花業界の10年先を未来予測した、サスティナブルなブーケ/フラワーデザイナー森田真樹さん
こんにちは、花卉園芸業界のライターをしている岩田紫苑です。
本日ご紹介する方は、株式会社縁代表/LOTUS BASEフラワーデザイナーの森田真樹さん。「花で世界平和」を掲げ、プランツ・ギャザリングという手法やルーティブーケを広めるべく、精力的に活動されています。
(インタビューは2022年3月末に実施)
まずは、皆さんルーティブーケをご存知でしょうか?根っこがついた花やグリーンを組み合わせる「プランツ・ギャザリング」という手法によって、束ねられたブーケのことです。
「プランツ・ギャザリング」という手法は、愛知県の青木英郎氏によって、考えられた日本発の園芸技術。森田さんは、切り花で4,000件以上のウェデイングブーケを制作してきたフラワーデザイナーですが、2015年初めてプランツ・ギャザリングの体験会に参加し、その手法に無限の可能性を感じ、その場で青木先生に弟子入りしたそうです。
当時を振り返り、森田さんはこう語ります。
「大学在学中から、自店の経営もしていたので…花業界に携わり、25年以上が経ちます。日本にフラワーデザインが広まる前から、花業界には関わっていたので、一通りのことは知っているし、学んだと自負していました。しかし、あの体験会は本当に衝撃的でしたね。ルーティブーケの作り方が、さっぱり分からず、想像もつかなかったから。」
その後、ギャザリングという手法に魅せられ、切り花のフラワーデザイナーから転身し、現在に至ります。
プランツ・ギャザリングやルーティブーケには、どのような可能性があるのか、詳しくお聞きしました。
「切り花は、根から切り離した瞬間から余命が始まります。枯れるまでの美しさを楽しむものです。私は以前から、ここに違和感をもっていました。人間の都合で、茎をカットし輸送。それらを綺麗に見せるために、あたかも矯正するかのように、切り花のブーケを束ねてきたんです。しかし、ルーティブーケは根つきなので、『自然との共生』が叶う。ブーケを解いて、土に植えたら、また再生するんです。だから、この根つきのブーケは、サステナブル/持続可能な、という点でクリアしている、と言えます。」
また、体験談として、素敵なエピソードもお伺いできました。
「以前、秋にバラの集いというパーティーがあり、ブルガリア大使の公邸へ招待されました。その時、ブルガリア大使や通訳の女性に、バラのルーティブーケをプレゼント。この手法は日本で生まれた技術で、世界に発信できるブーケです、というコメントを添えて…。その後、翌年の6/2ローズの日に、再びバラの集いがあったのですが、通訳の女性が私のことを覚えていて、声をかけてくれました。秋にもらったルーティブーケのバラを土に植えておいたら、また最近になって花を咲かせた、という嬉しい報告をしてくれたんです!9か月前に渡したブーケが、再生したんですね。」
そして、今回製作したこちら▲のルーティブーケは、更に特殊な方法もほどこしている、とか。森田さんだからこそできる、今まで培ってきたテクニックの掛け合わせ、だそうです。
その方法とは、プランツ・ギャザリングという青木先生の手法と、森田さんのお母様であり、フラワーデザイナー宮脇いづみさんによる手法。宮脇さんは、日本のフラワーデザインを初期から支え、指導に携わった方。1978年に内閣総理大臣賞を受賞されていて、花業界におけるキャリアは半世紀にも及んでいます。
根つきのブーケでは、最後に専用のリボンで、握っている部分から、根っこの先端まで綺麗に巻き込むため、フワッとした動きを表現しにくい、とのことですが…お母様の手法を用いることで、グリーン本来の柔らかさや、動きを表現することに成功したそうです。
森田さんだからこそ、できるルーティブーケ。
青木先生と宮脇さんの手法を掛け合わせた特殊なブーケです。
アジアンタムやカランコエ ウエンディなどがフワッとして、生き生きとした雰囲気ですね。ブーケを手に持ってみると、まるで自然界で風が吹いたかのように、花材が揺れて、とても美しかったです。
SDGsが意識される現在。それゆえに、このルーティブーケを、国内にとどまらず世界にも、広めていきたい。そう意気込んでいる森田さん。
最後に、ルーティブーケの展望を伺いました。
「ようやく時代が追いついてきて、サステナブル/持続可能な、という視点が浸透してきました。この視点をもつことは、花業界においても、必要になってきます。このルーティブーケであれば、ブーケという作品を通して、それらを表現することができる。だから、花業界の10年先を未来予測したブーケと言っても過言ではありません。近い将来必ず、このルーティブーケに注目が集まる日がきます。なぜなら、見ための綺麗さだけでなく、自然との共生が叶ったブーケであるから…『根つき』に価値を見出す方がどんどん増えますように。」
▶フラワーデザイナーの森田真樹さん
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