人魚姫との恋2話
海での出逢いからLINEをするようになり僕はすっかり朱里に夢中になっていた。こういうの一目惚れって言うのかな?
レコーディングを控えていて連日レッスンに明け暮れていたある日のこと。朱里から「お時間ありませんか?」とLINEが来たのは出逢ってから2週間程経った午後の事だった。
僕達はスタジオでレッスンをしていて休憩時間になった時だった。
僕は嬉しくなって「あと1時間したら用事が終わるので逢えるよとLINEをして待ち合わせをした。」
待ち合わせの場所に行くと水色のワンピースを着た朱里が待っていた。
長い髪がそよ風に揺れて眩しかった。
「お待たせごめんね」
朱里に声をかけると彼女はニッコリと微笑んで「ごめんなさい、忙しく無かったですか?」と聞いた。
「大丈夫だよ」僕はジーンズにトレーナーのラフな服装に黒のキャップをかぶっていたがマスクを外して朱里を見た。
「リツさんだ」朱里がそう言うので不思議に思いつつマスクをした。
しばらく話をしていたが、店にいた若い女子高生が
僕達を見てヒソヒソと話してるのが気になり、店を出た。
僕は朱里と歩きながら側にある公園のベンチに座った。朱里はバッグから小さな包みを取り出し僕にくれた。「僕に?」朱里ははにかんで「はいどうぞ」と言った。ピンクのリボンを解き包みを開けると中にはブルーのシーグラスのペンダントが入っていた。
僕はペンダントを手に取った。「これこの間のシーグラス?」「はい私が作りました」きれいな水色のシーグラスのペンダントは日差しに煌めいていた。
「ありがとう、きれいだね、こんなにステキなペンダントになるんだね?」
僕はペンダントを朱里の前で付けてみた。
「どう?」朱里に聞いてみる。朱里は嬉しそうに微笑んで「似合います、リツさんにはブルーがよく似合います」「あれから作ってくれたの?」僕が聞くと朱里は「はいプレゼントしたくて」と照れながら言った。
「ありがとう、嬉しいよ大切にするからね」僕は朱里を見つめてお礼を言った。
朱里が僕のために作ってくれたことが嬉しくて堪らなかった。朱里がもじもじしながら意を決したように僕を見つめて「聞きたいことがあるの」と聞いてきた。
僕は何だろうと思いながら
「何?」「リツさんってMelodyのボーカルの方ですか?」と真っ直ぐな瞳で聞いた。僕は意外な言葉にドキッとした。
「そうだよ、ごめんね話さなくて、でも湘南で逢ったときの僕はただの早見律なんだ。スランプでどうしょうもなくて海へ行った。その時君と会って砂浜でシーグラス拾ったり、遊んだりして、すごく楽しくてさ、スランプなんて吹き飛んだんだ、LINEしながら話さなきゃと思ったけど僕はただの早見律として君と繋がっていたかったんだよ、ごめんね言えなくて」
僕は朱里にありのままの気持ちを伝えた。
朱里は僕を見てゆっくりと話しだした。
「私Melodyの事名前しか知らなかったの。友達でファンの人がいてCD見せてくれて見たらリツさんが写っててびっくりして名前聞いたら早見律って教えてくれて海で逢ったリツさんってわかったの」「そうだったんだ?」「あの時のリツさんとMVのリツさんは全く違った感じで、どっちがリツさんなんだろうと思ったけど海で逢ったあのリツさんが私の知ってるリツさんだと思ったの」
朱里の言葉を噛み締めながら僕は言った。「僕ね君と出逢えて良かった。人魚になりたいって言った君が可愛くて素敵だなと思った。この子といたら癒やされるだろうなって。だからちゃんと話してわかってもらいたいって思ったんだよ」
朱里はちょっと涙を浮かべて僕を見つめた。
「リツさんありがとう、嬉しいです、Melodyの事教えてくださいね?」
僕は嬉しくて朱里の手を握りしめて言った。
「ありがとう朱里、僕と付き合ってほしい」朱里は瞳をキラキラさせて「私でいいのかな?迷惑にならないかな?」と言った。
「ならないよ、君がいいの、僕の人魚姫」
「はいよろしくお願いしますリツさん」
こうして僕達は密かに付き合うようになった。
メンバーにも秘密の恋。
だが僕の変化に気付き始めた奴らがしつこく理由を聞いてくる。ある日朱里と待ち合わせ場所に向かうとき
奴らはこっそりと跡を付けてきたらしい。公園に着いて朱里が来るのを待っていると、すぐに白いワンピース姿の朱里がやってきた。
「ごめんなさいリツさん待ちましたか?」「いや、僕もさっき来たばかりだよ」
「電車遅れちゃってハラハラしちゃった」「慌てなくていいのに」朱里は頬を染めながら呟いた。「だって早く会いたかったから」
僕は朱里の言葉に少し照れて「僕もだよ」と言った。
遠くから二人の様子を見ていたメンバー達は朱里の存在を知って呟いた。
「やっぱり女だったな」と永遠が言うと「うん、しかもかなり可愛いよ」と陸が言う。輝は「あいつのあんな顔見たことないぞ」「そうだね、いつも難しい顔してパソコンとにらめっこしてる顔しか見たことないね」と直人が言った。
「見つからないうちに帰ろうぜ」と輝の言葉にメンバーは従い公園を後にした。