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産業廃棄物のお姫様 あやめ外伝 あやめ語り 4

一応学校の前まで歩いたけど入れなかった。
あたしはやっぱり学校に行けない。

お金どころかゲームでついた自信すら奪われてしまった。
校門の前で佇んでいると体格のいい豚男が声かけて来た。

『あれ?この前のおチビちゃんじゃん!!俺ら運命の出会い!?』

「誰だよ…お前…」

『うわー!超生意気!募金してくれたじゃん!もう忘れたの!?名前何て言うの?よく見たらめっちゃ可愛いじゃん!』

「名前は…あやめ…」

『アヤメ?そのかわいい顔に合った名前じゃん!アヤメ学校行かないならさ、俺らのグループ入るか?素質ありそうじゃん。根性座ってるし。俺に蹴られて吐いたのに金の心配してただろ?普通は痛くて泣くだけなのにさ。』

よく見るとあの時の豚男だった。
根性がすわってるのではなくただ無口なだけ。それとあの賞金が全てだったしおばちゃんと財布買いに行きたかっただけの動きを何か勘違いしているみたい。

この豚男に次いで女が3人男が4人…8人が学校サボってウロウロする話をし始めた。
あたしには関係ないと思ってたら…

『アヤメ。最初の根性試しだ。お前の頭を金髪にしてやるからブリーチを3個あそこのドラッグストアで万引きしてこい。そしたら仲間に入れてやるよ。』

「万引き!?」

『デケェ声出すなよ!盗って来たら夕飯奢ってやるからよ(お前の金だけど)』

「ぶりーちって何だよ?」

『何だよ!そんなことも知らねぇのかよ!髪を金髪に脱色する液体だよ!売り場まで連れてってやるから俺らが店出てからがスタートだ。わかったか』

「…。」

学校に行っても誰とも話せない。友達も出来ない。自信がない。勉強がわからない。
だったらコイツ等のいう事聞いてゲーム感覚で万引きした方が仲間になれるんじゃないのか?あたしはもう独りぼっちは嫌だ!
万引きをしたら独りじゃなくなる!
友達が出来る!
決してこれが友情じゃないと分かっていても
孤独が嫌だった。
だから決行することにした。

豚に売り場でコレだとブリーチを教えて貰った。店から豚が出て行ったから店員の動きを見ながらこっそり1個ブリーチの箱をスポーツバッグに入れた。一度に盗るとバレそうなので化粧売り場のテスターで化粧したりしてもう1周。
同じ動きだとバレるからお菓子売り場でついでにポテチも入れて3個目のブリーチをスポーツバッグに入れて何もなかったような顔で店を出た。
あたしの顔には元々表情がないので何事もなかったように全てが終わった。

豚に3個のブリーチとポテチを渡したら8人で多目的トイレに行く流れになった。
多目的トイレにはシャワーがあるのでそれを使って髪を脱色しようと言い出した。

まずは髪の長いあたしは2本いると言って豚の彼女っぽい女があたしの髪にブリーチの液をなじませ始めた。
皮膚が焼けるように痛い!
頭が熱を出してるような感覚だし臭いし…

豚とゴリラとサルは短髪だから1箱を3人で分けて使っていた。

「何だよコレ!クサい!それに痛くてたまんねぇよ!流してくれよ!」

あたしは豚の女に頼んだ。

「金髪にするには時間がかかるからもうちょっと我慢しなよ!」

肌が痛くて焼けそうだったけど40分経ってからシャワーで流してくれた。皮膚が痛い。
冷たいけどシャンプーとタオルは誰かが万引きして来たみたいだった。

髪のタオルドライはいつもの事だけど髪が長いのでいつも頭をぶん回す。
そこからタオルでパンパンする。
鏡に映ったあたしの髪は金髪になっていた。

「え?これあたし?…」

『アンタさぁかわいいし色白だから金パ似合うよね。アタシは色抜けなくてさ〜。毎回茶髪までなんだ~』

豚の女が勝手に喋る。

そういえばあたしコイツ等の名前知らない。
どうせ覚えられないからどうでもいいか。
女は豚の女。その他A、Bでいい。
男は豚とゴリラとサルとカニとモブでいい。

豚に関しては蹴って来たし金は盗られたしで最悪だけど何故か一緒に金髪にして盛り上がってる事がいつもより楽しい。
あたしの顔は真顔だけどめちゃくちゃ楽しんでいる。
同世代の子と居て初めて楽しいと思った。

次第にこの生活が当たり前となって豚の先輩とかいう奴のアパートの一室に上がり込んで寝泊まりするようになった。
かれこれ1ヶ月そんな生活を続けている。
学校に行かなくても学園生活楽しめてるけど何か釈然としないのはおばちゃんを裏切ってるような気持ちがどこかに残ってるから?

ゲームセンターでゲーム対戦して負けた奴からカツアゲすることが平気になったのは孤独に戻りたくなかったから…
本当はこんなことしたくないけど仲間から外されるのは嫌だった。
あたしより強い奴が来たらもうやめようと思いながら強いヤツが現れないから続けてた。

万引きも捕まったらやめようと思ってるけど捕まらないからやめられない。断ればまた1人になる。それだけは嫌だった。

『よし!今日はコンビニで万引きするぞ~!アヤメ、お前はコンドームとビールとカウンターの近くにある煙草だ。女が吸う細いタバコとか盗って来たらぶん殴るからな!』

「…こんどーむって何だよ?」

『お前マジで何も知らないんだな!コレだよコレ!』

携帯電話の画像を見せられた。
コンビニにある小さいこんどーむは5㎝くらいの正方形の箱に入っているらしい。
キャラクターのイラストが描かれていた。

『今日のターゲット店はここだ!』

…ここは森本のおばちゃんが働いてるコンビニ…。

「あたしは無理!パス!」

『はぁ!?何言ってんだ!?お前しかこんなの盗れる奴いねぇんだからよ!行けよ。行かないなら橋の上から飛び降りだからな!あと捕まったら100叩きな。』

「…そんな……。」

見た感じ今の時間はおばちゃんはいないみたいだけどここで万引きはしたくない…
でも橋の上から飛び降りるのは嫌…
大体100叩きって何だよ…痛いのは嫌だよ…

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