
産業廃棄物のお姫様 あやめ外伝 あやめ語り 2
桜も散り、そろそろクラスで仲良しになる友達が出来る頃。
結局あたしは中学校に一度も行ったことがないまま。
フラフラと寄ったゲームセンターで格闘ゲームの対戦イベントが開かれていた。
【優勝者5,000円 参加費無料】と書いてある。
あたしは5,000円が欲しくて挑戦した。
格闘ゲームなんてパパが居た頃に時々にゲームセンターに行って対戦したくらい。
楽しかったなパパ何してるんだろう?
パパとしか対戦したことがないのに簡単に優勝してしまった。パパ…強かったのかな?
優勝した事にあたしが一番驚いた。
最終戦になった時相手がすごく強いという話が聞こえて来たけど全く相手にもならかった。何の苦戦もないまま5,000円が手に入った。嬉しかった。
このゲームの対戦は毎週開催されて3回連続優勝したら5,000円が倍額になるシステム。
2回目だと1万円3回目には1万5千円。
3回勝つと合計額3万円とどこでも使えるプリペイドカード3万円が当たると聞いた。
そうしたら事実上6万円も持つことになる。
お金も欲しいけど自分に自信も欲しい。
あと2回大会に出て連続優勝して王者になりたいと思った。あたしは大会が終わってからすぐに走ってゲームセンターを出た。
あたしは森本のおばちゃんが働いているコンビニに走って行って賞金を見せた。
「おばちゃん!あやめ、ゲーム大会で優勝したんだ!賞金5,000円も貰ったんだよ!だからそのお金でお弁当買いに来た!すごいでしょ?」
『あら!あやめちゃん、あの大会出てたの?かなり強い子が出てるって加奈子から聞いてたけどまさか優勝するなんて!ゲーム強いのね!でもその賞金は今日使わなくていいわ。今日のお弁当代はおばちゃんが優勝記念日として奢ってあげる。そのお金はあやめちゃんが本当に困った時の為に残しておきなさい。』
と言ってお弁当を奢ってもらった。
「おばちゃん!3回連続で勝つから!その時はお弁当買う!」
あたしはおばちゃんに宣言して店を出た。
最近あたしは夕方になると公園の多目的トイレにこもる。
そこでベッドを広げて寝転んで夜を過ごす。中学生になってからおばちゃんにもお姉ちゃんにも迷惑かけれないからそんな生活を続けてた。
時々お風呂に入りたい時におばちゃんの家で入らせてもらって家に帰るフリして多目的トイレに戻ってた。
5,000円札を両手で広げてベッドで寝転んで見てるあたし。
「大事な時…どんな時かな?」
学校に行ってない事も家に帰ってない事もご飯を食べてない事もおばちゃんに言えなかった。
学校に行くってウソをついたあたしをおばちゃんはどう思うのかな…
悲しくて涙があふれ出て来た。
「嘘つきになんかなりたくなかったのに…」
3万円のプリペイドカードを貰ったらちゃんとお弁当も買って銭湯にも行って学校に行こう!
王者になったら自分に自信も着くよね?
それにおばちゃんに嘘つくの嫌だから。
あたしはそう誓った。
ゲームでは誰にも負けない!
子供の時にゲームセンターで対戦してた時パパは手加減してたけど時々本気でやってあたしに負けた時に悔しがってたな…パパってめちゃくちゃ強かったんだ…本当に悔しがってたんだ…そんなパパに勝ってたんだ!
そう思うとゲームの強さに自信が湧いて来て来週のイベントが楽しみになって来た。
相変わらずこの1週間はゴミ箱あさったりして過ごしてたけど…次のゲーム大会頑張らないと!
翌週も簡単に優勝しトントン拍子で3週連続制覇してこのゲームセンターでは格ゲー女王と呼ばれるようになって悲願の3万円プリカを賞金と共に貰った!
あたしは急いでコンビニに走って行った。
「おばちゃん!あやめ女王になったんだ!」
『まぁ!じゃあ3週連続で勝ったの?凄いじゃない!』
「それに1回優勝するごとに現金も連続だと5,000円ずつ上がってね、今現金3万円持ってるんだ。それと3万円のプリカも貰ったの!だから今日はお弁当買いたい!」
『じゃあわかった!おばちゃんスペシャルでお茶が無料!お弁当398円になります!』
あたしは財布なんか持ったことがなかったので学生カバンから5千円札を出した。
『あやめちゃん…100均でいいからお財布買いなさい?小銭がばらばらになるわよ?それこそ大切な物を買う時よ?』
「今は大丈夫!ペンケースに入れるから!今度おばちゃん100均に一緒に行こう?その時に選んで!じゃあね!明後日からちゃんと学校に行くからね!」
『え??行ってなかったの??』
「…ごめんなさい…制服まで貰ったのに行けてなくて言えなかったの…」
『いいのよ。今日のあやめちゃん自信に満ち溢れてるから学校に行ってもお友達がきっと出来るわ!そうだわ!私、夕方で仕事終わるから一緒に帰りましょ。あと10分で終わりだし裏口で待ってて。』
うれしい!うれしい!うれしい!
おばちゃんにもちゃんと言えた!今日一緒に帰ろうって言ってくれた!帰りに100均でお財布選んでもらおうかな?お風呂に入らせてもらえるかな?
あたしはおばちゃんが仕事が終わるまで裏の入り口で待ってた。
10分ってこんなに長かったっけ?
そう思うくらい長く感じながら待ってた。
お財布どんなのがあるんだろう?あたしよくわからないからかわいいのおばちゃんに選んでもらおうっと!