守沢千秋と北村倫理と「ヒーローになりたい理由」
0.はじめに
『あんさんぶるスターズ!』(あえてこの表記)の守沢千秋と『ワールドエンドヒーローズ』の北村倫理の「ヒーローになりたい理由」を並べて楽しむための記事です。
ゲームのスクショやセリフの引用があり(というかそれがメインです)、ネタバレへの配慮はありません。すべてのストーリーを網羅できているわけではないので見落としがあってもご容赦ください。
Q.どうして守沢千秋と北村倫理を並べるの?
A.たまたま目についたから。
1.キャラクター紹介
【守沢 千秋(もりさわ ちあき)】
『あんさんぶるスターズ!』に登場するアイドル。夢ノ咲学院アイドル科の3年生。戦隊ヒーローをモチーフにしたアイドルユニット「流星隊」のリーダーで、流星レッドを担当。
アプリリニューアル後の『あんさんぶるスターズ!!』では学院を卒業し、芸能事務所「STARMAKER PRODUCTION」の所属となっているが、今回は主に高校在学時の言動を扱う。
元気がよくて常に前向き。声の大きい熱血漢で、誰が呼んだか夢ノ咲の松〇修造。小さなころからヒーローに憧れていて、日常生活の中でもヒーローたらんとする。
体育会系の脳筋に見えるが意外と冷静で頭の回るところがあり、「幼少期は病弱だった」「授業中は眼鏡」「寝る前の読書が習慣」などのギャップや追憶(過去編)での描写でユーザーを阿鼻叫喚の渦に叩き込んだ属性過多の男。スキンシップ多めでぐいぐい来るわりに乙女向けという意味では塩対応。
ホラーが苦手で(みえる人疑惑あり)、ナスが泣くほど嫌い。好物はフライドポテト。
【北村 倫理(きたむら りんり)】
『ワールドエンドヒーローズ』に登場するヒーロー(ワヒロは「イーター」と呼ばれる謎の地球外生命体が存在する世界が舞台で、イーターを討伐するための戦闘員が「ヒーロー」)。使用武器はナイフ。
「愛教会」という新興宗教を母体とした愛教学院の1年生。両親(父親は故人)が愛教会の信徒で本人も教義に詳しい。
明るく人懐っこいが、嘘つき体質で周囲を煙に巻くような言動が多い。「底辺であがく人々」をこよなく愛しており、彼らを救うためにヒーローをしている。自虐的な面があり、自身のことも「底辺」と称する。
笑顔が多いが目のハイライトが消えていることも多く、ワヒロ界のキングオブ不穏。クリスマスボイスで「ペアつくんないと人権ない日なんだろ? デートしようぜ!」と言ったり、いたわりボイスで「にゃんにゃん♪……ほら喜べよ」と言ったりと、オタクの動揺を心得ている。
サスペンスドラマが好きで、幽霊は信じない派。好きな食べ物はお寿司で、嫌いな食べ物はにんじん。
2.ヒーローになりたい理由
【守沢千秋の場合】
千秋にとってのヒーローとは、イベスト『爆誕☆五色に輝くスーパーノヴァ』で本人が語ったところによると「自分たちの味方になってくれる」「安心をくれる、あらゆる悪意を吹き飛ばしてくれる」「いつだって正しい」存在です。
一方で、イベスト『Saga*かけ上がるレインボーステージ』(のちのメインストーリー第三部)では、次のように語っています。
曰く、「TVのなかのヒーローに憧れて生き様を真似た」ものの、「現実に直面して、大好きだった彼らを呪った」ことがあるとのこと。
過去編(千秋が1~2年のころ)であるイベスト『追憶*流星の篝火』でも、「何度も『助けて』と叫んだがヒーローは助けに来てくれなかった」「実在しないヒーローは現実では無力で、助けを求められても何もできない」と言っていて、ヒーローに対する認識はかなり現実的です。
ところが千秋は「後輩たちに同じ気持ちを味わわせたくない」として、こう続けます。
ヒーローが現実に存在することになれば、ヒーローの語る綺麗事も嘘じゃなくなり、後輩たちがかつての自分のように絶望しなくてすむ、という理屈のようです。
以上より、守沢千秋の「ヒーローになりたい理由」は、ヒーローは現実には存在しないので、自分がヒーローになることで、未来の子どもたちを守るためであると思います。
