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こどもたちに、植物を育てる大変さから楽しみまで伝えたい/ガーデンプランナー菊池千恵美さん

こんにちは、花卉園芸業界のライターをしている岩田紫苑です。
私の住む流山市でご活躍中の、ガーデンプランナー菊池千恵美さんにインタビューしました。
本日は、そのインタビューの内容をお届けします。

お家に植えられているお花や木々のメンテナンスから、外構工事までも行う合同会社クリザンテームの代表をされている千恵美さん。「花屋だけど花屋じゃない」というキャッチコピーのもと、精力的に活動されている千恵美さんに、過去のキャリアから、今後の意気込みまで語っていただきました。
(インタビューは、2022年12月末に実施)


本日は宜しくお願いします!
植物にまつわることなら、なんでもお任せできる、クリザンテームさんですが、千恵美さんご自身のこれまでのキャリアをお伺いしたいです。
お花屋さんになるきっかけは何でしたか?
ウェディングプランナー時代に、自分が花屋で働く夢をみました。
実は、それがきっかけですね。私は花屋になるべきなんだ、と行動派の私は、すぐに転職活動をスタート。
1社目でご縁があり、すぐに商業施設内の花屋に雇っていただくことになりました。

1組1組にあった結婚式をご提案し、カタチにしていくのが、ウェディングプランナーの醍醐味です。
しかし当時、会社に、社員別のグラフが貼られていました。担当した新郎新婦に対して、いかに単価を上げることができるか、というノルマ制…。プレッシャーもあり、ウェディングプランナーの仕事に魅力が欠けていた矢先、花屋で働く夢を見たんです。

夢を見なければ、また違った道を進まれていたかもしれないですね。そう考えると、なんだか不思議です。
転職活動を開始して、1社目で採用が決まったのも、なにかの巡り合わせかもしれませんね。
そうですね。しかし、その花屋では、私が学びたかった生花は取り扱っていなかった…
プリザーブドフラワー、ボトルフラワー、アーティフィシャルフラワー、ドライフラワーを販売するお店でした。
諦めきれなかった私は、その花屋で働きながら、生花の勉強を開始。フラワーアレンジメント教室に通い、教師免許を取得しました。

▲お誕生日のお祝いに制作した花束。

▲ミモザのリースキットを予約販売されたときのお写真。

なるほど、そこでお花に関する知識を得られたのですね。
ガーデニングについては、どこで学ばれたのでしょうか?
花屋に勤務していたころ、プライベートではマイホームのお庭に悩み始めていました。
同じ植物であっても、生花とガーデニングは全くの別物であると感じます。ガーデニングも勉強してみたいという思いが募り、商業施設内の花屋を退職。ホームセンターへ転職し、ガーデン売り場を担当しました。
でも、やっぱり生花にも触れていたかったので、兼業というかたちで、都内の結婚式場の花屋にも勤務しました。

▲制作した枕花。
祭壇へ飾る花や、喪主花などの制作も手掛けているそうです。

▲ロビーの装花を手掛けることもあるそうです。

ホームセンターのガーデン売り場と、結婚式場の花屋。二足の草鞋だったんですね。
ホームセンターでは、衝撃的な出来事もあったそうですね。お聞きしてもよいですか?
はい、廃棄する処分量に驚きましたね。繁忙期が終わる5月後半に、春の花から夏の花に切り替えるという理由で、約500苗ポットを処分しました。土に植えたら、どんどん成長し花を咲かせるにもかかわらず…
つぶしたりして、とても心が痛みましたね。

そんな、いたたまれない経験もしつつ、ホームセンターで働いていると、お客様からは、様々な質問が寄せられました。庭木の手入れ方法だったり、育て方についてだったり…。
上手く答えられず、庭木の知識も学ぶ必要があると思い、ホームセンターを退職したのち、
庭木のメンテナンス業界に足を運びました。
そこで、植物のメンテナンス、育て方、剪定など、手入れ方法を一通り学びました。

▲もみじを剪定している千恵美さん。

凄い…千恵美さんの行動力の賜物が、今に繋がっているのですね。
お花屋さんやフラワーアレンジメント教室では、切り花について。
ホームセンターでは、ガーデニングについて。
メンテナンス業界では、庭木について。
過去のキャリアや知識が集結し、今のクリザンテームさんになったのでしょうか?
今までの経験から、植物は、人間と同じ生き物であると感じます。人間と同じように、お風呂や食事、睡眠(休眠期)が、植物にも大切です。私自身、初めて知ることばかりで、多くの方も知らないことだと思います。
皆さんのお庭の悩みを解決したいという理由もありますが、人に植物を育てる大変さから楽しみまで、伝えたいということが目的で、会社を立ち上げ、現在に至りますね。

とことん動きながら考える…ですね。
そうですね、今までのキャリアは決して無駄ではなかった…と思います。
当時は悩んで悩んで、自分は何をしたいのか、今後どうしていきたいのか、ビジョンも固まらず…
模索する日々でした。とりあえず、やってみよう。やり続けてみよう、の繰り返しでした。
自分でもまさか、ここにたどり着くとは思ってなかったですね。

