
講座をはじめたきっかけと特徴、適性
はじまりは15年以上苦しんだ「冬季うつ」が嘘のように消えた経験から
薬膳の勉強から中医学を本格的に学ぶようになって丸2年ほど経った頃、その前年職場の冬の寒さにこりごりしていた私はまだ暑さが残る頃に冷え対策をはじめることにしました。中医学への理解が深まるうちに二十四節気は理に適っているように思えたので、仮説を立てて、その少し先取りのタイミングを活かして対策してみようと思ったのです。
すると、冬の冷えがずいぶん楽になっただけでなく、学生の頃から15年以上毎年深刻に悩まされてきたいわゆる「冬季うつ」の症状がその年はまったく出ませんでhした。それは私の人生を一変させるに値する変化でした。
いわゆる「冬季うつ」、正しくは「季節性情動障害」の1つのパターンですが、私の場合、8月後半頃から日が暮れるのが早くなってくると気持ちが不安でソワソワしはじめ、蟻地獄のように「あの時期がまもなくやってくる」とじりじりと不安にさいなまれたあげく、10月下旬か11月上旬になると体力気力メンタルが一気に奈落の底に落ちて、12月は地を這うが如く、それが2月に入ると自然と徐々に回復していく、というものでした。
一番思い時期は仕事を終えて帰宅すると夕食の間からだを起こしていることも辛く、不安が強いせいでまわりの人との関係が悪化したり、体力が無くなるので日常を維持するだけで精一杯、したいと思うこともままならなくて悔し涙を流したり、その他多分に漏れず過眠や抑うつ、炭水化物や甘いものの過食などもありました。
いろいろ調べてみても、高価なライトを使う高照度光療法や日照時間が長い低緯度の地域への引っ越しなど、現実的な解消法は現実的ではなく、かといって抗うつ薬で対処するのもなんだか違うように思えて、毎年その時期を迎えることにおびえながら振り回されながら15年以上経っていたのです。それが、二十四節気を意識しながら前倒しで冷え対策をしたことをきっかけに一切跡形もなく消えてしまった、この衝撃から二十四節気について理解を深めてもっと活用しようと思ったのでした。
今では一年中、体力気力メンタルの上がり下がりはほとんどありません。それがどれだけ楽なことか、そして、そういう状態になっていなければ、御菓子づくりという過酷さもあることを仕事にすることもできませんでした。
なぜ早めの冷え対策が「冬季うつ」解消の切り札だったのか、何が原因でそうなっていたのか二十四節気について追求してきた今は十分に理解していて、もう二度とならないように過ごすことができています。そして、二十四節気はどなたにも役に立つと思えるところまできた2019年2月からこの講座を始め、続けながらさらなる理解を深めて少しずつ少しずつより良い内容に育ててきました。今年で7年目ですので、今回は第7期生の募集になります。
その特徴、大事にしていることを次にご紹介します。
スローエイジング講座の特徴
①二十四節気や未病を正しく理解し、からだの安定に役立てる
率直な話になりますが、世に出回っている漢方や薬膳の本、どれを二十四節気を十分に活かせているものはありません。最近も書店でざっと見てきましたが、やはりまだありませんでした。どれもその節気に起こりやすい症状とその対処法を書いているのです。確かにその方が読者の方に「あるある!私もそう。なるほど、こうやってケアするのね」と共感してもらいやすいからだろうと思います。
でも、本来は症状が起こらないように養生するのが中医学の知恵。症状が出てから対処するというのは現代医学的な考えでそれでは根本的な解決策としてはまったくもって「遅い!」のです。
ちょっと脱線しますが、「未病」という言葉もそう。病気とは言えないほどの日常的な症状のことを未病と世間一般では理解されていますが(私も以前はそう思っていました)、正しくは症状が起こる前に、起こらないように先手を打つことが「未病に対処する」の本当の意味です。季節のリズミカルな変化と人間の生理、個々の心身の特性、症状や病が生じる原因やその過程が理解できていれば折々の軽い症状さえも前もって生じないようにすることは可能で、それができるように蓄積されてきた知恵が中医学の養生なのです。
特に季節や気候の変化、環境の状況に伴う不調を大きく減らすことはそんなに難しいことではありません。その助けになる第一歩が二十四節気の正しい理解です。この講座では、二十四節気と人間の生理反応がどのようにリンクしているのか、それを中医学や現代の生理学などではどのように解釈しているのか解説しながら、からだが本来持っている調節機能を最大限に活かす知恵を少しずつ取り入れていただけるよう構成しています。
②季節変化をとらえる助けとして上生菓子とお茶を一緒に楽しむ
中医学と同じく二十四節気を目安に変わっていく上生菓子。そこには陰陽五行に関わる由来や名前をもつものや、理に適った昔の風習などにまつわるものがあります。そんなエピソードとともに御菓子を召し上がっていただきながら、講座の理解や記憶の定着に役立てていただこうと思って当初から提供しています(御菓子づくりをはじめたのはこれがきっかけでした)。
御菓子がお目当てで通いながら自分のからだへの理解が深まった方もいれば、おからだのケアを目的に通ううちに御菓子やお茶が好きになる方も。一挙両得、どちらも楽しんでいただけたら嬉しいです。
③現代の医学や科学への理解を深め、活用する
伝統医学や代替医療の界隈ではそのメリットを語りたいがために