【北村倫理の場合】
倫理の場合は、「ワヒロ世界における『ヒーロー』とは何か」から整理する必要があります。
先述のとおり、ワヒロ世界における「ヒーロー」とは、地球外生命体「イーター」を倒す戦闘員のこと。「リンクユニット」という石を割ることで専用の装備に変身し、イーターと戦います。印象としては警察官や消防士などの職業に近く、実在する人を指す言葉です。
一方で、作中世界にはフィクションのヒーローも存在しており、日曜朝に特撮番組が放映され、ショッピングモールなどでヒーローショーが開催されています。
この(職業としての)「ヒーロー」と(フィクションの)ヒーローは別物ですが、「ヒーロー」にヒーローのようなふるまいを求める向きもある……というちょっと微妙な関係性が、ワヒロ世界における「ヒーロー」の在り方です。
ここまでを踏まえて、メインストーリーでの倫理のモノローグを見てみます。
断片的にですが、「ヒーローに守ってもらえなかった過去」と本人の認識している「守ってもらえなかった理由(=底辺だから)」が語られています。
その後、倫理は「そんな自分でも『ヒーロー』になっていいのなら、やりたいことがあった」と続けます。
(ここでの「小さいころ恨んでいたヒーロー」はフィクションのヒーローで、「なったらやりたいことがある『ヒーロー』」は職業としての「ヒーロー」のはずですが、あえて混同されているように見られます。)
詳しい経緯は省きますが、倫理を旗印として担ぎ出したものの劣勢と見るや手のひらを返した「底辺」の人たちの行動を「愛しい自分勝手さ」と称した上で、最終的にこう述べます。
「ぜったいに」の後は語られていませんが、公式の紹介文にも「底辺であがく人々を救うため」とあるので、「救う」「守る」「味方になる」などの言葉が続くと推測されます。
以上より、北村倫理の「ヒーローになりたい理由」は、「底辺」の存在を守ってくれるヒーローがいないので、自分がヒーローになることで、「底辺」の存在を守るためであると思います。
3.類似点と相違点
類似点は「現実にはヒーローがいないから、自分がそれになる」と考えているところ。
助けてもらえなかったことを恨んで「嘘つき」と罵って終わりにするのでなく、「それなら自分が助ける側になろう」と思えるあたりが好きです。高潔というか高邁というか、「ないものは、つくるしかない。」の精神というか。
相違点は、千秋は「ヒーローはそもそもいない」としている一方、倫理は「ヒーローはいるけど、自分のような底辺を救ってくれるヒーローはいない」としている点。
これには世界観との違いが大きく影響していると思います。
【あんスタの世界観】
現代日本とほぼ同じ(芸能界におけるアイドルのウエイトがやや大きい)
→ヒーローはフィクションの存在
→ヒーローが助けてくれないのは「ヒーローは実在しないから」
【ワヒロの世界観】
現代日本がベースだが、日常的に地球外生命体の出現があり、市民の生活を守る存在として「ヒーロー」がいる
→フィクションのヒーローとまったく同じではないが、「ヒーロー」が実在
→ヒーローが(いるのに)助けてくれないのは「自分が助けてもらえるような人間ではないから」
また、千秋が一般家庭で生まれ育ったごく普通の小市民である一方で、倫理は出自や置かれた環境がやや特殊で「自分は普通じゃない」という意識を持ちやすい状況にある、ということも影響していると思います。
4.おわりに
学生時代に「2つの文章を比較して論じよ」という課題をひたすらやらされていたので、個人的にこういう「異なる作品のストーリーや登場人物を見比べて、同じフレームに入れられるか/入れられないか」を考える行為が割と好きです。
今回はあんスタとワヒロそれぞれのストーリーを読んでいて、「実在しないから自分がそれになる」という動機が似ていると感じたので、そこをフックにあれこれ並べてみました。楽しかったです。機会があればまたやりたい。