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ロマチのすゝめ

オットは本職美容師
ときどきプロアシスタント
毎日ロマチの顔を持つ。

ロマチとは
ロマンチストの略だ。
最大級の敬意を込めて、そう呼んでいる。

わたしという人間は、いつも少し先の未来を見ている。夢や目標、未来のしあわせの為に、とことんがんばることが好きなタイプだ。時に"いまを犠牲にすること"に目をつぶることがある。

一方のオットは、今この瞬間を存分に楽しみ、大切にしたいタイプである。

どちらがいいとも悪いとも思わない。
互いを尊重し、仲良く暮らして来た。

しかし、ここに来てわたしの価値観に変化が生まれた。それは日増しに大きくなり、やがて確信へと変わった。

新型コロナの影響で、
外出自粛が余儀なくされている今、多くの人が『生活』というものに、真正面から向き合っているのではないだろうか。はじめてといっても過言ではないほどに。

御多分に漏れずわたしもだ。

外に出ず、家族以外に会うこともなく、
一日三食を作って、合間に掃除をし、ちょっとおやつを食べたらもう寝る時間。

家事を回すだけでも時間が足りないというのに‥

すべての作業を切り上げさせ
わたしの手を止める
可愛すぎて罪な存在が我が家にはいる。

0歳児との暮らしは
本当に自由時間がない。

毎日同じことをしながら、
あっという間に一日が終わる。

突如として訪れた新しい暮らしに
早々にギブアップ宣言かと思いきや、今は心地よさすらおぼえてきた。

毎日がとても楽しいのだ。

それもこれも
すべてはロマチのおかげである。

代わり映えしない日常のひとコマが
ロマチの魔法にかかると、途端に、
いとおしい、大切な思い出に変わるから不思議だ。

ロマチはきっと誰の心の中にもある。

どうか、そのサインを見逃さず大切に育ててみてほしい。

ロマチのフィルターを通すと、日常の景色がおだやかに、優しい色にかわっていく。

それでは、我が家のロマチを一部ご紹介します。

【File.1】
たまに喧嘩をする。しばらく経ってテラスに呼ばれて行ってみると、草木の水やり用のホースを片手に
『しーちゃん、見てみて〜虹だよ〜きれいだね〜』
ロマチは虹を手作りする。
いつか男に生まれたら、真似したい。

【File.2】
息子が産まれ、毎日尋常じゃないほどの写真を撮る。オットから送られてくる写真には息子ショットに加えて必ず謎の風景写真も付いてる。ロマチは息子目線で写真を撮っていた。0歳とはいえ、いつも彼の気持ちを想像している。その延長で息子のプレイランドで寝るのはやめてほしい。

【File.3】
よく手紙をくれる。
誕生日はとっておきのやつを。
ロマチはプレゼントの芸が細かい。
かけるのはお金じゃなくて、時間と手間。
1枚ずつ大切に使ってもらう想定は承知だが、
わたしという人間は、一気に5枚使って大掃除を命じたりするジャイアンだ。

【File.4】
ロマチは自転車通勤だが、毎日必ず道を変え、まだ見ぬ景色に出会えるのを楽しみにしている。
『タクシーは時間を買ってるんだよ(移動中に打ち合わせなどに)』が口ぐせだった、最短距離で効率を求める自分を反省した。stayhomeで一緒に散歩をするうちに、きれいな花が咲いているところ、地面がふかふかの公園、おもしろ看板‥近所なのに知らなかった景色にたくさん出会えた。

【File.5】
料理修行の旅で家を開ける時、最初の数日分の作り置きをしてから出かける。沢山のおかずを楽しんでもらおうというわたしの想いを斜めに通り越して、ロマチは彩りは細部までこだわり、お弁当箱まで毎日着せ替えをする。ロマチはお弁当を開ける時のワクワクを大切にしている。たとえ、自分で詰めた日であろうとも。弁当箱が売るほどある家でよかったですね。

【File.6】
新しい、未知の味との遭遇を求めている。
ロマチは新商品、期間限定にめっぽう弱い。
男子は食べ慣れた保守的な味を好むというわたしの長年の研究結果を、真正面からぶち壊す。成功率は五分五分。わたしは安定の王道チョイスを譲らないが、ロマチ選定が美味しい場合はありがたくそちらをいただく。

【File.7】
旅先のホテルで、カードと共に置いてある貝殻(Hawaiiの場合)を大事そうに持ち帰り、保管している。部屋の一角にあるロマチの思い出コーナーには、お友達にもらったキーホルダー、チケットの半券、その他いろいろある。決してガラクタと呼んではいけない。ロマチは思い出を大切にする男だ。

【File.7】
『しーちゃん、これ絶対に捨てないでね!』
牛乳パックを大切そうにとっている。
先日、念願かなってロマチは丸く分厚いホットケーキに挑戦した。配合にもこだわってそれはもう大変においしかった。
わたしは細工が苦手だから絶対にキャラ弁は作らないと思っていたけど、どうやらロマチが作ることになるでしょう。

【File.8】
朝起きた時、遅く帰ったとき、たまにオットの姿が見当たらないことがある。
ロマチは家の中で隠れんぼを楽しんでいる。正確には探すこちらを楽しませてくれているのか。わたしは探すのをすぐ諦めるので、見つかるまで、じっと隠れている辛抱強さよ。最近は息子とセットで隠れるから、息子の音でバレちゃうけどね。

【File.9】
重い腰を上げて産後のダイエットをはじめた。甘いもの禁止!と声高々に宣言した翌日、オットが息子との散歩の帰りにプリンをお土産に買ってきた。
『もー!しーちゃんは食べないって言ってるでしょー!ぷんすかぷんすか』
ロマチはにっこり笑って
『心が豊かになるお薬だよ』
そう言って冷蔵庫にしまった。
わたしのダイエットには処方が必要なようだ。これじゃ意味ないけど、確かに家の空気は平和になった。

【File.10】
わたしは仕事柄、早食いだ。ロマチは、わたしが作った料理と時間をかけて向き合う。
『無くなっちゃうのがもったいないからゆっくり食べるね』が口ぐせだ。
息子が産まれ、ロマチがごはんを作ってくれることも多くなったいま、同じセリフをわたしが受け継ぐことになるとは。

【File.11】
ロマチは夕暮れ時がすきだ。
昔からどこにいても、夕焼けを見ている。
素敵な空を見つけては写真を撮って送ってくる。同じ空はないから、とロマチは言う。
その背中は、沈みゆく夕日にお礼を言い、その日一日を振り返っているように見える。
いつしか、わたしも空を見上げ写真を撮るようになった。

オットは自分で自分の毎日をワクワクする
楽しい方向に持っていく術を沢山知っていた。

忙しなかったわたしの人生は
ここに来てスローダウンしたものの
ロマチのおかげで、何気ない時間に愛おしさやしあわせを感じる瞬間が圧倒的に増えた。

暮らしが少しずつ変わってきたいま、
本当の豊かさについて考えさせられる。

どこか遠くに探していた豊かさは
案外すぐそばにある気がした。

ロマチを心に置くことは、とても良いことだと思う。心からおすすめしたい。

我が家のロマチ2号も順調に8ヶ月を迎えた。

よろしければサポートよろしくお願いいたします。