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冬の海は遊泳禁止で

冬の海は遊泳禁止でなんか誰もいなくていい感じ

冬の海は遊泳禁止で(15thシングル『雪蛍』より)

高校三年生のとき、終電に飛び乗って真冬に夜中の江ノ島に行ったことがある。
ウミネコは本来、冬の季節は日本にいないので「ニャー」という鳴き声は聞こえなかったし、いくら待っても、映画でしか見たことないような船はやってこなかった。点灯さえしないあの大きな灯台を時々見上げて、冷たい息を吐きながら僕は『冬の海は遊泳禁止で』を独り口ずさんでいた。



Plastic Tree(以下:プラ)を好きになったのはいつから、なんていう記憶はないし、物心着いた時には既にDVDプレイヤーを駆使して『二次元ヲルゴール』やライブ映像を一人で鑑賞していた。幼稚園に入る前に兄から貰った、初めて音楽プレイヤーを手にした日からずっと、プラは聴き続けてきた。その中でもずっと好きだったのは当時リリースされたばかりの『ウツセミ』だったし、今でも『水色ガールフレンド』や『「ぬけがら」』を聴くと、幼い頃の曖昧な、言葉にできないもどかしい気持ちが胸に蘇る。兄弟の末っ子だった幼い僕は比較的一人で家にいる時間が多く、その間も読書や映像、音楽鑑賞に時間を費やしていたが、その中でも多くの時間は彼らの作品に使っていたと思う。
小学校にあがると、所謂「朝の読書の時間」では有村竜太朗氏の著作『五十音式』をずっと読んでいた。繊細な世界観や言葉遣い、独特の氏の表現に魅了され、思えば「自分でなにか文章を書いてみよう」と考えはじめたのはこの作品がきっかけかもしれない。

有村竜太朗氏著作『五十音式』
発行:インデックス・コミュニケーションズ

オゾン層 壊れたせいで僕らには
未来はないけど 宇宙まで 透けるような 群青の空

五十音式 p.26『公害』

短い詩が好きになり、後に穂村弘や村上きわみが好きになるのにそう時間はかからなかった。
中学生になると、サブスクリプションサービスにて配信されている音楽が充実されはじめ、様々な音楽を知る度に自分の根底にある音楽がプラであることに気がつく。『My Bloody Valentine』『The Smashing Pumpkins』『Radiohead』『NIRVANA』『VELTPUNCH』『死んだ僕の彼女』など、自分の好きなサウンドのルーツにある「シューゲイザー」「オルタナティブ・ロック」は全てプラの影響の下にあり、次第に僕はこういった音楽ジャンルに傾倒していく。
高校生になると、それまでやっていたドラムをやめ、それと同じくらい幼い頃から憧れていたギターに転向する。初めて手にしたギターは『Gibson  les paul special Tv Yellow』という、高校生が今から始めるぞ!  という最初の1本にしてはあまりに高価な代物だった。逆を言えば、このギターがあったからこそ今でもギターを弾き続けてるのかもしれない。そうこうしているうちに高校二年生になると、別記事でも書き綴ったように、僕は再び東京に戻ってきた。気持ちでいえばくるりの『東京』ではなく、BUMP OF CHICKENの『続・くだらない唄』であろうか。
再上京して次に買ったギターは赤い色したES-335のコピーモデルだった。
これのモデルになったものは有村竜太朗氏とDEZERTの千秋氏が持って弾いているギターであり、たまたま在庫が残っているショップに足を運び、すぐに購入を決めた大変愛情のこもったアイテムだ。

僕が目指す完成系は『DEZERT』や『Plastic Tree』のようなヴィジュアル系の枠にとらわれない、幅広いジャンルを常に発表し続けられるバンドであり、今までのヴィジュアル系がそうだったように、時代に僕たちが追いついていくのではなく、時代が僕たちに着いてくるような新しい世界を作り出したい。そう思える活力をくれるのはどんなときだって、今まで僕を支えてきてくれた彼らだ。だからこそ、自分の力でたどり着かなくてはならない。そんなことを思えたこの朝は、いつもより見える世界が広く感じた。

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