地方行政の「空き家対策」が全て無意味な理由について
初めまして、しおいぬ社長です。
私は「相続空き家」を主に購入させて頂き、リフォームをして再販売をしたり、賃貸として貸し出す、「中古住宅再生事業」という仕事をしています。
現在、日本では「空き家・空き地」が社会的に問題になっており、ほぼすべての地方自治体で「空き家対策課」が設置され、問題解決を図っています。しかし、それらの全てが「意味のない組織」になっています。
そもそもが、「なぜ、空き家は生まれるのか、空き家を生ませないようにするにはどうすればよいか」という議論が為されぬまま、地方自治体の「空き家対策課設置ブーム」は始まってしまいました。現状、「空き家対策課」の仕事は、
・市民から相談された内容を不動産会社に伝え、市民にもその不動産会社に行くように促すだけ
・ほとんど存在の意味のない「空き家バンク」というHPを作成する
・倒壊しそうな危険な空き家の情報を収集する(←コレだけ意味がある)
というものになっており、「超絶劣化型不動産会社」という存在になってしまっています。
本記事では、「空き家・空き地が生まれるメカニズム」「真の空き家対策」「地方行政だけでは空き家・空き地問題には決して対処できない現実」について語っていきたいと思います。
空き家・空き地が発生するメカニズム
地方に住む人々なら、誰しもが「最近空き家・空き地が増えたな…」と感じ始めていると思います。
実際に日本の空き家率は上昇の一途を辿っており、全国平均でも15%近く、地方に限れば20%以上の空き家率となっており、これらの数値は加速度的に悪化しているのが現状です。
なぜ、ここまで空き家率は年々上昇しているのでしょうか。理由は大きく以下の2つです。
・人口(世帯数)の減少
・宅地の増加
前者の人口(世帯数)の減少については理解がしやすいと思います。多くの地方では人口減少に悩まされており、世帯数に限ればとんとん~微増傾向なものの(住宅需要は人口よりも世帯数とより強い相関関係にある)、それも近くして減少に追い込まれるでしょう。
例えば1000の宅地があったとして、1000世帯がそこに住んでいたら空き地は0ということになる。しかし、900世帯に減少すれば、100の空き家・空き地が生まれる。
至極当たり前のことで、納得もしやすいと思いますが、空き家・空き地問題の本質は次の「宅地の増加」です。
地方に住む方の多くはこのような現場を見たことがあるのではないでしょうか?
・田んぼや畑だったところにアパートが建築され始めた、ないしは何区画に区切られて土地や建売住宅として売られていた
・一方で、ずっと看板だけ立っていて、売れ残っている空き地が最近増えてきた
一般の方でもこのように感じる方はとても多く、実際に不動産業者である我々はこういったことを更に如実に、データの裏付けも含めて実感しています。
この「新規宅地の増大」「既存宅地の未利用」こそが「空き家・空き地の問題の本質」なのです。
この前提条件を理解せずに(理解していたとしても、それを前提とした組織になっていない)「空き家対策!」なんてことを言っているのが、現在の全ての地方自治体なわけです。
数字で書いたほうが直感的に理解しやすいです。1000の宅地があり、1000の世帯がある地域があるとします。ここに新たに100の宅地が生まれ、逆に世帯数は100減少したとします。1100の宅地と900の世帯があることになり、空き地・空き家数は200となります。
これが「空き家の発生メカニズム」です。
では何故、空き家・空き地で困っているのに「新規宅地」がこんなにも生まれてしまうのでしょうか。
それは、「新しい宅地を次から次へと生み出さないと建築・土木・不動産会社が潰れてしまうから」です。
ハウスメーカーを筆頭に多くの建築会社は建物を建ててお金を稼いでいます。家というのは、その家そのものだけではなく、周辺の環境ごと売る性質があります。住宅街の一角の宅地を解体して、更地にして、そこに家を建ててうるよりも、大きな畑や田んぼを開発して分譲して、「全て同じ時期の建築ですから、同じくらいの世代の方が入居されて、友達もたくさんできます!周りの街並みも綺麗です!いかがですかー!」とやったほうが断然売れ行きが良いです。
宅地の開発には土木も絡みますし、分譲には不動産会社が絡みます。もし、分譲宅地が制限されるような事態になれば、多くの建築・不動産・土木の会社は立ちいかなくなるでしょう。だから、新規の宅地造成は止まらないし、止められない。
こうして、既存の宅地は放置され、新しい宅地の開発が次々に進みます。この結果、「空き家・空き地問題」は日本の社会問題となったわけです。
真の空き家対策とは
上述のように、空き家の発生メカニズムは、
・人口(世帯数)の減少
・宅地の増加
です。どちらかだけの対策だけでもダメですが、「人口減少」は「成熟した人類の行きつく境地」だと私は捉えていますし(あくまで感想です)、地方の一課である「空き家対策課」なんかにどうにかできる問題ではありません。
また、「宅地の増加」についても、新規の宅地造成規制や、畑・田んぼの農地転用の規制などを実施すれば社会的な大混乱が発生します。建築・土木・不動産会社は潰れまくり、地主達からの非難は轟轟。こちらも「空き家対策課」や地方行政レベルでどうにかできる問題ではありません。
つまり、地方行政や、更にその中の一課に過ぎない「空き家対策課」に、「真の意味での空き家対策などできない」というのが結論になるわけです。
地方行政だけでは「空き家・空き地問題には決して対処できない現実」
といった感じで、「問題解決にはこういう風にすればいいんだ!」という話ではなく、「どうにもならないよ!」という結論で大変恐縮ですが…、それだけこの「空き家・空き地問題」は人口減少という「日本の至上命題」に密接に関係し、また、日本のGDPの多くを占める「建築・土木・不動産」会社の生存にも関わる、とても厄介な問題だということです。
やれることとすれば、国レベルで動いて「居住制限エリアの拡大」「新規宅地造成の制限」が真の意味での対策になるわけですが、しかしそれらは憲法の「居住の自由」などに明確に違反しますし、個人財産が棄損されることにもなるので(不動産価値の暴落)、実施は不可能に近いでしょう。
要するに、地方行政では「空き家・空き地対策」はできない、というのが結論になるわけです。
まとめ
記事の内容について纏めます。
・空き家空き地の発生メカニズムは「人口減少、新規宅地の増加」が原因であること
・これら二つの問題は地方自治体レベルで解決できるものではないこと
・この認識をまず持ってもらってから、改めて空き家・空き地問題の解決に関して議論することが大事であること
最後に、私は、本記事最初の方での自己紹介の通り、「相続空き家不動産」を主に購入し、リフォームをして再販売したり、賃貸したりする仕事をしています。
空き家の解決ではなく、対処療法としかなっていないので恐縮ですが、私の仕事自体は「空き家・空き地」の増加をめちゃくちゃごくわずかではありますが、鈍化させる、延命させるような、「社会問題解決型ビジネス」だと自負しています。
私の他のnoteでは、以下のように中古住宅を購入し、どのようなリフォームを実施しているか、コストパフォーマンスの良いリフォームの方法は?など、一般の方にも参考になる(かな?(笑))という記事を書いています。
少しでも、私の持つノウハウ・知見が日本の「空き家・空き地問題」の解決に向けた一助になれればと感じて、本記事は書かせて頂きました。
一人でも多くの方が本問題に対しての知識をつけ、議論が行われ、問題解決が進展していけばよいなと、心から思っております。