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【アートの記録_0004】

たまごのような、水たまりのような不思議な形のキャンバスに、キメの細かい艶やかな肌の女の子。まつ毛や髪の毛は細くてやわらかそう。現実にいる女の子をカメラで撮ったみたい…。天地2メートルくらいのキャンバスいっぱいに描かれたこの女の子の視線は遠く、何を考えているのかわからない。

不機嫌なのか、ただ物思いにふけっているのか。動物の頭部の骨を抱きしめている(頬を寄せているだけかもしれない)のはなぜなのか。骨は肉や毛皮を感じさせないくらい、汚れのない白。ひんやりした肌触りなのだろう。もしかしたら、女の子の肌も、同じくらいひんやりしているのかもしれない。

2015年の高橋コレクション展で観た、「Pansies」。作家は一度人形を作って、写真に撮って、それから絵に起こすスタイルで作品を作るそうで、時間をかけて1作品に取り組むらしい。(と展覧会の解説に書いてあった)咲く姿から「pensée(パンセ)」(フランス語で思想)にちなんで名づけられたパンジー。花言葉は「物思い」だけど、色によって「思慮深さ」「温順」「純愛」などいろいろあるらしい。属名のビオラには「少女の恋」という花言葉もあるそうだが、作品からは色の情報は見当たらない。

後から知ったのだけれど、同じ構図で同じ女の子が同じように骨に頬を寄せている同時期の作品があって、そちらの作品の名前は「Peaberry」という。ほんのりお化粧をしているようで、薄く形の良い硬そうな唇に紅が引かれ、グロスをのせたように光っている。コーヒーの実に1粒だけ入っているピーベリーは小さく丸くて焙煎しやすく希少豆として珍重されるようだが、養分の行き届きにくい発育の悪い部分にできる傾向があるそうだ。

2015年ころは、ほぼ日手帳を愛用していて、気に入った展覧会のチケットや作品ポストカードを挟み込んで楽しんでいた。加藤美佳の「Pansies」は「かわいいね」「きもちわるい」の2パターンの反応があった。スルーする人が多い中、なにがしかを訴えかけるパワーがあったのだろう。

【加藤美佳】三重県出身のアーティスト。少女をモチーフに、一度人形をつくるところから作品作りをするスタイルの画家。http://koyamaartprojects.com/artists/mika-kato/#artist-biography

写真は初めて加藤美佳作品に出会った展覧会のチケット。2015年「ミラー・ニューロン」。


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