ありがとうございます、今までのキャリアをお聞きして、納得です!
クリザンテームさんを立ち上げてからは、どのようなお仕事内容が多いでしょうか?
みなさん、住んでいるお家のお庭をどうしたら良いか分からない…という悩みが多いですね。
そのため、まずはクリザンテームのほうで、お客様の要望を引き出し、その答えを導きだしていく。

例えば…
お子さんがいらっしゃるご家庭には、このお庭を使って、お子さんと遊びたいですか?
植物を育てて、リビングから植物が見える空間にしたいですか?
ペットを飼っていらっしゃるご家庭には、ドックランにしたいですか?
など。

お客様が求めるものと予算に応じて、対応していきます。
エクステリアを提案したり、お庭をお手入れしたり、新しい植栽を植えたり…仕事内容は様々ですね。

▲お客様のお庭をメンテナンス中。

なるほど。植物のあらゆる知識をもっている千恵美さんだからこそ、
様々なご提案ができるのも、クリザンテームさんの強みですね。
皆さんのお庭をメンテナンスしていて、課題に感じていることなどはありますか?
ハウスメーカーさんと外構屋さんに、もっと植栽の知識を持ってもらいたいです。
というのも、お家を建てたときに、玄関の近くに木々を植えてしまったり…
本来であれば、2-3m間隔で植えなければいけない植物を、1m間隔で植えてしまったり…
ココにこの植栽を植えたら、未来がどうなるのか、という予測ができていないのです。

例えば…こんなこともありました。
ハウスメーカーさんや外構屋さんから、「この植物は強いから、メンテナンス不要だよ!」
と教えてもらった方がいました。
その方は、言葉通り、メンテナンスをしていなかったのですが、
2-3年経つと、植物はものすごく成長してしまっていて。
「メンテナンスが要らない植物を植えてもらったのに、こんなに成長してしまって…自分でも手入れができない…」と仰って、クリザンテームに相談してくれました。
その植物を確認しにいくと、春と秋の2回メンテナンスが必要な植物だったのです。

この時の、植物の気持ちを代弁すると
「成長しすぎてしまって、風通しが悪いよー暑いよー蒸れてるよー」
「虫が身体に付いていて、かゆいよー」
「お肉(肥料)を食べたいよー」
このようになりますね。

植物は声を出せないから、私たちも分からない。そのまま放置されてしまって、手遅れの状態で、
クリザンテームに相談しにくるお客様もいらっしゃいます。

▲伸びきってしまったオリーブを抜根し、お手入れが楽ちんのお庭に変身する、ビフォーアフター動画。

▲クリザンテームさんが携わったお庭の数々。
ビフォーアフター動画がとても面白いので、ぜひご覧ください。

どのように根が広がるのか、どのように成長していくのか。
植物の特徴も理解しながら、数年先まで見越して、植えなければならないのですね。
ハウスメーカーさんや外構屋さんは、その知識が乏しい…と。
その通りです。前述した、玄関の前に木々が植えられてしまった案件も同じです。
木々は強いから、どんどん根をはります。建物よりも木々の方が強いから、
30年後40年後、家が盛り上がってきてしまうリスクがある。
このような未来を予測することができれば、そもそも、建物の近くに木々を植えることもないはずです。
生きている植物を、家の前に植えられたから、という理由で、根こそぎ抜かれて処分してしまう…。
とても悲しい現実です。

だからこそ、ハウスメーカーさんや外構屋さんが、もう少し知識を持っていれば、このような事態は避けられる、ということですね。
はい。もし仮に、ハウスメーカーさんや外構屋さんが、知識を持っていない場合は、このような手段もあります。

お庭に植物を植えたときは、ハウスメーカーさんや外構屋さんが、
いつでも相談できる植木屋さんをお客様に紹介する。
そうすれば、2-3年経過し、成長してきた植物をどう手入れすれば良いのだろう?と疑問に思っても、
相談先がありますから。手遅れになる前に対応が可能です。

しかし、現状は、その植物に対して、どんなメンテナンスが必要か、誰も分からない状態です。
ジャングルのような、雑木林のような…お庭になって
初めて私たちがメンテナンスをすることも多々あります。

また、メンテナンスでお庭に伺うと、植物を生き物として捉えていないお客様も、ちらほら。
「この植物、邪魔なので、抜いてください。」と明らかに嫌な顔をして、依頼してくる方もいます。
勝手に植えられて、育てられないから、抜かれる。
生き物として、捉えていないからこそ、簡単に、こう言えるのです。

これらは、幼少期の環境や、根本の教育現場がおかしいのでは、と思います。植物も踏んだら痛いよ、引っ張ると痛いよ、と大人がこどもたちにもっと伝えるべきですね。

▲草刈りをしたり、除草剤をまいたりする千恵美さん。

確かに。幼少期からそう教われば、おのずと植物の気持ちに寄り添える大人になるはず、ですよね。
他にも、今までのキャリアのなかで、課題に感じたことにも向き合っているそうですが…詳しくお話いただけますか?
課題は2つあります。

