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【アートの記録_0006】

うすら怖い幽霊みたいな少女だったり、はらわたがでてる何かだったり、朽ちていく花だったり、とにかく不気味で、でも目が離せなくなる。そして画家本人がとびきり美人。最初に松井冬子を知ったのは、女性雑誌の記事かもしれなくて、作品というより本人のビジュアルだったような気がする。

気になるなあと思いながら、作品をしっかり観たことがあまりなかった。展覧会でもしかしたら観ているかもしれないけど、松井冬子作品として認識できてなかった時期が長かったかも。2011~2012年横浜美術館での個展が、私にとってしっかり認識して観る初めての展覧会だったと思う。美しさと狂気にあたってぐったりしつつ、出口で引き返して何度も繰り返し観た。

絹本に岩絵の具の白は、こわい。幻のようで、迫りくるものがある。ゾンビじゃなくて幽霊というか、形や重さでなく気圧を感じるというか。

展示会の中でとりわけ圧にとりこまれたのが、長く垂れさがる藤が印象的な「世界中の子と友達になれる」だった。

藤の花の房は下のほうに行くと紫から黒になり、よく見ると蜂が密集して房になっている。風に揺れる藤の花が、先っぽの方が別なものに支配されていて、蜂の腹が伸び縮みしながら呼吸をしているのに、遠くからみると気が付かない。こわい。羽音が分厚く、声をかけてもきっとあの少女には届かないんだろうな、と思う。少女がうれしそうな表情なのがいいな、と思う。

この作品が学部の卒業制作だったと、あとから知った。

内臓であやとりしている少女や、千鳥ヶ淵の満開の夜桜がお濠に映りこんでいて円環の桜と中央の闇に吸い込まれそうになる作品も好きだけど、一つ選ぶとするなら、やっぱり藤棚の少女の作品が好き。

【松井冬子】日本画家。幽霊画、九相図、内臓、脳、筋肉、人体、動物を題材に採った作品を発表している。(ウィキペディアより)http://www.matsuifuyuko.com/gallery/

トップの写真は、美術手帳2012年2月号の松井冬子特集の「世界中の子と友達になれる」。右は横浜美術館で購入した「この疾患を治癒させるために破壊する」のポストカード。


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