旅行帰りに新幹線にスマホを忘れた話

私は3泊4日の三重旅行を終え、東京に向かう新幹線に乗っていた。

名古屋から品川までの1時間半ほどの乗車時間。
私は窓側の席でイヤホンをしながら三重旅行の思い出に浸っていた。

隣のおっちゃんも出張帰りなのか弁当を広げ、ビールを飲んでおり、悪い人ではなさそうだった。



新横浜を過ぎたあたりからスマホには共に三重旅行を楽しんだ人たちから

「無事に帰れそう!」
「お疲れ様!楽しかった!」

といったやり取りがLINEのグループにやってくる。

この旅行は本当に楽しかった。そう思いつつ自分もそんなやり取りのLINEを返した。

(帰ったらおにぎりでも食べて風呂入ってすぐ寝るか…それとも少しだけポケモンをやろうかな?)

など家に帰ってからのことを呑気に考えていた。



「間もなく品川駅に到着します。〇〇線をご利用の方は…」

というアナウンスがイヤホン越しに聞こえてくる。

私はそろそろ下りる準備をしなけらばならない。そう思い、少し残っていたお茶を飲み干し、充電していたスマホから充電器を取り、カバンへとしまった。

TwitterやLINEではまだまだやることが残っているため、スマホだけは仕舞わずに前座席の背面についているあみあみに入れていた。


そうこうしているうちに電車も品川駅に到着する。

隣のおっちゃんは既にビールや弁当のごみを片付け、足を組んで船をこいでいたが起こしてしまった。
起こしてしまったことに謝りつつ、そそくさと席を立つ。

そしてそのまま何事もなくホームに降りた。そう思った。


少し話はずれるが、私は日常であまりスマホを確認することが無い。腕時計をするようになってからは尚更だ。

この日も例外なく新幹線で席を立ってから降りるまでスマホを探そうともしなかった。

話は戻って品川駅のホーム、普段ではありえないことが起こった。
イヤホンからの音楽にノイズが入ったのだ。

私のイヤホンはSONYが自社の技術を惜しげもなく使用した最先端のワイヤレスイヤホンである「WF-1000XM3」だ。今年の夏に25000円程で購入した自慢の相棒だった。
ノイズが混じり、音が途切れるなんてことはほとんどないのだ。


私はイヤホンから流れてくるノイズ交じりのポルノグラフィティのアゲハ蝶を聞きながら一つの可能性が頭に浮かんだ。

すぐに身に着けているポケットというポケットを叩いた。
しかし、そこにあるべきものが無い。

そうしているうちに発車する新幹線。

それと同時になんの音も聞こえなくイヤホン。

一つの可能性が確信に変わる瞬間だった…





そこからは早かった。

すぐさま改札に向かい、現状を駅員に話す。

「スマホを新幹線の中に忘れてきてしましました。どうしたらいいでしょうか…(今は夜の20時過ぎ。明日以降、駅に取りに行くことになるだろうからしばらくスマホは使えないな…)」

先ほども言ったが私は普段からそんなにスマホを使うわけではない。ただ現状のこの面白場面をTwitterに書き込めないことを悔やんでいた。

だが、駅員さんから驚きの一言が返ってきた。

「東京駅で受けれますが今から取りに行きますか?」

驚いたことにこのままスマホを受け取ることができるらしいのだ。

日本の鉄道はここまで優秀なのかと感じつつ二つ返事で承諾した。

しかし、驚きはこれだけではなかった。

「では東京駅までこのまま新幹線に乗ってください。6分で着きます。」

(忘れ物をした私を責めることもしないで無料で新幹線にも乗せてくれるのか!)

驚きを隠せないまま東京行の新幹線に乗り、スマホを無事に受け取ることができた。



そして今度こそ何も問題を起こさず無事に家にたどり着いた。




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