄りの写真が多すぎますね。空間を捉えないと」という言葉が
引っかかっていたが、気にせず行こうと確信した。

確かに空間を捉えること、空間を切り取ることは
大切だろうけれど、一方でどの人がとっても同じになる。

SNSでよく見る『いいな、映えだな』と思う写真は
最初は惹かれるが、そのうちに『どの写真も同じだな』
『どのカメラマンが撮っても同じだな』という印象になる。


私はそうではなく、加賀翔さんのように
加賀さんにしか撮れない芸人さんたち(被写体)の笑顔があるように
私にしか撮れない笑顔を、時間を残していきたいと思う。



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