縦移動
縦移動という言葉に出会った。
これまで、地域を深く深く知る、深く潜るという意識はあったんどけど、縦移動という意識がなかった。
世の中を広く知る横移動に対して縦移動。
グローバルは横移動、ローカルは縦移動。
海は横移動、山は縦移動。
街から山へ縦に移動すると、大きな環境勾配に出会う。気温、湿度、風速、植生、土地利用。平地から山に向かって、環境は少しずつ変わっていく。縦の多様性。
山岳信仰の対象となる大きな岩は、地中深くから吹き上がり冷えて固まり(角礫凝灰岩)、あるいは地中深くでゆっくりと固まったあと地上に現れる(花崗岩)。地球ができた頃から大地が深い深いところに蓄えているエネルギーのカタチ。
神の依代ともなる大きな木は、上へ上へ天に向かいながら、大地を下へ下へと深く深く潜っていく。横移動を捨て一箇所にとどまり、ゆっくりと上下に、縦に伸び続ける、もう一つの生命のカタチ。
こんな縦の色んなものに出会って登ってきて、山の上から街を見下ろすと、そこで暮らすジブンが見える。自由に宙を駆けるジブンが、しがらみに縛られたジブンを見る。ジブンを離れてジブンを見ると、見えなかった世界が見える。もっと自由に生きよう、と思う。
これが縦移動の効用、山の力かも。