見出し画像

デザインを学ぶために美大や専門学校に通うメリット

 最近は独学でデザインを始める人も増えてきました。インターネット上で動画やSNS、あるいは個人ブログなどで初学者向けの講座がたくさん公開されています。そのため、ひと昔前に比べてかなり独学の難易度が下がったように感じますね。
 だからでしょうか。こんな意見をちらほら見かけるようになりました。

「美大や専門学校に通う意味はない」
「学校に通うのは時間やお金の無駄」

 自分で情報を集められるようになった今、こういった考えも一理あるかもしれませんね。しかし、果たして完全に必要ないと言い切れるのでしょうか?

 今回は高校・大学と美術系に通っていた私の視点から、デザインを学ぶために美大や専門学校へ通うメリットについて紹介します。


前提:実際に通ってみないと、必要ないとは言い切れない

 美大や専門学校へ通うにはかなりの学費がかかります。しかし、その内容が自分にとって本当に必要だったのか、はたまた必要でなかったかは行った人間にしかわかりません。

 体調不良が心配になって病院に行ったところ、「特に異常はない」と言われた経験はありませんか?
「せっかく休んで病院行ったのに何もないんだったら時間の無駄だったな」
 こんな風に思うかもしれません。
 しかし、行ったのに何もなかったから無駄だった、必要なかったという情報は、実際に足を運ばないと得られない情報です。これは美大・専門学校へ行くことについても同じことが言えます。
 実際に体験する前から本当に自分にとって不必要とは断言できません。


メリット① 思考の訓練ができる

 独学では自ら課題を見つけ、取り組むことを繰り返すことでデザイン力を上げられます。しかし、一人で見つける課題には限界がありますよね。さまざまな人に出会ったり、色んな場所へ足を運ぶことで事象を観察し、課題になりうる題材を見つけなければいけません。
 美大や専門学校では、自分ひとりではなかなか思いつかないような課題が出されます。それに取り組むことでデザイン的な思考の訓練ができるのです。


メリット② 市役所を巻き込んだ、大規模な課題に取り組める

町にある不具合を見つけ、解決するためのインクルーシブなデザインを提案する

 これは実際に私の大学で出されたグループ課題です。
 もちろん独学だったとしても、この課題を思いつくことは可能でしょう。しかし、その場合は何度も市役所の役員に「こういったプロジェクトを一緒にやってください」とお願いをしに行かなければいけません。万が一合意してもらえたとしても、今度はプロジェクトに参加するメンバーも集める手間があります。

 その一方で、大学や専門学校は教育機関なので、独自に動いて市役所へお願いするよりも協力してもらえる可能性が高くなります。また、デザインの授業を受講している生徒が既に複数人いる場合、その中から機械的にプロジェクトのグループ分けをすることも可能です。
 こうした大規模な課題に取り組めるのは、大学や専門学校などの強みでもありますね。


メリット③ 講評会に参加できる

 独学でやっていても知識を吸収する段階で、上手い人の作品をたくさん見て参考にしたりしますよね。しかし、同じテーマで作品を制作し、その後は講評会として批評される場に作品を並べる機会は、独学だとなかなかありません。
 もちろんクラウドワークスやランサーズのコンペに出すことで、同じテーマ内で作品の優劣をつけられることは体験できます。しかし、入選から漏れた作品についてはコメントされないことがほとんどです。

 大学や専門学校の講評会では、ほとんどの場合、参加者全ての作品に対して講師からコメントがもらえます。講師たちはプロのデザイナーや画家として活躍していた経験のある人が多いです。

 なぜ自分の作品は上位に食い込めなかったのか、どこを改善すべきなのかを聞くことができます。これは本当に貴重な機会です。
 実際にデザインの仕事をしていてお客さんに見てもらい、気に入らないと言われることもあります。

「何かイマイチな感じ」
「ピンと来ない」
「見た時に驚きがない、ハッとしない」

「センスがない」

 お客さんからこのような感想をもらえることはあるものの、なぜイマイチなのかを具体的に説明してもらえることはなかなかありません。お客さんもデザインに関する知識があまりなく、うまく言語化できないからです。
 こういった時に、自分の製作物の悪い部分をきちんと言語化して批評してもらえる機会がとても貴重だったと思い知らされます。


メリット④ 横の繋がりができる

 自分と同じデザイン専攻の学生や、あるいは別専攻の人などと知り合い、横の繋がりができるのはとても大きなメリットだと思います。良い人間関係を築ければ、卒業後に一緒に展示をやったり、それこそ新しい仕事のプロジェクトを立ち上げることも可能なのではないでしょうか。
 ちなみに私は当時人間が怖すぎて関われなかったため、喫煙所にいる猫と、ドラムをやってる物凄くかっこいい女の子と、留学生の女の子くらいしか繋がりができませんでした!


まとめ

 大学や専門学校でお金がかかるものの、デザインの思考の訓練や大規模な課題に取り組めるなどのさまざまなメリットがあります。
 その一方でPhotoshopやIllustrator、InDesignなどのデザインで使用するソフトの使い方については一切教えてもらえませんでした。本を買って都度勉強する、といった感じです。
 この辺はデメリットでもありますが、最初のアイディア出しの段階でソフトやツールに引っ張られない発想をする習慣を身につけられたのはある意味メリットかもしれません。
 もし進学を考えているのであれば、一度学校の見学へ行ってみることをおすすめします。

いただいたサポートはAdobe税・モリサワ税・個人名刺印刷代などに使わせていただいています。