Bad Things/18
【episodeリサ〈1〉ターコイズブルー】
くすんだ染みの浮かぶ天井をながめながら目薬を差していると、ガチャリとドアの開く音がした。
「リサ、おつかれちゃん」
爽快な刺激を瞬きでなじませながら、私は「おづがれー」と掠れた声で返事をする。
カサカサと聞こえるのはレジ袋の音、なにより漂ってくるこの香り。
「肉まんっ。ナノカ、気が利くぅ」
机の上のファイルを閉じてパソコンの上に避難させた。スペースが空くと、ナノカが「はい」と袋を置く。
ナノカの爪は、「雪をイメージしたの」という言葉の通り結晶のようなラメがキラキラと輝いている。その指先がファイルをめくり、彼女は嫌そうに鼻にシワをよせた。
「あんたは佐野先輩の下請け業者か。これって先輩が飯田先生から頼まれてたやつでしょ」
取り出した肉まんに芥子をつけていると、ナノカはまた顔をしかめる。彼女曰く肉まんには酢醤油らしい。
「リサ、いつもそんなんで自分の研究進んでんの?」
「ぼちぼちね」
私の適当な返事に、ナノカはフンッと荒い鼻息を吐く。
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