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南ドイツの「弓専門工房」まで片道7時間の鉄道の旅
今回は少し前(2017年)の出来事ですが、私が愛用しているバイオリンの弓の修理のために、はるばる南ドイツの「弓専門工房」に訪れた時のお話です。
楽器メンテナンスで弓の亀裂が発覚
2017年3月、日本での自主開催コンサートを控えていた私は、帰国前に楽器メンテナンスをしようと思い、ハンブルクにある楽器工房を訪ねました。
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そこで、「弓に亀裂が入っている」ことが発覚したのです。
私が愛用している弓は200年以上前に製作されたもので、容易に修理できないビンテージ品でした。
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そのため、弓の修理をするには、南ドイツにある弦楽器の弓だけを取り扱う「弓専門工房」に行くことを薦められ、ハンブルクからはるばる南ドイツまで行くことを余儀なくされたのです。
片道7時間の長距離ドイツ鉄道の旅
ハンブルクは北ドイツにある港町です。弓専門工房がある南ドイツまでは、電車とバスを乗り継ぐ片道7時間にも及ぶ長旅になります。
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当初は弓を郵送することも考えましたが、輸送中に破損する可能性があり、もしものことを考えると、直接工房まで持って行く以外に方法はありませんでした。
このような経緯があり、北ドイツのハンブルクから南ドイツまで、弓修理のための長旅を経験することになったのです。
当時の私は、金銭的にも苦しい生活を送っていたため、旅費を浮かすために、低価格の鉄道チケットを探しました。
ドイツ鉄道のチケットは、おおまかに以下の3種類が販売されています。
• Super Sparpreis
→ 変更不可、遅延があっても指定の電車以外乗車不可
・Sparpreis
→ 出発日の1日前まで追加料金付きで変更可、ただし遅延があっても指定の電車以外乗車不可
・Flexpreis
→ 追加料金なしで変更可、遅延があった場合は指定の電車以外でも乗車可
上記の中で最も安いチケットはSuper Sparpreisです。
ただし、Super Sparpreisのチケットは、発券時に指定された電車にしか乗れないチケットです。
乗り継ぎで時間がかかったり、遅延が発生した場合、再度チケットを購入し直さなければいけません。そのかわり安い。
つまり、一度の乗り継ぎミスも許されないチケットです。
今回のハンブルクから弓専門工房がある南ドイツまでは、電車とバスを乗り継ぐ片道7時間の旅です。
さらに初めて訪れる場所ということもあり、当初の私にとっては、とても難易度が高い旅(チケット)でした。
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当時は現在のようにスマホを持っていなかったため、Googleマップさえありません。
その結果、案の定、途中のエアランゲンという駅で迷ってしまいました。
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しかし、乗り継ぎでミスを犯すことができない私は、なりふり構わず現地のドイツ人に、探しているバスの停留所の場所をを聞きまくりました。
当時の私はドイツ在住歴10年目に入っていて、それなりのドイツ語も話すことができるようになっていました。
その甲斐があって、乗り継ぎのバスに無事乗車することができ、南ドイツの弓専門工房に辿り着くことができました。
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IC(インターシティ)列車
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車窓
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内部も充実♪
駅にはやめに行って
買い物してから乗るのもよし😊
南ドイツの弓専門工房に到着
片道7時間、無事に南ドイツの工房に辿り着くことができました。
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工房の職人さんに、弓の状態、亀裂について相談したところ、「すでにある木の部分を摩擦で削って少しずつ亀裂を繋げていく」という、繊細かつ高度な手法での修理が必要になるとのことでした。
弓の修理には1週間ほどかかったため、後日、再び片道7時間かけて、修理後の弓を受取りに行きました。
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弾いているバイオリン🎻
なお、修理代は税込148,75ユーロかかりましたが、受け取った弓は、亀裂が入っていたとは思えないほど、繊細に修理されており、値段以上の価値を感じました。
私には、バイオリン演奏者として大切にしている想いがあります。
「どんなに費用がかかっても、必要な対価を支払い、自分が弾いている楽器の"物質・歴史的価値"が損なわれないようにする」
日頃から、バイオリンのお仕事に従事している喜びと責任を感じています。
今回の旅は、その責任の1つです。
多くの不安・心配もありましたが、何より自分が納得できる方法で、自分が大事にしていることを叶えられる旅となりました。
6年半年近くたった今でも、忘れられない思い出の一つになっています。
最後までご覧いただきありがとうございました!
ーお知らせー
日本に一時帰国中に短期のレッスンを
開催しております。
(今冬実施期間:2023年12月23日ー2024年1月5日)
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田中詩苑のバイオリン・レッスン
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