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彼岸旅館「逢曲時」の誘魅 紫苑-聖

逢曲時在籍情報

名前 紫苑-聖
よみ しおん ひじり
種族 妖狐(父:青色の野干 母:稲荷神の使いの善狐)
出身 上野国
時代 大治4年(1129年)~昭和25年(1950年)
『功徳を積んで九尾になった狐の話』に憧れて、人間界で働いていた狐女。妖刀と声色を操り、人を助けた。人間の夫がいた。花が好き。

××村の口伝「狐藤」

むかしむかし、あるところに狐の娘がおりました。
娘は人の姿に化けて茶屋で働いておりました。

ある日の夜、峠で妖怪に襲われていた旅人の男を助けました。
男は娘に一目惚れして、近くの村に移り住んでまで茶屋に通い詰めました。
男の真っ直ぐな心に、娘も次第に惹かれていきました。

正体を隠し続ける事が苦しくなった娘は、男に妖狐である事を打ち明けました。
それを聞いた男は、助けられた時にはすでに気付いていたと明かしました。
娘は嬉しくて嬉しくて、男と夫婦の契りを結び、山奥で静かに暮らしました。

ある日の黄昏時、夫婦の家に狐の妖怪が訪ねてきました。
化かそうとした近隣の村人に追われ、同じ一族の女の元へと助けを求めてきました。
狐の妖怪は、村人たちに取り憑いて病を煩わせたり、魂を惑わせて暴れていました。
夫婦がどうしようかと考えていると、そこへ大勢の村人たちがやってきました。
村人たちは武器を持って、狐の妖怪を倒そうと追いかけてきました。
狐の妖怪は慌てて飛び出しましたが、捕まってしまいました。
刀が振り下ろされる瞬間、狐の妖怪は言いました。

『姉様、助けて』

狐の妖怪を退治した村人たちは、妖怪を匿ったと夫婦に詰め寄りました。
男は必死に妻を守ろうとしましたが、女は妖狐の姿になって逃げ出しました。
女狐は逃げて逃げて、逃げ続けました。

何年も過ぎた後、女狐はかつて暮らした家へ行きました。
そこにはすでに男の姿はなく、朽ちかけていました。
女狐は近隣の村へ行き、男の行き先を尋ねました。
男は流行り病で亡くなっていました。
女狐は男と暮らした家へ戻り、男に見立てた藤の苗を植えました。
植えた藤を抱きながら泣き続け、そのまま大きな藤の木になりました。

今も××村を見守り続ける「狐藤」のお話でした。

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