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【SS】某掲示板にて①(2015文字)

【みゆぴ】18:30
親と喧嘩して家出してきた🤣
17歳女子高生です、新宿周辺で今日泊めてくれる人~~??

【ダンディマン】18:36
みゆぴチャン、なにか嫌なことがあったのカナ(^_^;)
心配です。
オジサンが、あたためてあげようか😁
ナンチャッテ❗心の話だよ✨
もしよければ、迎えにいくヨ❓

【ゆうき】18:40
 〉みゆぴちゃん
一人暮らし25歳です、うち来る?
駅近だし好きなだけいていーよ

【ダンディマン】18:41
ゆうきクン、横入りは良くないぞ❗

【みゆぴ】18:43
〉ゆうきさん
いいのー?💓ありがとう!
ちなみにナニモク?

【ゆうき】18:48
〉みゆぴちゃん
それはみゆぴちゃんしだい。笑
でも俺まあまあ顔いいよ~

【ダンディマン】18:50
みゆぴチャン、騙されては、いけません❗❗
あとで泣くのは、ジブンだよ😅

ゆうきクン、悪い子だなぁ😡😡😡

【みゆぴ】18:50
〉ゆうきさん
なにそれ笑
健全希望でーす✋
代わりにご飯作ったげる!

【ダンディマン】18:51
みゆぴチャンの手料理、オジサンもたべたいナア😘

【ゆうき】18:52
〉みゆぴちゃん
ご飯か〜😌まあいいよ笑
19時半にドンキの歌舞伎店でいい?
背184あるから多分すぐ分かると思うわ

てかおっさんうるさくね?w

【ダンディマン】18:53
うるさいとは、なんですか❗
年上は敬うものですヨ😀

【みゆぴ】18:54
〉ゆうきさん
りょーかい!背めっちゃ高いね!
着いたらまた書き込むねー!

それなw

【ダンディマン】18:55
みゆぴチャン、行っちゃ、だめだよ(^_^;)
本当に、心配です。

✴✴✴

19時30分。
未結みゆがドン・キホーテ新宿歌舞伎町店に着いた瞬間、後ろから近付いてきた何者かにがっと肩を掴まれた。
驚きの度合いに反して、悲鳴として発せられたのはとても小さな声だった。

恐る恐る、振り向く。
そこにいたのは、紛れもなく未結の父親だった。

「ハァッ……未結、よかった……」

ゼェゼェと息を切らしている。
基本的に鉄仮面で、仕事しか頭にない父親のこんな姿を彼女は初めて見た。

「なんで……? ゆうきさんは?」
「ちゃらついた男ならさっき追っ払った。俺は185ある」
「……なに張り合ってんの」

今夜の行き場を失った未結は、仕方なく父親と並んで歩く。

「なにあのキモイ文章」
「ママからお前が出て行ったって聞いてな。家出掲示板ってやつを探したら見つけた。出て行ってすぐの時間で、17歳で、新宿で、みゆぴだ。それに料理もできるときた。お前だって確信した」
「だからってなんであんな文章になんのよ」
「普通に声掛けたら怪しまれると思ってな。おじさん構文ってやつを調べながら打ってた」
「100倍怪しいし、なんかうまいし」

隣にいる父親が真顔であの文章を打っているところを想像する。
無意識に笑っていることに彼女は気がついていない。

「何か、あったのか?」
「ママと進路のことで喧嘩した。高卒で働きたいって言ったらやめとけって」
「……そうか。働くのはなあ。大変だぞ」
「仕事大好き人間のくせに」
「そう見えてるのか」
「私の進路とか興味ないでしょ」
「大ありだ。でもお前が進みたい道にいけばいいとは思う。高卒で働くのも、本当にしたいことがあるならそうすればいい」
「したいことは……今のところ別にない。ただ、自分でお金を稼いだら認めてもらえるかなって」
「……誰に?」
「分かんない? いっつも会社の人の話ばかりするヒト」
「……ごめんな」
「あやまらないでよ」

そこで親子の会話は途切れた。
家に着くやいなや、未結は2階の自分の部屋に閉じ籠もってしまった。

***

【みゆぴ】19:55
〉ゆうきさん
ごめんなさい。
結局家に帰ることにしました。
ありがとね><

【ゆうき】20:00
〉みゆぴちゃん
まじかwでもちょーどよかったわ
実はさっきめちゃ怖いオッサンに絡まれて逃げてきたから結局会えなかったんだよね
まあまた飲みにでもいこ!

【ダンディマン】20:01
コラ😡
未成年に、お酒をすすめてはいけません❗
みゆぴちゃん、もう一回、親御さんと話してみたらどうカナ❗❓
オジサンが、魔法のチカラで応援するヨ😁

【みゆぴさん】20:01
〉ゆうきさん
ダンディマンがこう言ってるからだめだわw
あと3年後にのも。笑

今から親と話してくる、じゃーね!

【ゆうき】20:02
なんでダンディマンと打ち解けてんだよw
おけ、気長に待ってるわ。笑

がんばれよ

【ダンディマン】20:03
3年後も、ダメです(^_^;)
オジサンの、許可制です。

みゆぴチャン、えらいね❗

✴✴✴

20時05分。
2階から階段を降りてくる足音が聞こえる。
なんて声をかければいいんだ?

不安になって妻の方を見る。
「貴方が話してあげて。あの子が求めてるのはきっと、貴方との会話だから」
「……分かった」

自分の娘と話すだけなのに、変に緊張してしまう。
未結が部屋に入ってきた。

「みゆぴチャン! オジサンとお話しよう!」

娘と妻のドン引きする顔が目に映った。
くそう、俺はまた間違えたみたいだ。


続編「【SS】某掲示板にて②(1435文字)」もよければご覧ください。






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枝折(しおり)
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