8月31日の夜に
8月31日というと、私にとっては明日から学校という興奮と、今日で休みと決別という寂しい気分の入り混じった日でした。
中高一貫校に通っていた私は、家の近くに友人がおらず、図書館に行くか、家でTVをみているか、という夏休みを過ごしていました。
地元で中学受験をする子は学年に1人か2人で、地元の子どもたちのコミュニティからはすっかり外れてしまい、地元の友人と過ごすという選択肢はなかったのです。
でも、実は夏休みが終わって、学校の友人と再会したからと言って、そこまで楽しいことは待っていません。学校の友人たちは、郊外にある我が家と違って山手線の内側で暮らしており、お手伝いさんがいる人もいて、夏休み明けはヨーロッパに行った話や、アメリカに行った話でもちきりでした。
私のようにお盆に千葉や茨城の海に行ってゴザを広げて家族で過ごしていた人もいたのでしょうがそういう話はあまり聞こえてきませんでした。部活動もさほど熱心にやっていなかった私は、ステキな夏休みを過ごした学校の友人らに劣等感を抱いていました。
8月31日の夜、学校に持ってゆく荷物を用意しながら、夏休みのエピソードで何を話そうか考えていたことを思い出します。なるべくキラキラしたエピソードを話したい。あの子はこの夏どこに行ったのだろうか。などとひとりごちて。
そして、憂鬱なのがもう一つ。夏休み明けのテストでした。
海外に遊びに行っていた友人たちは、ちゃっかり勉強もやっていて、それなりの点数を取るのですが、私は中学受験ですっかり燃え尽きていて暇はあるのに勉強をしない子でした。
おしゃべりでも目立てない、テストでも目立てない、ただひたすら学校に通って日々が通り過ぎるのを顔を下に向けてやり過ごしていた学生時代。
いまとなっては、そんな子いるよね。で、済む話ですが、当時の私にとっては大問題。あの時の苦しく、切ない気持ちを思い出すのが今の私にとっての8月31日の夜です。