Bad Things/19
恋だけじゃない。でも、恋に振り回されないわけがない。そんな恋愛短編オムニバス→【episodeリサ〈1〉】
【episodeリサ〈2〉深海の青釉】
『豆蔵』の駐車場に着いたのは午後六時になる少し前だった。
日はすっかり暮れて、吹きつける風はまるで真冬だ。肩を縮めながら店のドアを開けると「いらっしゃい」と耳慣れた声が聞こえた。
「こんばんはー」
カウンターの向こうに立つのは直人おじさんとナオ。厨房の入り口からひょこりと顔を出したのはアルバイトのミキちゃんだ。そして、カウンターに座っていた男性がくるりとこちらを振り返った。
「リサじゃん」
人懐こい笑みを浮かべたのは高波だった。私は彼の隣に座り、コーヒーとピザトーストを注文する。「トマト多めにしとくね」と言って、直人おじさんは奥へ姿を消した。
「リサ、例の大学のやつ?」
高波はいつから来ていたのか、コーヒーカップにはあと二口ほどしか残っていなかった。
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