現代の医療を貶めたり信頼を損ねる言説を声高に主張する人が本当に、ほんと〜に多いです。でも、そうした意識を植え付けて(植え付けられて)しまうと、たとえ何年先でも現代の医療でしか対応できない病にかかったときに医師との信頼関係の構築を難しくさせ、治療の妨げや、時にはいのちを損なうことにもつながります。
西洋ではじまった現代の医療にも、アジアをはじめとする伝統医学にも、それぞれに良い部分、私たちに有益な積み重ねがある一方、(その積み重ねを成すためにとっている手段の特性として)どちらにもカバーしきれていない部分があるというだけで、人類にとっては両方の積み重ねにリスペクトをもつことで弱点を補完し合う知恵となります。
中医学や中医薬膳で語られていることも、現代の医学や栄養学とそのままイコールにはならないものの、少し視点をずらせばおおむね近しい認識をもっていたりします。そう思っていただくと中医学で語られている抽象的なことも理解しやすくなりますし、現代の情報を中医学的に理解して活用することもできます。
どちらも大事、どちらも自分の助けになる、この講座ではそういう認識を育てられるように配慮した内容にしています。
④介護予防や健康寿命までしっかりカバー
スローエイジングというからには当然といえば当然ですが、現代で有用だとされている介護予防策は中医学からみても確かに理に適っているよね、という解説にも十分なボリュームを割いています。
一般的な養生の話にはあまり出てこないので、そんなことまで話すの?と驚かれることもしばしば。でも、エイジングをゆるやかに、そして願わくばできるだけ最期まで自分らしく暮らすためには不可欠なことです。このあたりは冬の回で重点的にお話しします。
⑤講座終了後も何度でも読み返せる全130ページのオリジナルテキスト
この講座のテキストは完全オリジナルの書き下ろしです。ここまでお読みいただいたように、二十四節気を未病を防ぐために活かすには既存の視点や解釈では不十分で、「冬季うつ」を嘘のように解消した自分の経験から得た独自の視点で中医学における人間や病の理解、現代の生理学や科学の基礎的な理解、そして和菓子に関する古い文献など幅広い資料に触れる中で少しずつ少しずつ二十四節気とからだの密接な関わりを数年にわたって解き明かし、暮らしのなかで活用できるようにまとめたのがこの講座であり、オリジナルテキストです。
中医学を学ぶのではなく、自然や自分を観察し変化に気づき、日々の暮らしの中でケアしていく具体的な方法を紹介しながら、ご自身のケアに活用して変化を生み出していくことを目的としています。難しい中医学の用語はできるだけ使わないようにしていますが、基礎理解に忠実にまとめるよう心掛けています。
テキストは一昨年から昨年にかけて2回目の改訂をしました。最初はレジュメ程度だったところから、1度目の改訂はコロナ禍のオンライン対応のためボリュームをアップし、2度目の改訂の前には一度オンラインテキストに移行してさらなる内容の充実を図って、それをまとめたのが現行のテキストです。1度目の改訂時にはまだたどり着いていなかった視点を織り込み、かなり充実した内容になっています。
正直なところ、このテキストで月1回2節気ずつ解説するのに2時間では全然足りないほどで、「ここは読んでおいて」と飛ばすことも多々あります。予習をして講座では不明なところや疑問点を解消したり自分なりに理解したことを書き留めておいて、折々に読み返すのがおすすめの使い方です。
ここまでみっちり書き込んだのは、終わってからも読み返しているというお声を何人からも聞いたことがきっかけで、そのように使っていただけるものを提供しようと思い、時間をかけてつくってきました。こういう話は何を読んだら書いてあるの?と聞かれますが、同じ視点でまとめられたものは他にありません。先に世にあるものだったら私は書きませんでしたし、講座もしなかったでしょう。誰よりも私がかつて知りたかった内容になっています。
膨大な労力をかけてつくってきたので、流用や公開は一切お断りしています(中医学など伝統医学や代替医療界隈は流用や転用が日常茶飯事なので、念のため)。ご自身のおからだのためにたくさん活用してください。
講座に向く方、活かしにくい方、おすすめできない方
この講座は自分自身を客観的に観察できるタイプの方にもっともおすすめします。逆にどうしたらいい?と答えを求めがちな方は活かしにくいと思います。
観察して、講座で学んだことから何に問題がありそうか当たりをつけて、自分なりの対処法を考えてやってみる、やってみてどうだったかを観察し、次の一手に活かす、という繰り返しがご自身の楽につながっていくからです。
おすすめできない方、こちらからお断りする方は、疲れや痛みなど、いのちを守るサインを受けとりにくい方です。発達障害の傾向などをお持ちの方でいらっしゃるようですが、そのサインに気づけないと良いことをしているつもりでついやりすぎて逆にご自身を傷めることにつながるためです。考えてみた対処法が間違っていたと気づいたときにはすでに健康への害が生じているケースがあるため、この講座では責任が持てません。
このようなタイプの方におすすめしたいのは、対面で週1回など頻回に客観的に健康状態を確認しながらケアするようなサービス、たとえばボディケアやパーソナルトレーニングなど、細やかな対応をしてくれるところが合っているのではないかと
個人的には考えています。