令和の虎553人目 社会人向けの学習管理型オンライン宅建塾を作りたい レポート

1.動画概要

 宅建塾「RE.LIFE」塾長・前竹陽日希(21)による「 もう挫折しない!可能性に挑戦できるオンライン宅建塾を作りたい」希望金額200万中、600万円でEXCEED。

・今回の虎

 青笹寛史/あお(アズール株式会社  代表 動画編集CAMP 主催)
 山澤礼明(株式会社FIT PLACE 代表取締役社長 株式会社REYS代表取締役社長)
 愛沢えみり(株式会社voyage 代表)
 寺田高士(株式会社一会不動産 代表)
 林尚弘(株式会社癒し~ぷ 代表 株式会社FCチャンネル 代表取締役)

・司会
 岩井良明(株式会社MONOLITH JAPAN 代表取締役)

2.動画考察

・志願者の経歴から見るポテンシャル

 志願者は琉球大学在籍中であり、宅建塾「RE.LIFE」の塾長を務めている。高校卒業後、社会人野球選手として上京するも、企業の環境に馴染めず3ヶ月で退社。その後、地元沖縄に戻り、父が経営する塗装業に従事した。2022年には大手インフラ企業の契約社員として入社し、在職中に宅地建物取引士(以下、宅建)試験に合格。1年3ヶ月の勤務を経て2023年6月に退社。同年12月には宅建塾「RE.LIFE」を創設した。現在の生徒数は1名である。
 また、SUMMER STYLE AWARD(※1) 2023に出場し、沖縄大会のROOKIE STYLISH GUY部門で入賞している。

※1…SUMMER STYLE AWARDとは、主にフィットネスやボディメイクにおける成果を競うコンテスト。ROOKIE STYLISH GUY部門は、主に初心者向けの男性部門。

・志願内容と、その評価

 本プランは「自身が運営する塾の広告を行い、塾生を集める」という内容で、希望出資形態は融資、希望金額は200万円。資金は広告費用にあてる。
 宅建とは、不動産取引に関する国家資格であり、不動産業において重要事項の説明や契約書への記名押印などを行うために必要となる。
 「RE.LIFE」は、他の塾が対面講座や通信講座を中心としているのに対して、参考書学習を軸にした形式を採用している。また、小テストを義務化して知識の定着を図り、LINEでの即時質問対応による疑問の解消を通じて、生徒が次の学習に進む際の不安を取り除く体制を整えている。特に学習時間の確保が難しい大人に対しては、進捗をサポートしながら、効率的な学習方法を提案することで「学習方法を忘れている」「時間がない」「復習を怠る」といった課題に対応している。
 宅建士試験は毎年約29万人が受験している。志願者は、合格者の9割が予備校出身であり、予備校の合格率が50%であるというデータに基づき、予備校に通う人数を約6万人と試算している。残る約23万人は独学で試験に臨む層であり、志願者の塾はこの独学者を主なターゲットとしている。
 料金設定は、長期コースが月額11,000円(半年間、一括105,000円)、標準コースが月額22,000円(3ヶ月間、一括145,000円)、短期コースが月額40,000円(一1ヶ月間、括150,000円)となっている。いずれも予備校の半年間の平均費用である20万円を下回る価格設定となっている。集客目標は最大85人であり、この場合の年間利益は1,000万円以上を見込んでいる。
 これまでの集客は、不動産業者への営業やチラシ配布に依存していたが、現在はSEO対策に注力している。一方で、あお氏はSNS運用から始めるべきとの意見を示していたが、志願者は受験希望者が検索を利用する傾向が高い点を考慮し、まずSEO対策を優先し、その後にSNS運用を本格化させる方針を示した。
 林氏は現在の生徒数が1名である点について、信頼性や実績の裏付けとしては十分ではないと指摘した。武田塾が1年目に14名の生徒を抱えていた事例を挙げ、生徒数が10名以上であれば不安が軽減されるとの見解を示している。一方で、虎たちは、提案されている塾の方向性やターゲット層の需要に関しては肯定的な見解を示した。

・志願者の人間性

 志願者は、偏差値40の高校出身で、テストで0点を取ることもあった。宅建資格を得る際にも、講座や小テストでも成果を上げられずに苦しんでいた。そんな中「武田塾チャンネル」の指導を参考に学習を進めた結果、宅建士試験に合格を果たした。この成功体験が、同じように挫折を経験した人々を支えたいという志願者の理念につながっている。
 さらに、合格後には10万円の法律系講座を受講し「LEC東京リーガルマインド」の過去問解説動画を活用するなど、自らの学びを深める努力を続けている。
 志願者は、宅建士資格が不動産業務における独占業務を可能にするだけでなく、就職市場で「努力ができる人」として高く評価される資格であると考えている。岩井氏は、夜の街で働く女性たちがセカンドキャリアとして美容業界や宅建士資格を目指す例を挙げ、その努力が評価される資格だと述べている。また、山澤氏も、キャバクラ嬢のセカンドキャリアやフリーターの目標として宅建士資格の需要があると考えている。夜職出身の愛沢氏もこの考えに同調し、自身も志願者の宅建塾で学びたいと学習意欲を示した。
 加えて志願者は、事前にデータを十分に調査し、虎からの質問に対してもよどみなく回答している。この姿勢は、計画性と準備力を示しており、岩井氏からも高く評価されている。こうした対応力は、出資を検討する上で虎からの信頼性を高める要素となっていた。
 このように志願者は、挫折を自分の物語の核に据え、それを力に変える人物である。偏差値40、テストで0点という誰もが目をそむけたくなる現実を正面から受け止め、その経験を最大の武器としている。志願者は「こんな自分でもできたから、他の人もできるようになる」と発言したが、これは自虐ではなく、成功までの過程で得た自信と他者への強い共感が込められていると考えられる。

・出資する意義、メリット

 本プランには、宅建士資格を目指す独学者という明確なターゲットと、その潜在的な市場を狙う合理性がある。さらに、夜職やフリーター層など多様な背景を持つ人々に対する学び直しの機会を提供する社会的意義もある。
 志願者の挫折を乗り越えた経験と、それを支援に繋げようとする強い意志は、塾の理念を支える力となっている。また、準備力と計画性を持つ志願者の姿勢は、事業運営の信頼性を裏付けるものであり、出資リスクを軽減する要素として評価できる。以上の理由からこのプランは、収益性と社会的意義を兼ね備えた魅力的な投資案件であると考えられる。

3.まとめ

 本プランは、集客について腹案を考え付いたあお氏、夜職のセカンドキャリアを鑑みた愛沢氏と山澤氏から、最終ジャッジを待たず全額が提示され、完全ALLとなった。志願者は、集客と夜職の関連性から、あお氏、愛沢氏から100万円ずつを受け取った。
 重要だったのは、志願者の挫折を武器に変えたエピソードへの共感と、市場ニーズを的確に捉えた戦略性、そしてデータに基づく信頼性の高い準備力であると考えられる。これらが組み合わさることで、出資者からの共感と信頼を得ることができ、完全ALLという結果を引き寄せたと考えられる。この動画が示したのは、物語性、実行可能性、信頼性が揃うことが投資成功の鍵であるという点である。


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