1つ目は、ホームセンターでの課題です。
同じホームセンターであっても、その地域のニーズに合わせて、植物の品揃えを行うことでロスが減る、
とホームセンターに伝えていきたいですね。

例えば…流山おおたかの森付近では、30代-50代の方が多く住んでいます。
淡い色やくすみ系、上品な濃い色が好みで、ナチュラルガーデンがお好きな方が多いです。

一方、柏付近では、55-80代の方が多くいらっしゃいます。
赤、黄色、オレンジ、ショッキングピンクなど、鮮やかな色味が好み。
淡い色や目立たない色は、あまり好まれませんね。

私からガーデン売り場を見たら、一目瞭然…ですが、
忙しいスタッフは気付いていないようです。
ホームセンターには、様々な売り場があり、
ガーデン売り場に特化して、ニーズを汲み取るのは正直難しいかもしれません。

でも、だったら、ガーデン売り場の担当者向けに、セミナーを実施する提案もしていきたいです。
これは、以前勤めていたホームセンターでやっていた試みですが。
趣味の園芸で有名な吉田先生をお招きして、ガーデン売り場の担当者に、植物の育て方を学んでもらう機会です。
このような機会があれば、ガーデン売り場の担当者は、知識が豊富になりますし、
それをお客様にお伝えすることができます。

なるほど。お客様が植物を購入した後も、育て方やメンテナンス方法に困らないように、ガーデン売り場の担当者が、事前に伝えておけば、手遅れになる状態を避けられますよね。
2つ目の課題は、何でしょうか?
2つ目の課題は、生産者さんから市場へ出荷する際の、課題です。

生産者さんは、1つのケースに24ポットの苗を入れて、市場に出荷しています。
しかし、正直言って、ホームセンターや園芸店、お花屋さんにくるお客様は、同じ花苗を2つも3つも購入しないはず。
24ポット全部の花苗が売れるお店は、業者さんが出入りするお店のみ、ですね。

そうなるのであれば、24ポットではなく、市場では12ポットで販売すれば、
仕入れたホームセンターでも、ロスが減るはずです。
ロス見込みになる、残りの12ポットは、新鮮な状態で、商業施設やテーマパーク、公園に植え付けることもできますよね。

岩田さんは、ホームセンターで、売れ残った花苗が、徒長しているのを見かけたことはありませんか?
花苗が、どんどん成長して、花や茎、葉っぱが伸びきってしまい、
植物の見た目が乱れる状態のことを、【徒長】というのですが。

あります、あります!
売り場の通路まで、葉や茎が伸びきっている花苗を見かけたことが…
それです!
どんどん成長してしまい、見た目が悪い状態になると、お客様も購入しません。つまりロスに繋がります。
市場から仕入れる数を12ポットにしていれば、そのロスも少し減らせるのでは、と考えています。

この課題については、どのように皆さんに伝えていけばよいのか、
実務経験がないため、まだイメージできていません。
ただ、今回岩田さんと出会えたように、横のつながりを大切にしていていきながら、発信することで、
沢山の人の活動を見聞きし、地道に模索していきたいと思っています。

これは、難しい問題ですね。生産者の方にも、市場の方にも、ご意見をお聞きしたいです。
課題について、詳しく教えてくださり、ありがとうございます。

最後に、クリザンテームさんの、今後の展望をお聞きしたいです!
まずは、すぐに出来ることとして、
ホームセンターでのセミナー講師を担当し、売り場でのロスを減らす活動をしたいです。

2つ目は、大きな夢ですが…
植物の育て方を伝えた人物として、教育という部分で、名を残したいです!!

▲親御さんのご依頼で、こどもたちと一緒に花苗を植えたり、水やりをしたときの様子。

虫が嫌いな人もいるように、植物も嫌いな人がいるはず。家の中や庭に、植物がゼロでも良いと思います。
しかし、植物との関わり方を知るだけで、見方は変わってきて、こどもや人に教える時の伝え方も変わってくる。
だからこそ、根本にある教育現場にて、未来のあるこどもたちに、植物のことを伝えていきたいです。

今ある教育は、水やりをすれば花は育つ、という綺麗な部分だけを教えています。
人間がお風呂に入るように、植物も、汚れた葉っぱを取り除く必要があること。
人間が髪の毛をカットするように、植物も剪定が必要であること。
人間が野菜やお肉、卵も食べるように、植物にも肥料や栄養を与えること。
子育てやペットの飼育と同じように、植物にもお世話が大切であること。

これらを、幼稚園や小学校、中学校という教育現場で、伝えていきたいですね。

表現方法がとても素敵ですね。
植物と人間は同じという視点を、たくさんのこどもたちに、これから伝えていってほしいです!
本日は、お忙しいなか、ありがとうございました!


植物にまつわる、あらゆる知識をお持ちの千恵美さん。
今までのキャリアから、それらを紐解くことができました。

ご自身の課題にしっかり向き合い、行動を伴いながら
模索する姿勢が、たくさん伺えるインタビューになりました。
これからも益々のご活躍、楽しみにしております!

▶クリザンテーム 菊池千恵美さん
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