”GAMA-GARLAND”アーカイブ
はじめに
先日開催されたポートタウンまちづくりデイズスピンオフイベント”GAMA-GO-ROUND”では、Mikawa Art Centerとして、”GAMA-GARLAND”というアートプロジェクトを企画させていただきました。
とはいえ、大々的に「アートプロジェクトです!」とは明言せずに、ものすごく静かに進めていきました。
そこには今回の企画に関する意図みたいなものがあったのですが、このまま明言しないと「なんかやってたね」で終わってしまうので、イベントを振り返りながら今回私たちが意図したことについてお伝えしたいと思います。
ポートタウンまちづくりデイズ
蒲郡市の東港地区の再開発プロジェクトとして
「ポートタウンまちづくりデイズ」というイベントが開催されました。
(参照:https://www.city.gamagori.lg.jp/unit/minato/porttownmachidukuridays-report.html)
バブル後に開発が止まっていた、竹島埠頭一体である「東港地区」を再開発していくのですが、行政が主体となって行うのではなく、市民が意見を出し合いながら一体となって開発を進めていきましょうと、まちプロジェクト会議が発足しました。
本イベントは、市民の想いをカタチにしてみようという取り組みの1つです。
私はこのプロジェクトに対しては結構古参であったのですが、正直興味は港そのものがおしゃれになっていくなどよりも、港が開発されることでまちにどう賑わいが作れるかということに興味があり、関わる中で自分の目指すものに絡められないかと機会を伺っていました。
東港は駅からの距離が近く、今回の再開発には蒲郡駅の北側も範囲に入っておりました。
私は観光客を増やすことよりも、そこに住む人たちの生活の質を向上することに貢献できたらいいなと思っていたので、まちプロジェクト会議においても、「蒲郡駅北商店街エリア」の分科会に所属しておりました。
「蒲郡駅北商店街エリア」のファシリテーターには、円頓寺商店の復活の立役者であるナゴノダナバンクの市原さん、藤木さんが入っており、商店街の人たちと一緒に6月のイベントに向けて作戦会議を進めていくことになりました。
GAMA-GO-ROUND〜ここからはじまる北駅ストーリー〜
色々あって“スピンオフ”という形になりましたが、ポートタウンまちづくりデイズの同日に、商店街を巡るスタンプラリーイベントを実施しようと決まりました。
イベントでたくさん人が来てくれる日に、廃れていっているけど「ここに商店街があり素敵なお店が商売をしてるんだよ」と知ってもらうために、チームメンバーのアイデアでスタンプラリーをすることになりました。
これからまちに賑わいを取り戻していくにしても、まずは商店街の現状を知ってもらわないと沢山の人からご意見をいただけない。じゃあ巡ってもらおうということです。(ざっくりと。)
スピンオフイベントを作っていくにあたって、個人的に気になっていたのは「商店街のアイコンがほしい」ということ。
今まで私が見に行ったことのある円頓寺商店街や瀬戸市の商店街のように大きいアーケードがあり「ここが商店街です!」と言わずもがな分かるところなら良いのですが、蒲郡の商店街は雨を防げる屋根もなく、「ここって本当に商店街なのかしら…」というのが正直な見た目です。
アーケードはないけど、「蒲郡の商店街といえば◯◯だよね!」というものが何かあると商店街に対する見え方が少し変わってくるのではないかなと思い、そこで何か出来るとしたら「アート」ではないかと考えました。
そしたら、ビジュアル的にも目につきやすい「ガーランド」を商店街の一体に這わせて、イベントに参加する人たちを愉しませたらいいね!とガーランド作りが決まったのですが、「その企画をやらせてください」と制作を請け負うことにしたわけです。
※ちなみに、イベント名については、遅刻した会議で「だまちんが案を出す」と決まっており、考えたのですが「がま◯◯」は、このまち定番のダジャレ感があり避けようとしていました。それで、回遊性を表現したく「◯◯-GO-ROUND」と提案したところ、最終的にチームメンバーの「GAMA-GO-ROUNDで良いのではないですか」というコメントから「いいね!」と決まりました。
確かに「がまごおり」は、名前だけでも独自性があります。このまちの文化なのかもしれませんね!ネーミングに関してはそんな経緯がありました。
GAMA-GARLAND
それでようやく本題です。
イベント名が"GAMA-GO-ROUND"だし…と、結局韻を踏む形で『GAMA-GARLAND』と名付けた本プロジェクト。
蒲郡で行うのだからといくつかルールを決めました。
・蒲郡ゆかりのものを使用する
・既製品を飾るのではなく、できる限りたくさんの人と創る
・企画サイドが完全に形を決めきらない
・難易度は低くどんな人でも参加できる仕事を創る
といったところです。
理由をお話します。
蒲郡ゆかりのものを使用する
商店街の新たなアイコンになるものとするのであれば、オリジナリティが必要です。そこで「このまちならでは」のものを使用することで、「ここにしかないもの」を作りたいと思いました。
蒲郡でいうと、そのひとつが繊維。特にロープ産業は全国でもトップクラスの生産量を誇ります。
もちろん、装飾なので見て楽しんでいただければ良いのですが、その中身みたいなものをたくさんの人に考えてもらいたいと思いました。
商店街の現状も、蒲郡の産業についても。
今回、布に関しては、過去のイベント等で大量の古布が手元にあったため、知り合いの中から提供できる布を持っている人に依頼する形で集めました。
ロープは手元になかったので、私の先輩の会社である市鶴製綱所さんと、インスタグラムで「ありませんか?」と投稿させていただいたところ、ご連絡をいただいた株式会社丸五製綱所さんからロープをご提供していただきました。
