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37.口止め料はチロルチョコレート 車に乗り込み、暖気しながら兄に電話をかけた。カラオケボ…
38.クリスマスと年末の予定は 十二月に入ると、うまし家にクリスマスツリーが飾られた。ツリ…
39.きみちゃんの電話 「美月、波多、千尋、三人か。ラーメンでも食いに行くか」 店長は顎…
40.「年内で店閉めるんだ」 花壇脇の看板が、ライトに照らされていた。 Cafe&Restaurant …
41.惚れ薬のせい みっちゃんのことを話す店長は、まるで弟の話でもしているようだった。 …
42.プロポーズのつもりで 冬休みに入ってこの冬一番の寒波がやってきた。 クリスマスの日…
43.猫をかぶる 朝起きると空気がピンと張りつめていた。部屋の中でも吐いた息が白い。 ベッドから起き出して庭先をのぞき込むと、兄の車が出ていくところだった。両親の車はすでになく、空は憎らしいほど青く澄み渡っている。 祖母は「洒落た店は落ち着かん」と留守番を決め込み、そのせいと言うわけでもないけれど、兄の婚約者は今夜家に泊まることになっている。 昨夜バイトを終えて家に帰ったとき、風呂上がりの兄が「彼女明日泊まるから」と言った。何から何まですべて事後報告で、都合のよ
44.結婚のカタチは 五人そろって会社を出たのは十二時半をまわっていた。文子叔母さんは「ま…
45.母と似た人 コンコンとノックの音がし、ドアが開いたと同時にコーヒーの香りが漂ってきた…
46.求めているものと同じものを 史緒さんとの会食があった日、アルバイトを終えて家に帰ると…
47.千尋は千尋のペースで 翌日、昼過ぎに史緒さんを駅まで送って彩夏のアパートに行った。部…
48.決断したんだよ 「千尋、もう帰る? きみちゃん行かない? 彩夏も」 カウンターにいた…
49.やっぱり似てなかった 「波多も先に行ってて良かったのに」 「帰り千尋に送ってもらうのに…
50.ノリでしちゃった告白だから 一人遅れてラーメンを食べ終わったころ、波多がスマホを手に外に出ていくのが見えた。 それぞれ精算して席を立ち、わたしが一番最後に店から出ると、「ミサト」と波多が手招きする。通話中らしいスマホを差し出し、「ユカから」と彼は言った。 「ミサトに代わってって」 まわりが「ユカ」という言葉に食いつき、わたしは盛り上がる彼らから距離をおいて「もしもし」と話しかけた。緊張で声が震えた。 「ミサト。久しぶりー」 はしゃいだ声のユカも、緊張し