商品化出来なくなってしまったものをアート作品の素材としてご提供いただいたのはサスティナブルな観点からも良かったなと思いました。
既製品を飾るのではなく、できる限りたくさんの人と創る
これは参加型アートプロジェクトの醍醐味といえるのですが、作品制作を一人で完結させるのではなく、沢山の人とコミュニケーションを取りながら行います。
何も繋がりがなかった人に対して、「アートを創るから手伝ってください」と依頼する。基本的にアートは、それ自体が金銭的な価値を生むとは限らないので、誰かが得をする、損をするといった不平等感は起きにくいものになります。
「アートはお金にならない」と言いますが、お金にならないからこそ出来る役割もあるということですね。
地域のお祭りがそれに近いのかもしれません。
でも、地域のお祭りは基本的にクローズな集まりであり、なかなか新しい人がそこに参加するのは敷居が高くなります。
「アートは私には分からない」という人がまだまだ多い世の中ですから、そういう意味で「みんな一緒だよ」ということで敷居は低くなるのではないかなと思っています。
企画サイドが完全に形を決めなきらない
今回ガーランドを創るにあたって「規格」を決めました。
①10cmほどの短冊をくっつけて40cm程度の帯を作る
②帯を4列くっつける
そうすると大体40cm四方の旗が出来上がります。
仕上がりは人によって、布によって違ってくるのですが、それはそれで良いです。
むしろ1枚1枚違う様相に、どんな人が作ったのか思いを馳せてほしいというのがあります。
最終的に布もいろいろなところから集まってきたので、布についての物語も想像していただけると良いのかなと思います。
また、制作過程で、「1枚の長い帯を作ってから40cm幅に切ったほうが早いよ!」など、参加者の方からアドバイスもらったり、「こんなの作ってみました!」といったコメントをいただきました。
そういったことは大歓迎で、ある程度ゆるい枠の中で、それぞれがクリエイティビティを発揮していただいて制作していただける環境を目指して作っていました。
難易度は低くどんな人でも参加できる仕事を創る
作業に関しては出来る限り難易度を下げることを意識しました。ミシンを使うとなると「学校の家庭科以降触ったことないから分からない…」と敬遠される方がいます。だからこそ、ミシンの工程も出来る限り簡単に、上糸の付け方と下糸の付け方、返し縫いの仕方くらいをお伝えすると、まっすぐ縫うことは出来ます。
それでもミシンが苦手…という人には、生地の裁断や旗にするためのハトメの作業をお願いします。誰でもなにか役割が与えられるようにしていました。
私がアートプロジェクトの現場に入り、一番関心したことは誰にとってもそこが「居場所」になっていることでした。先程の話ではないですが、明確なルールがないから「分からない」と言われるのですが、ルールがあるとそれに則れない人は除外されてしまいます。
どんな人でも「居て良いんだ」と思ってもらえる場所を意識的に作ろうと心がけて場を創るというのが最後に決めていたことでした。
プロジェクトを終えて
今回いろいろな方にお手伝いいただき、延べ200枚弱の旗を作成することが出来ました。
残念ながら道路を横断してのガーランド設置が叶わず、今回は思っていたような商店街の風景を創ることが出来なかったのですが、まだ1回目であるので、徐々にそのあり方を探っていきたいと思います。
結果として、今回は道路の該当に8対のフラッグの設置と、スタンプラリーマルシェ会場での装飾として”GAMA-GARLAND”を設置することが出来ました。
課題としては、もっとたくさんの人に関わっていただけるようにしっかりデザインしていかなければならないことや、リサーチや実験をもっとたくさんしなければならないというところです。
今回イベント日が決定している限られた時間の中で、やれる範囲でやってきましたが、もう少し丁寧に進めていけたら良かったなと思いました。
とはいえ、イベントの終わりがプロジェクトの終わりではなく、むしろスタートラインを切ったところであります。
今回のプロジェクトには、まちプロジェクト会議から発足した「蒲郡駅北商店街活性化チーム がまきたいっか」の協力なしでは出来なかったことです。
チームに感謝すると共に、今後もチームの一員として、商店街の、ひいては蒲郡市の発展につなげることが出来たら良いなと思います。
MACのみんな、がまきたいっかのみなさん、お力添えをいただいたすべての人にスーパー感謝です!
今後ともよろしくお願いします!
だまちん
✲✲✲✲✲✲✲✲✲✲✲✲✲✲✲
《こんな人が書いてます!》
ライター:だまちん
プロフィール:1992年、愛知県蒲郡市生まれ。
Mikawa Art Center[MAC]代表。
地元に気軽に文化に触れられる場がないことに問題意識をもち、
「アートでまちをもっと豊かに」することをミッションにMACを立ち上げる。
蒲郡市にどのような表現の場を創るべきかを仲間とともに日々検討中。
2016年 あいちトリエンナーレ2016 豊橋会場コーディネーター
2023年 ととのう温泉美術館 コーディネーター
✲✲✲✲✲✲✲✲✲✲✲✲✲✲✲
『潮風』では、蒲郡にまつわること、自身の表現について発信をしていただけるライターを募集しています。未経験者も大歓迎!みんなで創るメディアを目指しています。ご興味のある方はコメントやInstagramのDM、メールアドレスからお問い合わせください!
Instagram: @shiokaze.gamagori
メールアドレス:shiokaze.gamagori@gmail.com
✲✲✲✲✲✲✲✲✲✲✲✲✲✲✲
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?